宝塚歌劇団を退団されて約7か月になりますが、退団したことを最も強く実感した出来事などはありましたか?
愛月:しばらく「長い休みに入った」という感覚だったんです。専科時代に4か月程度の長いお休み期間を経験していたため、今回もなんだか長期のリフレッシュ期間のように感じていました。ところが最近、星組大劇場公演を観て、自分がそこにいたことを振り返りながらも「あぁ、辞めたんだな」という実感が沸きました。
私個人の感想なのですが…、珠城さんのコンサートで歌われた『アシナヨ』を聴き、当たり前ですけど退団公演とはまったく違う印象で、愛月さんはもうタカラヅカの男役ではないんだな、と。
愛月:自分ではそんなに歌い方を変えようと思っていたわけではないのですが、やっぱり心境が変わると歌い方も違うのかな。あの時は、(珠城さんと)ふたりで歌うのが『ニコライとプガチョフ』だったので、ソロでは柔らかい雰囲気の曲がいいかなと思って『アシナヨ』を選んだんです。
ご覧になった星組公演(『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-/Gran Cantante!!』)はいかがでしたか?
愛月:やっぱりね、熱かったです! あまりにも熱くて、気持ちが盛り上がって笑ってしまうこともあって。みんながコロナに負けず、元気そうに舞台を作っていることがとてもうれしかったです。108期も入ったんですよね。私、それをすっかり忘れていたんですよ。ロケットの時に「この下級生知らないなぁ」という人が何人かいたから、パンフレットで確認して、そうかーって。組子が増えてる!、ってすごくびっくりしたんですよね(笑)。
愛月さんが今の星組を鼓舞するとしたらどんなお言葉を送りますか?
愛月:「最後までコロナに負けるな!」と言いたいです、本当に。天寿(光希、てんじゅ・みつき)さん、音波(みのり、おとは・みのり)さん、華雪りら(はなゆき・りら)ちゃんの3人の退団者もいますし、このまま大千秋楽まで続けてほしいと切に願っています。
(※編集部注:7月9日取材時点で月組宝塚大劇場公演の開幕は延期。宙組ドラマシティ公演は一部公演中止)
宙組→専科→星組と2度の異動により環境が変わり、大変だったこともあると思うのですが、愛月さんならではのコミュニケーション術がありましたら教えてください。
愛月:私はまったく人見知りをしないんです。あと、心で思ったことを全部口に出しちゃうから、「この人は裏表がないんだな」と思ってもらいやすいのかも。ミステリアスな部分が皆無なんです(笑)。
宙組ではみんなご存知だったと思うのですが、星組ではびっくりした人が多かったと思います。特に下級生とか、宙組の舞台だけを観ていた人はおそらくクールな印象を持っていたと思うんですよ。でも実際に来た人はそんな想像を全部破壊していった。なにもかもふざけたことしかやっていなくて、びっくり仰天レベルだったと思います(笑)。
気持ちがオープンなんですね。
愛月:そうですね、全部見せちゃう。言わなくていいことまで言っちゃうかも…。
でも舞台上ではカッコよくてクールで、観客を痺れさせてくださって。
愛月:それはもう、プロなので一瞬で役に入れます。舞台袖では、舞台に出るギリギリまでふざけてしゃべっていました(笑)。新人公演で私の役をやる子に「舞台を見て、出番のタイミングを教えて」とお願いしておいて。舞台を見ることは勉強になりますし、見ながらいろいろ話したりもしていましたね。
愛月家のみなさんもおしゃべりが好きなんですか?
愛月:あのね、声が大きい(笑)。私は下級生から「静かにしてください」と言われるくらい声が大きいんですけど、どうやら母も会社で声が大きいと言われるらしいんですよ。父もめちゃくちゃ声が大きいし、それもう、遺伝的に静かにできないじゃんと思って(笑)。父はそんなにおしゃべりではないんですけどね。母と私がわーっとしゃべって、父がうんうんと聞いている感じです。
トークライブやコンサート、ミュージカル、宝塚受験スクールのプロデューサーなどさまざまな活動をされていますが、すべての仕事において愛月さんはどんな信念をお持ちですか?
愛月:シンプルに、やりたいことしかやらないと思っています。役者として惹かれる演目だから出る、宝塚歌劇団で培ってきたことを教えてあげたいからタカラヅカ受験のお手伝いをする。自分にとって魅力のある仕事を、前向きに取り組んでいます。
今回のシアター・ドラマシティ30周年記念コンサート『Dramatic City “夢”』では、 多くのタカラヅカOGの方とご共演されます。
愛月:お稽古は8月末あたりからなので、まだみなさんとお会いできていないんです。先日、麻路さき(あさじ・さき)さんと稔 幸(みのる・こう)さんとは取材でご一緒しました。同期の夢妃杏瑠(ゆめき・あんる さん)と星吹彩翔(ほしぶき・あやと さん)がいるのはとても心強いです。実は、同期以外で現役時代に共演させていただいたことがあるのは北翔海莉(ほくしょう・かいり)さんだけなんです。と言っても、北翔さんが宙組にいらした時は私はピヨピヨの下級生だったので…。もちろん存じてくださっていると思うのですが、お芝居でたくさん絡ませていただいたことがほとんどなかったから、今回このような機会をいただけてうれしいですね。ステージのおおまかな構成は決まってきていて、北翔さんと歌わせていただく曲があるようなので楽しみにしています。
意気込みをお願いします。
愛月:自分がファンだった頃に見てきた方たち、そしてこの方たちがいらっしゃらなかったらタカラヅカに入ろうと思っていなかったかもしれません。そんなみなさまと同じ舞台に立ち一緒に歌わせていただけるのはものすごいことだなと思っています。いちファンとしてもテンションが上がりますし(笑)。宝塚歌劇のことを学ぶわけではないですが、上級生の方々が持つ魅力を引き出して吸収させていただき、いい時間にしたいですね。
楽しみにしています! 11月に月組の全国ツアーが市川市文化会館であるので、市川市観光大使としておすすめする市川市の見どころはどこですか?
