誰もが放っておきがちな宛先に細やかな気遣いを
お仕事では、情報共有という名の下に、社内外さまざまな立場の人に同時にメールを送ること、けっこうありますよね。たとえば、Toにはクライアントの部長と担当者、CCには社内の上司、同僚…というふうに。
やり取りは、そのまま「全員返信」にして送りますが、これを複数の人が何度も繰り返すたび、宛先の名前順がごちゃごちゃになります。それはそれで仕方ないかな、と私は思っていたのです。
ところが、とある仕事で出合ったHさんは、全員メールを返信するときに、TOとCCの名前を、それぞれ上席から順に並べ直していました。さらに、メールに表示される名前を、クライアントには「様」をつけ、社内には「(様がついて送られてきたら)様を取る」というふうに、アドレス帳に登録し直してから、全員返信。なんというきめ細やかさとさりげなさ。
その作業に気づく人がいないとしても、「万が一、上席の方が順不同な名前を目にしたとき」の気持ちを考えて、「ついやっておきたくなる」そうです。Hさんは、「飲み会で上司が上座にいたのに、時間がたつと乱れてしまって、若手社員が上座にいる」みたいなのが、気持ち悪いタイプなのでしょう(ちょっと違うかな?)。
ビジネスメールでの長々としたお礼や、まどろっこしすぎる敬語はありがたいけどちょっと迷惑。メールを送られる側にたてば、場を停滞させず、あくまでもさりげない、こういう気遣いは、本当にしていただいてうれしいものです。
きっとHさんは席が乱れた飲み会で、そっと若手社員の飲み物を下座の席に動かして、移動を促すタイプなのでしょう(推測)。なにも気づかせずにスムーズにみんなの仕事が回ったら、それこそが「気遣い成功」なのかもしれません。
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南 ゆかり
フリーエディター・ライター。Cancam、Oggiでもインタビュー、コラムなど連載中。