マルハラスメントの意味
マルハラスメントは、近年新しく生まれたハラスメントのひとつです。〝マル〟とは何か、どのような問題なのか、ハラスメントはどこまでを指すのかも含めて見ていきます。
文末に句点を付ける行為
マルハラスメントとは「マル(句点)」と「ハラスメント」を組み合わせた造語で、文章の終わりに句点「。」が付いているとストレスを感じるという現象をいいます。
たとえば「了解しました。」という丁寧な文でも、文末に句点があることで威圧感を覚える人がいます。主にSNSやコミュニケーションアプリで、マルを付けない短文に慣れた若い世代に多いようです。
ただし、文末のマルに対する感じ方は個人によって差があります。必ずしも、若い世代全員がマルハラスメントを感じるわけではありません。
どこまでがハラスメントなのか?
ハラスメントとは、相手を不快にさせたり、脅威を与えたりする言動や行為のことです。そのため、相手がハラスメントだと感じることはすべて当てはまる恐れがあります。
しかし、職場における業務上必要な指示・指導は含まれません。厚生労働省の「ハラスメントの定義」によれば、パワハラの条件は以下の3点がそろうことです。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる1.優越的な関係を背景とした言動であって、2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、3.労働者の就業環境が害されるものであり、1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
参照:パワーハラスメントの定義(厚生労働省)
この定義は、マルハラスメントの参考にできます。文末に句点を付けることが相手にストレスを与えるなら、労働環境の悪化防止のためにも配慮する必要があります。
マルハラスメントを受けたと感じる理由

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マルハラスメントについて「そんなことまでハラスメントになるのだろうか?」と思うかもしれません。そこで、主に若い世代が句点をハラスメントだと感じる理由を説明します。
冷たさや威圧感がある
マルハラスメントを感じる人は、LINEやチャットの句点を「よそよそしさ」「会話や関係性の打ち切り」として受け取ってしまうといいます。
ビジネスチャットでは「承知しました。」「X日までに振り返りを提出してください。」といったやりとりが度々ありますが、これらの文章には句点が付いています。そのため、ただの業務連絡として送ったつもりでも、受け手によっては冷たさや突き放された印象を抱く可能性があるのです。
技術の進歩がもたらす世代間ギャップ
長文を書くことに慣れた世代にとって、文章をわかりやすくするため句点を付けるのは、当たり前といえる行為です。一方、若者世代はLINEやチャットの句点を使わない短文の方がスタンダードで、ビジネスチャットの句点には違和感を覚えるかもしれません。
短文のやりとりは相手の感情が見えにくいため、若者の間では文末に絵文字や「!」といった記号を付けて気分を表すのが一般的です。そのような表現が日常的である世代にとって、句点は感情が見えにくく、冷たさや威圧感を覚えてしまう人も中にはいるようです。
普段親しんでいるコミュニケーション方法の違いが、句点に対する認識の差異やマルハラスメントを生んだといえます。
ハラスメントへの対処法

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マルハラスメントを含むハラスメントの対処法には、個人の努力や組織内の意識改革が必要です。自分の価値観を押し付けない配慮や正しい知識を職場全体で共有することなど、ハラスメントへの対処法を確認します。
日常的なコミュニケーションが大切
職場の日常的なコミュニケーションは、ハラスメントを解決する鍵となります。相手がどのようなことに強いストレスを覚えるのか、お互いの理解を深めるためには対話が欠かせません。
業務関連で指導が必要なときも、上から一方的に言うだけでは人間関係をこじらせてしまう恐れがあります。なぜその問題が起きたのか事実確認や原因分析を行い、落ち着いて話し合うことが大切です。
普段から信頼関係を築き誤解を減らせば、マルハラスメントのような問題も未然に防ぐことができます。
自分の価値観を押し付けないよう配慮する
自分の価値観を押し付けないことは、ハラスメント防止にとって重要な考え方です。「これくらいは許されるだろう」という思い込みが、しばしばハラスメントの原因になります。
マルハラスメントという現象について学ぶと同時に、世代によってコミュニケーションスタイルが異なることへの理解、相手の立場に立って考える配慮などが必要です。
メールやチャットを使う上司は、若い部下とのやりとりでは句点を控えるといった気配りもできます。相手の反応を注意深く観察し、必要に応じてコミュニケーション方法を柔軟に変更することが、円滑な人間関係構築のポイントです。
組織内の意識改革を進める
マルハラスメントを含め、ハラスメント防止には組織的な対策も必要です。個人の努力だけでなく企業全体で取り組むと、より効果的な対策が可能になります。
ハラスメント研修の際に、マルハラスメントや世代間のコミュニケーションギャップについて取り上げるのも、ひとつの方法です。また、上下関係や部署の垣根を超えて、従業員同士が気軽にコミュニケーション可能な環境を整えれば、ハラスメントの発生を抑制できます。このような取り組みで、誤解や憶測を防ぐことが大事なのです。
組織全体でハラスメント防止に取り組むことは、従業員の意識向上につながり、全員が快適に働ける職場づくりへつながります。
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