愛月:アイ・リンクタウン展望施設にぜひ。私が市川を離れている時にできた施設のため実はまだ行ったことがないのですが、地上150mの大パノラマがとても素敵みたいです。いつか絶対に行きたいと思っています。あとは、梨! みずみずしくておいしいんですよ。
(※編集部注:愛月さんのインスタグラムによると、アイ・リンクタウン展望施設は取材後に訪れたようです)
今後の目標や展望を教えてください。
愛月:今日もそうなのですが、写真を撮っていただくことが楽しいんです。タカラヅカに入っていなかったらモデルがやりたかったくらい撮影が大好きなので、Webや雑誌などでのお仕事を継続的にやっていけたらいいなと思っています。これから撮り下ろしのカレンダーを出す予定があり、その撮影も充実した時間でした。
写真をもっと見る取材場所は丸の内。ちょうど星組東京公演期間中で、「キャトルの紫の袋を持っている人を見かけるとついドキッとしてしまって…」と笑いながら登場された愛月さん。ワンピース姿だったため、「今までの男役のイメージを持っていらっしゃる方に、“急に女の子っぽくなって…”と思われてしまうのが心配なんです」。“男役・愛月ひかる”ファンの気持ちを今なお大切にしてくださる意識に、うれしくなりました。
次回は、愛月さんのルーティンや買ってよかったもののほか、ご用意いただいた2パターンのコーディネートの解説をしていただきます。お楽しみに!
撮影/名和真紀子 構成・文/淡路裕子
シアター・ドラマシティ30周年記念コンサート
『Dramatic City “夢”』
【作品紹介】
シアター・ドラマシティは、1992年大阪・梅田茶屋町に最先端技術を駆使した劇場として誕生。同年12月には初の宝塚歌劇公演となる「TAKARAZUKA夢」を上演し、以来大阪の文化発信地として、宝塚歌劇をはじめとした様々なエンタテインメントを世に送り出してきました。開場30周年を記念し、同劇場に所縁の深い宝塚歌劇OGをお迎えして、懐かしの楽曲から定番のナンバーまでバラエティ豊かに盛り込んだスペシャルなコンサートを開催いたします。
【キャスト】
麻路さき 稔 幸 和央ようか 風花 舞 大鳥れい 北翔海莉 愛月ひかる
羽純るい 夢妃杏瑠 星吹彩翔 彩月つくし
【公演日程】
<東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)公演>
9月9日(金) 14:00開演/18:00開演★
9月10日(土) 14:00開演
<梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演>
9月16日(金) 14:00開演/18:00開演★
9月17日(土) 13:00開演/貸切公演
9月18日(日) 13:00開演
★=SPECIAL AFTER TALK SHOW!
登壇者:麻路さき、稔 幸、和央ようか、風花 舞、大鳥れい、北翔海莉、愛月ひかる
(司会)羽純るい
【チケット】
<東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)公演>
一般発売日: 2022年7月30日(土)
座席料金:S席 11,500円/A席 7,000円
お問い合わせ:梅田芸術劇場 TEL.0570-077-039(10:00~18:00)
<梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演>
一般発売日:2022年7月30日(土)
座席料金:全席 11,500円
お問い合わせ:梅田芸術劇場 TEL.06-6377-3888(10:00~18:00)
▶︎公式サイト
愛月ひかる
あいづき・ひかる/8月23日生まれ、千葉県出身。2007年に93期生として宝塚歌劇団に入団し、星組大劇場公演『さくら/シークレット・ハンター』で初舞台を踏んだのち、宙組に配属される。2010年『誰がために鐘は鳴る』から、『美しき生涯』『華やかなりし日々』『モンテ・クリスト伯』と4度にわたって新人公演主演を務める。2014年『SANCTUARY』でバウホール公演初主演、2018年『不滅の棘』で東上公演初主演、2019年に専科へ異動し『宝塚巴里祭2019』で主演。星組全国ツアー公演『アルジェの男/ESTRELLAS〜星たち〜』に出演したのち、星組へ異動となる。星組男役スターとして大きな存在感を放ちつつ舞台を支え、2021年『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!』にて宝塚歌劇団を退団。8月に『愛月ひかるTALK&LIVE』の開催、9月にシアター・ドラマシティ30周年記念コンサート『Dramatic City “夢”』、10〜11月にはミュージカル『ファンタスティックス』への出演をひかえている。宝塚受験スクール「Classy Lessons クラレス」のプロデューサーも務める。
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