「覆水盆に返らず」の意味や由来とは?
はじめに「覆水盆に返らず」の意味や由来を解説していきましょう。意味は知っていても、由来は聞いたことがないという方も多いはず。もとになった話を知ると、言葉への理解がさらに深まりますよ。
意味
まずは、読み方からおさらいしましょう。「覆水盆に返らず」は、「ふくすいぼんにかえらず」と読みます。「一度別れた夫婦は、元には戻らない」、転じて「一度してしまったことは取り返しがつかない」という意味を持つ言葉です。「覆水」とは、容器からこぼれた水のこと。「盆に返らず」と合わせて、こぼれた水は盆には戻らないという意味になります。
また、一般的には「覆水盆に返らず」という言い回しが用いられますが、「覆水盆に収め難し」や、「覆水不返(ふくすいふへん)」と言うこともできます。
由来
「覆水盆に返らず」は、昔の中国の小説集『拾遺記(しゅういき)』に書かれている漢文がもとになっている故事成語です。あらすじを紹介しましょう。
古代中国・周に、軍師・呂尚(りょしょう)と、その妻がいました。呂尚は読書に明け暮れ、夫婦生活をかえりみないので、愛想をつかした妻は、家を出て行ってしまいます。しかし、やがて呂尚が出世すると、別れた妻が復縁を迫りに戻ってきました。そこで、呂尚は元妻の前で盆から水をこぼし、「この水を元に戻せることができるか」と言います。もちろん、水は元には戻せません。それと同じように、別れたふたりが復縁することはありえない、という気持ちを呂尚は示したのです。
この話がもとになって、「覆水盆に返らず」という言葉ができ、一度壊れた人間関係は元には戻らないという意味で使われるようになりました。
使い方を例文でチェック!
意味を理解したところで、次は実用できるようになりましょう。ここでは、「覆水盆に返らず」を使った例文を紹介しますので、参考にしてみてください。
「友だちは元旦那に復縁を迫っているが、彼は取り尽く島もないそうだ。覆水盆に返らずとはこのことだ」
言葉の由来になった故事のように、離婚した夫婦の関係性は元には戻らないということを言いたい時に使える例文です。
「傷つける言葉を言ってしまったことが原因で絶交してしまった友だちとは、いまだ仲直りができていない。まさに覆水盆に返らずだ」
「覆水盆に返らず」は、夫婦関係だけでなく、人間関係全般で使える表現です。この例文のように友だちとの関係はもちろん、親との関係、職場の人との関係など、さまざまな場面で使えます。
「仕事で大きなミスをしてしまったが、覆水盆に返らず。挽回できるように力を尽くそう」
これは、「仕事でミスをしてしまったが、今となってはどうすることもできない」ということを意味する例文です。「覆水盆に返らず」は、ネガティブな文で終わってしまうこともありますが、この例文のように、前向きな気持ちに切り替える時にも使えますね。
類語や言い換え表現とは?
一度してしまったことは、元には戻らないという意味の「覆水盆に返らず」。類語には、「取り返しがつかない」や「過去のことを悔やんでも仕方がない」という意味を持つ言葉があてはまりそうです。いくつか代表的なものを取り上げて紹介していきましょう。