男だらけの映画『最後まで行く』に深みを加える広末さんの存在。その背景にあるもの
映画では描かれない、妻としての背景と苦悩
──広末涼子さんの最新出演映画は、5月19日公開の『最後まで行く』。公開を前に期待が最高潮に高まる本作で、岡田准一さん演じる刑事・工藤の妻・美沙子を演じた広末さん。アクションやサスペンス要素の多い本作に、深みを加える重要な存在です。
「クランクインするにあたり、藤井道人監督から、私が演じる役についての資料をもらいました。そこには、台本には描かれていない美沙子の背景や性格までがびっしりと書かれていました。過去に夫とどのように出会って、どんな出来事があったのか。親との関係、人知れず苦労してきたこと…。こうした情報があったからこそ、納得して現場に身をおくことができました。そして物語の鍵ともなる、美沙子が家庭を守り抜く強さに説得力が出るのです。
撮影では感情の出し方を少しずつ変えながら、ひとつのシーンを何パターンもやってみる。キャリアや年齢を重ねると、年下の監督が多くなり、すぐにOKをいただくことが多くなりますが、藤井監督は違いました。美沙子の思いを推測しながら、何度も何度もテイクを重ねていく。それは私にとって貴重な経験でした」
写真をもっと見る映画『最後まで行く』は、広末さん演じる妻・美沙子の「イライラ」から始まります。そして物語が進むにつれて、怒り、悔しさ、あきらめ、強さ…なども交錯。アクションやサスペンスの面で、期待も評価も大きい本作ですが、妻・美沙子の背景や気持ちを想像しながら、美沙子目線で観賞するのも、もうひとつの楽しみといえそうです。
「実際の私は、夫が映画のように危険と向き合う仕事だったら、心配で身がもたないでしょう(笑)。人が痛い思いをするのでさえ辛いし、だからこそ美沙子の強さには感服します」
©2023映画「最後まで行く」製作委員会
40代になったら表舞台から去るんだろうと思っていました
「私自身は、美沙子のようにストレートに感情をぶつけるタイプではありません。怒ることもほとんどないし、何かが起こっても案外冷静に、少し離れたところから見るようなところがあります。きっと、若いころから仕事をしていくなかで、場の空気を感じて調和をとったり、全体を俯瞰したりすることが、訓練されてきたからかもしれませんね。
「10代、20代のときは、嫌なことでも、暑くても寒くても、がまんするのが当たり前だと思って、自分を抑えていました。その上、人に甘えることも苦手。でも、さまざまな現場を経験してわかったのは、“いい仕事をするためなら、きちんと主張する”ということ。そして必要なときは人に頼ったり、甘えたりすること。私がどうしたいかだけでなく、周囲を見ながら調和を取っていくのが、今の私の役割なのかなと感じています」
ただいま42歳。3児の母であり、最近ではドラマ、映画出演が続いている広末さん。
「かつては、40代になったら表舞台から去るんだろうと思っていました。だって、子育てしながら若くいなきゃいけない、美しくいなきゃいけないなんて…。そんなこと無理だと思っていました(笑)。でもあるとき、犬童(一心)監督に言われたのです。『あなたは年相応の役ができる女優さんだ』と。すぐにはその意味を自分の中に落とし込むことはできなかったけれど、今ならよくわかります。
若くいることが大事なのではなく、おばさんになっても、おばあさんになっても、その時々で素敵だったら、いちばんいい。そして、その味が出せるのが女優という仕事なのだと」
いつでも前を向いて、子どもたちに背中を見せる
歳を重ねることへの意識が変わると、おのずと状況もついてくる。今の広末さんはそれを実感しつつ、行動で証明しています。
「30代後半くらいからでしょうか。チャレンジしてみようと思うことがいくつか舞い込んできて。お芝居はもちろん、執筆すること、写真集の仕事、こうして私自身や家族のことを話すこと…。40代になってから一歩踏み出すのは怖いし、果たして本当に必要なことか考えることもあったけれど、やってみればやっぱり楽しい。そして、私が挑戦すること、続けることで誰かの勇気につながるなら、あきらめずに頑張りたい。日頃から子どもに対して、『若いんだからなんでもできるよ』『夢は叶うよ』と話すのですが、ただ言うだけでは説得力がありません。いつでも前を向いて、私が仕事で背中を見せないと。そして『大丈夫、ママの子なんだから!』と背中を押す。実際は、どこまで子どもに響いているのかは、わかりませんけどね(笑)。
こんなふうに仕事に関しては『最後まで』あきらめないで『行く』のが、私のスタイルです(笑)。今まで自分の芝居に満点を出せたことがない、というのも、続ける原動力。きっと、満足してしまったらそのときに終わってしまうかもしれません」
プライベートでもゆっくりするのは苦手。仕事で疲れていても、家族とは顔を合わせてたくさん話し、意見を交換し、褒めたり背中を押したり押されたり…。いい関係がそこにはあるのだそう。
「限られた時間のなかで、できるだけ“一緒に”過ごしたい。勉強や遊びはもちろん、家事や片付けをゲームにしながら楽しんだり、料理もみんなで集まって一緒に作る。その結果、息子も家事や料理ができるようになったらいいなと。今から、イクメンになるための英才教育してます(笑)」
俳優
広末涼子
ひろすえりょうこ/1980年生まれ、高知県出身。1994年にCMオーディションでグランプリを獲得し、デビュー。以降、映画・ドラマ、CMなどで活躍。主な出演作は映画『鉄道員』『おくりびと』『ゼロの焦点』『鍵泥棒のメソッド』『はなちゃんのみそ汁』『コンフィデンスマンシリーズ』『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版『あちらにいる鬼』など。ドラマは『ビーチボーイズ』『ヤスコとケンジ』『聖女』『ナオミとカナコ』『桜の塔』『ユニコーンに乗って』など。2023年は連続テレビ小説『らんまん』、プレミアムドラマ『グレースの履歴』に出演。
映画『最後まで行く』
年の瀬も押し迫る12月29日の夜。危篤の母のもとに向かうため雨の中で車を飛ばし、交通事故を起こしてしまう刑事・工藤。様々な事情が重なり焦りで心が一杯の工藤は、とんでもない行動に…。最後の最後まで目が離せない、ノンストップエンターテインメント。
©2023映画「最後まで行く」製作委員会
映画『最後まで行く』
2023年5月19日(金) 全国ロードショー公開
監督:藤井道人
出演:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、山田真歩、清水くるみ、杉本哲太、柄本明
ジャケット¥115,500(HARUNOBUMURATA)
パンツ¥151,800(GIA STUDIOS)
以上問い合わせ先:THE WALL SHOWROOM 03-5774-4001
ピアス¥2,255,000・ペンダント¥1,705,000・ブレスレット¥3,410,000・リング¥1,012,000(ティファニー)
問い合わせ先:ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク 0120-488-712
※価格はすべて税込です。
撮影/中田陽子 スタイリスト/道端亜未 ヘアメイク/奥平正芳 取材・文/南 ゆかり