ストーリーとお芝居をしっかり表現できる小劇場公演をやりたいと、前々から思っていたんです。華やかなセットや衣裳ではない、まったく違う作り方の舞台に挑戦したいなと思ったのがきっかけ。で、どんなのをやろうかなと考えていたところ、昨年のドラマ『合コンに行ったら女がいなかった話』で脚本をされていた保木本(真也)さんと話す機会があり、そこでミステリーシットコムをやってみようと。それからどなたにやっていただこうかな…と話が固まっていったんです。「よし、やろう!」って決めたのは今年の春くらいかな
お稽古真っ只中の『ザマネ』。中心となるおふたりに突撃取材!
宝塚歌劇団を退団後、さまざまなフィールドで活躍を続ける七海ひろき(ななみ・ひろき)さん。今回はプロデューサーとして、元宙組出身のメンバー4人を率いて新感覚のミステリーシットコムに挑戦。東京と大阪、それぞれ約250人程度が入るキャパシティの劇場での公演というのも新鮮です。
主演はなんと、今年6月に宝塚歌劇団を退団したばかりの元宙組組長・寿つかさ(ことぶき・つかさ)さん! ほか、緒月遠麻(おづき・とおま)さん、伶美うらら(れいみ・うらら)さん、澄風なぎ(すみかぜ・なぎ)さんが出演。
夫が突然失踪した主婦ミツキ(寿つかさ)が、夫を探しているうちに洋館にたどり着く。その洋館でアオイ(七海ひろき)から「5,000万円を山分けしよう」と持ちかけられるが、それは昔ミツキの夫が犯罪行為により手に入れたお金で、その犯罪は3日後に時効を迎える。そこに、洋館の主人マリ(緒月遠麻)や刑事のサエ(怜美うらら)、フードの配達員ウオ(澄風なぎ)が絡んできて…。果たしてミツキとアオイは無事に、5,000万円を手に入れることができるのか!?
…というお話を、場面を変えることなく演じる作品。宝塚歌劇とはまったく違う趣で、とっても興味深い!
今回は、寿さんと七海さんに、作品のことやお稽古の裏側についてお話をうかがいました。2回の記事と1回のイラストレポートに分け、お届けします。
写真をもっと見る今までとは違うジャンルの作品ですっしぃさんに主演してほしい!
「すっしぃ(寿)さんがこんなはやくに活動開始!? しかもかいちゃん(七海さん)がプロデュースする作品で!?」とファンの間でも話題を呼んだ、舞台『THE MONEY』。どんな流れで制作が決まったのでしょうか。
七海さん
寿さん
それで退団後の私に声をかけてくれてね
七海さん
いちばん最初に浮かんできたのがすっしぃさんだったんですよ。宙組時代にご一緒したすっしーさんのお芝居がとっても好きで、また一緒になにかを作りたいなって。すっしーさんの主演を、私がいちばん近くで見たいという気持ちもあり(笑)
寿さん
私にとっては予想だにしなかったことでね。タカラヅカ人生34年、充実した気持ちで卒業したから、「これからどんなことがしたくなるかな」って今年はゆっくり考える1年になるだろうと思っていたのに、かいちゃんから連絡をもらってね。まさかこんな早い時期に舞台のお話をいただけるとは思っていなかったし、自分の人生に“主演”という機会がおとずれるとは。いろいろなことに驚いてすぐに返事ができなくて、「ちょっと考えさせてください」って。1週間くらい時間をもらったかな?
七海さん
そうですね。すっしぃさんが出てくれることが決まり、ほかにも一緒にお芝居をしたいと思った方たちにオファーしてそれが続々と決まって。とてもうれしかったです
寿さん
かいちゃんが「こういう舞台を作りたい」と話してくれたのが私も挑戦してみたいジャンルだったこと、宙組時代に切磋琢磨して支え合いながらいろいろな作品を作ってきた想いがよみがえり、また一緒にやってみたいという気持ちが強くなって、ありがたくお受けしました(笑)
いかに自然にしゃべっているように演じられるか。少人数ならではのテンポ感に悪戦苦闘中
宝塚歌劇のように大きい劇場で大人数のキャストが出演しじっくり進む作品とは異なり、コンパクトな劇場で少人数が演じる形式。表現方法や発声方法など演じ方にも違いはあるのでしょうか。
七海さん
本格的なお稽古は8月4日からでしたよね。その前に一度、初めての本読みをして
寿さん
今ちょうど半分くらいの日程かな(※取材日は8月13日)。いろいろなタイプの作品がある中で、今回は保木本さんの演出作品に出るという意識で挑んでいるかな。役を生きるという点や、みんなで同じテーマに取り組んでいる感覚は宝塚歌劇と変わらないかも。でもやっぱり、小劇場のシチュエーションコメディとなるとテンポ感が違うよね。5人で作るテンポ感やリズムは、私は初めての経験なので、今いろいろ教えていただきながら進めているところ
七海さん
テンポ感はまだちょっと掴みきれないですね。5人だから掛け合いがすごく多くて。そこを、芝居をしながらどこまで自然に見せられるかというのが課題。セリフを言っているのではなく、まるで今しゃべっているみたいに見えるところまでいくのが目標ですが、まだまだ道のりは遠いなと現段階では思います。あと、まだ想像でしかないのですが、お客さまとの距離がすごく近いという緊張感。緒月さんがCBGK シブゲキ!! に出たことがあるらしく、「すっごく近い」って言ってました
寿さん
今まで私たちが出ていた舞台は客席とちょっと距離があり、ステージにも高さがあったもんね
七海さん
そうなんですよ。今まで舞台上からお客さまとパッと目が合うということはあまりなかったじゃないですか。でもこの劇場だと、きっとすごく目が合っちゃうんじゃないかなと思って。それって、今まで味わったことのない緊張感が生まれるんじゃないかと思っています。お客さまの呼吸も感じるかもしれない。笑ったり息をのんだりの雰囲気がダイレクトに感じられる、どんな空間になるのかなと楽しみです