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2023.02.20

「法被」←なんと読む?どんな意味?|言葉の由来や歴史を解説

「法被」はお祭りやイベント時に羽織る、和服の上着のことです。江戸時代には武士だけでなく職人や商人も着用しており、お祭りで着るイメージが定着したのは大阪万博だといわれています。本記事では法被の意味や由来のほか、混同しやすい半纏との違いも解説します。

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法被とはお祭りなどで羽織る和服の上着のこと

法被は「はっぴ」と読み、お祭りやイベントなどの際に着る和服の上着のことです。袖は長袖で、膝丈か腰丈です。帯をしめずに羽織って着ることも多いですが、お祭りなど神様にまつわる儀式のときには帯を締める着方が一般的といえるでしょう。

祭と書かれた法被を着た少年の後ろ姿

大辞泉アプリには、以下のように記載されています。

【法被/半被:はっぴ】《「はふひ(法被)」または「はんぴ(半臂)」の音変化》
1.和服の上着の一種。広袖か筒袖で、膝丈または腰丈。襟は折り返さないで着る。職人などが用いる。江戸時代は、武家の中間、大店の下僕などが家紋のついたものを、襟を羽織のように折り返して着用した。印半纏。2.禅寺で、椅子の背に掛ける布。3.能装束の一。胸紐のない広袖の上着、甲冑武者や鬼畜などの役に用いる。

(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)

■由来は平安時代以降の貴族の下着

法被は「はっぴ」と読みますが、これは平安時代以降の皇族や公家の下着であった「半臂」(はんぴ)が由来であるとされています。半臂は当時の皇族などが、正装である束帯(そくたい)を着るときに、下着として着用していた袖無しの胴衣のことです。

なお、半臂は下着とはいうものの、素肌に直接着るわけではなく、先に下襲(したがさね)をつけてから半臂を重ねていました。半臂によっては、平安貴族の美意識の高さを感じさせるような、複雑な刺繍や染色が施されていたようです。

■当初は「はんぴ」と呼ばれていた

法被は、前述のとおり平安時代以降の貴族の下着である半臂(はんぴ)が転じて、現在のように「はっぴ」と呼ばれるようになりました。時代の移り変わりとともに発音も変化したと考えられます。

■法被は当て字

時代とともに半臂の発音が変化して、現在の呼び方になった法被ですが、漢字は当て字というのが通説です。法被はもともと、禅寺の高僧が座る椅子の背もたれにかける布を意味する言葉です。

しかし、椅子の背もたれにかける法被と、羽織って着用する法被には関係がないため、法被の漢字は発音が同じであったことから生じた当て字と考えるのが自然といえます。

法被の歴史

法被のルーツは平安時代以降の皇族や公家が着用していた下着にあり、江戸時代には羽織物として、武士のほか職人や商人にも広がりました。ここからは、法被の歴史を解説していきます。

神輿を担ぐ法被を着た人たち イラスト

■江戸時代には武士のほか、職人や商人も着用

法被のベースは、江戸時代の武士が着用していた羽織をシンプルにしたものと、職人や商人などが制服として着用していた「印半纏」(しるしばんてん)とされています。

もともと武士が着ていた羽織は、一般市民との身分を区別するためのものでした。胸元に紐が付き、背中に家紋を大きく染め抜いた単衣(ひとえ)を、襟を返して着ていました。

またお祭りなどの行事で法被が着られるようになったのも、江戸時代からと考えられます。江戸時代のお祭りは労働者階級の人々が運営しており、お祭りの運営者を判別しやすくするために正装として用いられ始めました。現在、お祭りやイベントなどで法被を着用するのは、これらの名残かもしれません。

■大阪万博で「お祭りで着る」イメージが定着

法被が再び注目を集めたのは、昭和45年に開催された大阪万博でした。当時、高度経済成長期にあった日本では、各地でお祭りが行なわれ、伝統的なお祭りの人気が復活してきている状況でした。

そのような中で、大阪万博でイベント用の衣装として法被を着用したことから、世間に法被という言葉が広がり、また「お祭りで着る服」というイメージが定着したと考えられます。現在ではお祭りの際にはもちろん、企業やお店の催し物やイベントでも法被を着ることが少なくありません。

法被と半纏の違い

法被と同じようにお祭りやイベントなどで着用する羽織物として、「半纏」(はんてん)があります。両者の違いについて、よくわからないという方も多いでしょう。ここからは、法被と半纏の違いについて解説します。

祭と書かれた法被のイラスト

■半纏とは

半纏のルーツは、江戸時代に職人や商人などが制服として着用していた羽織物にあります。法被の由来は武士の羽織である一方で、半纏はもともと庶民の“防寒着”であったという点が両者のルーツに関する違いです。

そのため法被には裏地がない単衣であるのに対し、半纏は保温性が重視され、裏地が付いているのも特徴です。

江戸時代、武士の間では背中に家紋を入れた法被が流行し、その影響で庶民にも法被が広まっていきました。しかし、身分階級の異なる武士と庶民が同じ服を着用することが問題とされ、幕府による「羽織禁止令」によって、庶民が法被を着ることは禁じられてしまいます。

その結果、法被を着るのを禁止された庶民の間で、武士が着る法被から胸紐を無くして半纏風にアレンジした印半纏が大流行するのです。

■法被と半纏が混同された理由

江戸時代、庶民に法被を半纏風にアレンジした印半纏が流行したことで、法被と半纏の区別は曖昧になっていきました。法被は家紋を染め抜き、印半纏にも屋号や家紋を入れることが一般的であったことも、法被と半纏が混同された要因と考えられています。

法被の正しい着方

法被は、羽織るだけで手軽に粋な雰囲気を演出することが可能です。着物などとは違い簡単に着用できるからこそ、正しい襟の重ね方や帯の締め方を知らない方もいるはずです。法被の正しい着方をマスターしておきましょう。

キャンペーンのために法被を着て声かけをしている人たちのイラスト

法被の正しい着方は、以下のとおりです。

1.法被を羽織り、襟周りを整える

2.法被の左前身頃が外側にくるように襟を重ねる

3.帯を締めて襟元と裾を整える

4.後ろの裾を引っ張り、襟を抜く

 

■法被を着る際の注意点

帯を締めて着用する場合、左襟が上になるように注意しましょう。いわゆる「右前」と呼ばれる着方が正解です。

自分から見て右襟が上にくる「左前」は、死装束に用いられるために縁起が悪いとされています。左右の襟の位置を間違えないように気をつけましょう。

■アレンジして着こなす方法も

本格的な神事では下に鯉口シャツや腹掛けなどを着るのが一般的な法被ですが、それ以外ではあえて下にTシャツやタンクトップなどを合わせるのもお洒落です。ボトムに関しても、スエットやジーンズなどを選ぶとこなれ感が出ます。

また法被をお洒落に着こなすためには、帯を締めた後に襟元に手を入れてゆとりを出す、帯をウエスト位置ではなく腰骨のあたりで締めるといったアレンジも有効です。

法被の由来や歴史を知ろう

クマのぬいぐるみが法被を着て和太鼓を叩いている様子

法被は「はっぴ」と読み、お祭りやイベントなどの際に着る和服の羽織物を指します。羽織るだけで粋な雰囲気を演出できるのが、法被の魅力といえるでしょう。

平安時代以降の貴族の半臂という下着が由来で、江戸時代には武士のほか職人や商人にも広まりました。時代とともに、半臂の発音が変化し「はっぴ」になったと考えられています。

この機会に法被の由来や歴史をおさえ、知見を広げましょう。

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