「IT化= 単純化、考えなくていい」ではない
今年3月、NHKで放送された『100分deメディア論』という番組がありました。反響の電話が殺到し、放送批評懇談会の「ギャラクシー賞」を受賞。4月に再放送もあり、現在はNHKオンデマンドで観ることができます。
古今東西の名著を読み解きながら、現代とこれからのメディアや情報との接し方を考えるというもの。90分の番組は情報量が多く、また深く議論されているので、一度では咀嚼しきれず、もう一度観返してしまいました。
ここで紹介された本は、
『世論』(W.リップマン)
『「空気」の研究』(山本七平)
『イスラム報道』(エドワード・W. サイード)
『一九八四年』(ジョージ・オーウェル)
私がいちばん印象に残ったのは、『イスラム報道』が説いている「いかに私たちはバイアスがかかった状態でものごとを見ているか」ということ。そして、どの本にも共通している「考えることをやめてしまうことは、とても怖いこと」ということ。
『一九八四年』は、今のIT社会を予測していたことで、何度目かの再ブレイク中だそうですが、最近国会でザワついてた「記録の改ざん・破棄」、そして現在の「SNS炎上」などまでも予言していているのは、ほんとうに興味深い。
でも、嘆いてばかりいではなく、やれることはあるというのが、この番組で、そのひとつが「問いかけ続ける」ということでした。
ニュースに接しながら、いつの間にか偏見をもって見ていないか、単純化されたものに安心してないか。何かを選ぶとき、本当に自分の考えで選んでいるか。たとえば、買い物履歴からレコメンされたものを、「欲しかったかも?」と思い込んでしまったり、ニュースの見出しだけで知った気になったり。IT化= 単純化ではなく、ツールであると肝に命じて、考えること、問いかけることを怠らないようにしよう。あたりまえだけど大事なこと。そんなことを考えている、今日このごろです。
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。Cancam、Oggiでもインタビュー、コラムなど連載中。いまハマり中なのはドラマは『花のち晴れ』! 大好き! でも、ニヤついた顔で観てる自分にふと気づくと、すごく引きます。