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2024.12.28

「マタハラ」とは? 働く女性を苦しめる職場の無意識バイアスを解説【専門家監修】

「マタハラ」とは、「マタニティ・ハラスメント」の略称のこと。マタニティ“maternity”(母性)とハラスメント“harassment”(いじめ・嫌がらせ)を組み合わせた和製英語です。英語圏では“pregnancy discrimination”(妊娠に伴う差別)と呼ばれています。この記事では、「マタハラ」の具体例とよくある誤解や、職場でできる対策を紹介します。

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「マタハラ」という言葉を耳にする機会が増えていませんか? 働きながら子育てをする女性が増える現代社会において、この問題は避けて通れない課題です。しかし、「マタハラ」の本質を理解し、それをどう防ぐかを問われると、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

そこで、この記事では、「マタハラ」に関する基礎知識に加え、その背景にある社会的な変遷や実際の対策を掘り下げて紹介します。

「マタハラ」とは? 定義と背景

職場の中での暗黙のルールや意識の低さが、どのように「マタハラ」の問題を深刻化させているのでしょうか? ここでは、歴史的な背景も交えて「マタハラ」の全体像をお伝えします。

マタハラ

(c)AdobeStock

「マタハラ」の意味を押さえよう

「マタハラ」とは、「マタニティ・ハラスメント」の略称のこと。マタニティ“maternity”(母性)とハラスメント“harassment”(いじめ・嫌がらせ)を組み合わせた和製英語です。英語圏では“pregnancy discrimination”(妊娠に伴う差別)と呼ばれています。

マタハラとは、妊娠・出産、さらには育児を理由に職場で不利益な扱いを受ける行為を指します。セクハラ、パワハラとあわせて、働く女性に対する三大ハラスメントといわれていますよ。

一方で、マタハラは女性だけが対象ではありません。育児休業を取得する男性に対するハラスメントもあり、「パタハラ」と呼ばれています。男性が育児をすることに対する偏見は、女性の負担をより一層増やしてしまうことになります…。

「マタハラ」の歴史と法的背景

「マタハラ」に関する法的規制は、1985年の男女雇用機会均等法で妊娠・出産を理由とする解雇が禁止されたことに始まります。その後、2007年の法改正で退職強要や非正規雇用への変更、減給などの幅広い不利益な取扱いが禁じられました。

さらに、2017年には上司や同僚による嫌がらせも規制対象となり、事業主には防止措置の義務が課されました。2019年には、女性活躍・ハラスメント規制法により、言葉や態度によるハラスメントが明確に禁止され、相談体制の整備も義務化されました。

ただし、罰則規定がないため、実効性をどう確保するかが課題です。これらの法改正は「マタハラ」防止の基盤を築きましたが、職場環境や社会全体の意識改革が引き続き求められています。

「マタハラ」の具体例とよくある誤解

「マタハラ」と聞いても、どんな行為が該当するのか具体的に想像しにくいかもしれません。ですが、具体的なケースを知ると、その深刻さがより身近に感じられるはずです。

また、本人に悪意がなくてもマタハラになる場合があることは、意外と見落とされがちかもしれません。ここでは、職場で起きやすいケースを紹介していきます。

マタニティ

(c)AdobeStock

職場で起きやすい「マタハラ」のケース

「マタハラ」は特別な場面だけで起こるわけではなく、職場の何気ない言動の中に潜んでいます。例えば、こんなケースが挙げられます。

・妊娠中の社員に「もう迷惑かけないでくれ」と発言する。
・育休から復帰した社員に、以前のような責任のある仕事を任せない。
・職場の飲み会で、妊娠を理由にからかう
「男のくせに育児休業なんてとるのか」と発言する。

どれも被害者にとっては大きな精神的負担となる行為です。特に管理職が「本人のため」として行う配置転換などは、事前にしっかり意思確認をしていなければ、結果的にハラスメントと見なされる可能性があります。

妊娠中や育児中の社員が感じるプレッシャーとは?

妊娠中や育児中の社員が抱えがちな「迷惑をかけているのでは…?」という感覚。このようなプレッシャーは、精神的なストレスを引き起こし、仕事へのモチベーション低下や退職という結果を招くこともあります。「マタハラ」は見えにくい問題ですが、その影響は非常に大きいのです。

「マタハラ」を防ぐために職場ができること

「マタハラ」を防ぐには、企業全体での取り組みと管理職の意識改革が欠かせません。具体的にどんな対策を講じるべきなのでしょうか? ここでは、企業や管理職が今すぐ取り組める方法を分かりやすく解説します。

マタニティと職場

(c)AdobeStock

企業として取り組むべき対策

まず、企業全体で「マタハラ」を防止する仕組みを整えることが重要です。具体的には次のような施策が効果的です。

・研修やセミナーの実施
社員全員にハラスメントの具体例や防止策を学ぶ機会を提供することで、無意識の偏見や誤解を取り除くことができます。

・相談窓口の設置
社内に信頼できる相談窓口を設け、被害者が安心して声を上げられる環境を整備します。相談がプライバシーを守りつつ迅速に対応されることがポイントです。

・柔軟な働き方の制度を導入
妊娠中や育児中の社員が、無理なく働けるようリモートワークやフレックスタイム制の導入を検討。これにより、従業員の働きやすさが向上し、結果的に職場全体の生産性も高まるでしょう。

管理職が意識すべきポイント

職場の雰囲気を作る大きな鍵を握るのは管理職です。管理職が意識すべき行動を具体的に挙げます。

・社員の状況や希望を正確に把握する
妊娠中や育児中の社員に対して、本人の意思を尊重しながら業務の調整を行います。

・配慮と過剰な干渉を区別する
「気遣い」のつもりが過干渉や差別と受け取られないよう注意します。例えば、業務の軽減は本人の希望を尊重しながら行うことが重要です。

・教育を通じて偏見や無理解を排除する
まずは自分から「マタハラ」を正しく理解し、無意識の偏見に基づいた対応をしないよう努めましょう。また、部下にもハラスメント防止の重要性を伝えたいですね。

働きやすい職場づくりのヒント

社員が安心して仕事と家庭を両立できる環境を整えるためには、以下の取り組みが有効です。

・リモートワークやフレックスタイム制の活用
通勤の負担を減らし、柔軟な働き方を可能にすることで、妊娠中や育児中の社員が働きやすくなります。

・育児支援手当や福利厚生の充実
育児支援を目的とした金銭的なサポートや福利厚生の拡充も、社員のモチベーション向上につながります。

・職場全体の意識改革
社員全員が育児や妊娠に対する理解を深めることで、サポートし合える文化を醸成することが重要です。

最後に

「マタハラ」の問題を解決することは、個人のキャリアを守るだけでなく、企業全体の成長や社会全体の活性化にもつながります。職場での小さな配慮が、働きやすい環境を作り出す第一歩となります。あなたの職場でも、今一度「マタハラ」に向き合う機会を作ってみてはいかがでしょうか?

TOP画像/(c) Adobe Stock

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監修

社会保険労務士 小田啓子(おだ・けいこ)さん

大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。
ライター所属:京都メディアライン

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