ビジネスにおける「ドリブン」の意味は?
新しく覚えた言葉をビジネスシーンで使えるようになるには、その言葉が持つ正しい意味を把握していることが大事です。まずは、ビジネスにおける「ドリブン」の意味を解説していきます。
元は駆動・推進するという意味を持つ
「ドリブン」は英語の「driven」が語源で、「駆動する」「駆り立てられる」という意味を持ちます。ビジネスシーンにおいては通常、ほかの言葉と組み合わせて「〇〇ドリブン」といった形で用いられます。
会話や文章などでは、「○○ドリブンによって導かれる」「○○ドリブンに基づいた」のように使われるのが一般的です。
ドリブン【driven】
《driveの過去分詞形》
多く複合語の形で用い、それが原動力であること、それが主導していることを表す。「エア—(=圧縮空気駆動式)」「テクノロジー—」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
近年、ITやデジタル技術の発展により、ドリブンの考え方がビジネス戦略の決定に重要な役割を果たすようになりました。経営戦略を策定する際やマーケティング施策を立案する際に、「〇〇ドリブン」が活用されています。
さまざまな種類がある「〇〇ドリブン」
「〇〇ドリブン」の代表例として挙げられるのが、「データドリブン」「カスタマードリブン」「テクノロジードリブン」です。
データドリブンは、客観的なデータに基づいて意思決定を行う手法を指します。「売上データを分析して商品開発に生かす」といったアプローチがデータドリブンの一例です。
カスタマードリブンは、顧客ニーズを中心に据えた戦略立案を指します。「顧客の声を聞いて製品改良に反映させる」といった取り組みがカスタマードリブンに当たります。
テクノロジードリブンは、最新技術を積極的に活用して新たなビジネスを推進する考え方です。AIやIoT(Internet of Things)などの先端技術を導入し、まったく新しいサービスや商品の普及を目指します。
データ‐ドリブン(data driven)
得られたデータを総合的に分析し、未来予測・意思決定・企画立案などに役立てること。特に、ビッグデータを対象とし、各種データを可視化して課題解決に結びつけることをさす。データ駆動型。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「データドリブン」が注目される背景

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数ある「〇〇ドリブン」の中でも、特に重要性が高いのが「データドリブン」といえるでしょう。集めたデータを基に意思決定を行うデータドリブンは、さまざまな企業から注目されています。なぜビジネスシーンで耳目を集めているのか、その理由を解説します。
IT・デジタル化が進んだため
ビジネスの世界でデータドリブンが注目されている理由として、まず挙げられるのが「IT技術の急速な発展」です。
近年のデジタル化によって膨大なデータの収集・分析が容易となり、従来よりもデータドリブンを実行しやすくなったのです。
たとえば、以前は把握が難しかった「顧客の購買履歴」や「Webサイトの閲覧データ」などの情報も、今では瞬時に取得できます。
このようなデジタル化の波は、企業の意思決定プロセスを大きく変えました。直感・経験に依存することなく、客観的なデータを基に判断することが可能となったのです。さらに、AIやビッグデータ解析技術なども進歩を続けており、より精緻な分析ができるようになっています。
以上のことから、データドリブンは今や企業の競争力を左右する重要な要素といえるのです。
多様な消費者行動に対応するため
データドリブンが注目される背景には、「多様化する消費者行動」があります。現代の消費者は、SNSやオンラインショッピングの普及により、行動パターンが複雑化しています。消費者行動の変化へ柔軟に対応するには、データドリブンが不可欠です。
たとえば、ECサイトでの購買行動を分析することで、個々の顧客に合わせた商品レコメンドが可能となります。また、SNSの投稿を分析すれば、ブランドイメージの変化をいち早く察知でき、マーケティング戦略の修正にも生かせます。
データドリブンアプローチにより、企業は消費者の潜在的なニーズを把握し、的確なサービス提供や商品開発につなげることができるのです。
データドリブンの使い方と5つの手順

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データドリブンは、やみくもに着手しても効果が得られにくい手法です。成果を上げるには、ステップを踏んで徐々に「正解」へと近づいていくのが有効といえます。データドリブンの手順を5ステップに分けて解説します。
まずは目的を設定
データドリブンを実践するための第一歩は、明確な目的設定です。「なぜデータを活用するのか」という問いの答えをつまびらかにすることから始めましょう。売上増加や顧客満足度向上など、具体的な目標を定めることが重要です。目的が明確になれば、必要なデータの種類や分析方法が見えてきます。
ただし、この際に注意したいのが、漠然とした目標設定は避けること。「業績を上げたい」ではなく、「3カ月以内に新規顧客を20%増やす」といった具体的な数値目標を立てるのがポイントです。これによって、後のステップでのデータ収集や分析がより的確に行えます。
データを収集する
2つ目のステップであるデータ収集は、目的に沿って適切に行うことが重要です。顧客満足度向上が目的の場合、アンケート結果やカスタマーサポートの対応記録などを集めるのが有効でしょう。
収集する際は、データの質と量のバランスに注意してください。大量のデータがあっても、不正確だったり偏りがあったりすれば意味がありません。本来よりどころとなるべきデータに信頼性が不足していれば、正確な意思決定が難しくなります。
効率的なデータ収集には、自動化ツールの活用も有効です。たとえば、インターネット上に公開されているAPI(Application Programming Interface)と自社で使っているツールを連携すれば、データ収集の手間を大幅に削減することができます。
データを可視化する
続いて、データの可視化を行いましょう。収集したデータを理解しやすい形で表現する、大事なステップです。グラフや図表を使用することで、複雑なデータもすぐ把握できるようになります。
一例として、売上データを折れ線グラフで表すと、時系列での変化が明確になります。また、顧客属性を円グラフで示せば、各セグメントの割合も一目瞭然です。
とはいえ、これらの作業をすべて人力で行おうとすると無駄な手間と時間がかかってしまうので、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールに代表される支援ツールを使うのが一般的です。ツールの活用によって、専門知識がなくても効果的な可視化ができます。
データを分析、結果を基に仮説を構築
可視化が完了したら、さらにデータを分析し、結果を基に仮説を構築していきます。統計的手法やAIを活用して、深い洞察を得ることが重要です。たとえば、回帰分析で売上と広告費の関係を明らかにしたり、機械学習で顧客の離脱リスクを予測したりします。これらの分析結果から、「広告費を10%増やせば売上が5%上がる」といったような仮説が生まれるのです。
データを分析する際に注意すべきは、データに潜む因果関係と相関関係を区別することです。単なる相関を因果と勘違いしないよう、複数の角度から検証することが大切といえます。
仮説から施策を決定・実行する
データドリブン最後のステップは、構築した仮説から具体的な施策を決定し、実行することです。もし、「20代女性向けの商品をSNSで宣伝すれば売上が伸びる」という仮説が構築された場合は、実際にInstagramでキャンペーンを展開するなど具体的なアクションを起こしていきます。
施策の実行後は、得られたデータを再び分析してPDCAサイクルを回すことで、継続的な改善につなげていきます。このプロセスの繰り返しによってデータドリブンの効果が最大化され、ビジネスの成長へとつながるのです。
データドリブンのメリット・デメリット

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これからの経営には欠かすことのできない手法である「データドリブン」にも、メリットとデメリットがあります。長所と短所の両面を知り、データドリブンへの理解を深めましょう。
【メリット】スムーズな意思決定
データドリブンのメリットは、スムーズな意思決定が可能になることです。具体的な数値や事実に基づいて判断するため、感覚や経験のみに頼る場合と比べて、より客観的で説得力のある決定ができます。
また、データを活用することで、社内での合意形成もスムーズになります。「なぜその決定をしたのか」という根拠を、誰もが理解できる形で示せるからです。結果として、組織全体の動きが俊敏になり、競争力の向上にもつながります。データドリブンは、ビジネスの意思決定プロセスを変革する力を持っているのです。
【デメリット】初期投資が必要
一方で、初期投資が必要というデメリットもあります。効果的なデータ活用には、適切なシステムやツールが欠かせません。当然、それらの導入には相応のコストがかかります。
また、データ分析のスキルを持つ人材の確保や育成も必要です。中小企業にとっては、データドリブンを始める前の初期投資が大きな負担となる可能性があります。
さらに、データ保護やセキュリティ対策にも費用がかかります。個人情報保護法の観点からも適切なデータ管理が不可欠なため、コストカットは難しいと考えられるでしょう。
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