スコープとは?
スコープとは、英語の「scope」がもとになったビジネス用語です。ビジネスシーンでの意味や、活用するメリットを紹介します。
「範囲」や「領域」などを意味する言葉
まずは、「scope」の意味を辞書で確認しておきましょう。
スコープ【scope】
1. 能力・理解などの及ぶ範囲。視野。
2. 教育課程を編成する際に、学習内容を選択する基準となる領域または範囲。
3. 銃器の照準器。
4. 多く複合語の形で用い、それを見る器械という意を表す。「ファイバー—」「シネマ—」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
4つの意味がありますが、本記事にて解説するビジネス用語のスコープは「範囲」や「領域」の意。プロジェクトやタスクの境界線を明確にし、何をやらなければならないか、何を除外するかを定義します。
たとえば、新商品開発プロジェクトのスコープに含まれるのは、商品の企画やターゲットの策定、開発に必要なものの調達などです。
スコープを適切に設定すれば、プロジェクトの目標や成果物が明確になり、関係者間での認識の食い違いを防げます。また、リソースの効率的な配分に役立つため、進捗管理の基準としても有用です。
スコープを定義するメリット
スコープの定義がうまく機能すると、以下のようなメリットがあります。
・プロジェクトの成功率が上がる
・プロジェクトの質が向上し、成果物の価値が高まる
・予算や時間の無駄を削減でき、コスト管理が簡単になる
・クライアントや利害関係者との期待値のギャップを埋め、満足度を高められる
明確なスコープ設定によってチームメンバー全員が目標を共有すれば、効率的に作業が進みます。プロジェクトの進行中に生じる変更要求を、適切に評価して対応するための基準にもなるので、変更管理においてもメリットがある方法です。
ビジネスで役立つスコープマネジメント
スコープマネジメントとは、プロジェクトの範囲を明確にして効率的に管理する手法です。スコープマネジメントを行う際に必要な、2種類のスコープを紹介します。
プロダクトスコープ
プロダクトスコープは、製品やサービスの具体的な特徴や機能を定義するものです。たとえば、新しいスマートフォンアプリの開発では、搭載する機能や対応OSなどを明確にします。
プロダクトスコープによって開発チームの目標を詳らかにすることで、無駄な作業を減らせるのです。顧客の期待と実際の成果物のギャップを防ぐという効果もあります。
プロダクトスコープを適切に設定できれば、プロジェクトの成功率が高まり品質向上にもつながります。ただし、市場の変化や新技術の登場に応じて、柔軟に見直す姿勢も重要です。
プロジェクトスコープ
プロジェクトスコープとは、プロジェクト全体の範囲を定義するものです。具体的には、プロジェクトの目標・作業内容・期間などを明確にします。
たとえば新商品開発プロジェクトでは、市場調査や販売戦略の策定まで作業に含めるかどうかを決定します。
また、スコープの変更管理も重要です。プロジェクト進行中に顧客の要望が変わる場合もありますが、その都度スコープを見直し影響を評価することで、プロジェクトの成功率を上げられるのです。ただし、度重なる変更によりスコープが拡大してしまう「スコープクリープ」には注意が必要です。
ビジネスでのスコープの定義方法
ビジネスシーンでスコープを定義する際は、ゴールの設定やスコープの可視化が必要です。プロジェクトスコープを成功させるためのポイントを紹介します。
明確なゴールを設定する
スコープを効果的に管理するには、詳細決定前の明確なゴール設定が欠かせません。プロジェクトの目的や達成したい成果を具体的に定義し、チーム全体で共有することが重要です。
一例ですが「売上を増やす」という漠然としたゴールではなく、「6カ月以内に新規顧客を20%増加させる」といった目標を設定します。
このようにチームメンバーの方向性を統一すれば、無駄な作業を減らせます。また、ゴールを数値化することで、進捗の測定や成果の評価がしやすくなる点も押さえておきたいポイントです。明確なゴール設定はプロジェクトの成功率を高め、リソースの効率的活用にもつながります。
スコープを可視化する
プロジェクトを成功させるには、スコープの可視化も重要となります。可視化の手法として、「WBS(Work Breakdown Structure)」や「ガントチャート」が効果的でおすすめです。
WBSはプロジェクトの目標を階層的に分解し、全体像を把握しやすくします。一方、ガントチャートはタスクの順序や期間を視覚的に表現するため、進捗管理に役立ちます。
これらのツールを活用することで、チームメンバー全員がプロジェクトの範囲と進行状況を共有できるようになるのです。さらに、利害関係者らとのコミュニケーションを円滑にし、期待値のずれを防ぐ効果も期待できます。
スコープの関連用語
スコープを活用する際に、「スコープコントロール」や「スコープクリープ」が問題になるケースがあります。関連用語の意味を理解し、適切な対処をすることが大切です。スコープと合わせて使われることが多い主な用語を紹介します。
スコープコントロール
スコープコントロールとは、プロジェクトの範囲を適切に管理し、変更を制御するプロセスです。プロジェクト管理用語として多く使用されます。
プロジェクトの進行中に、予期せぬ要求や変更が発生することは珍しくありません。これらの変更が目標や成果物に与える影響を評価し、必要に応じて調整を行うのがスコープコントロールの役割です。
具体的には、変更要求の分析や影響評価などが含まれます。たとえば、新機能の追加要求があった場合、それがプロジェクトの納期やコストにどう影響するかを検討します。
承認された変更はプロジェクト計画に反映され、関係者に共有されます。スコープコントロールを適切に行うことで目標達成を確実にし、無駄な作業や予算超過を防げるのです。
スコープクリープ
スコープクリープとは、プロジェクトの範囲が徐々に拡大し、当初の計画を超えてしまう現象です。主に顧客の要求変更や、新たなアイデアの追加などによって引き起こされます。
Webサイト制作プロジェクトなどで、途中から「SNSやアプリとの連携機能も追加したい」といった要望が出てくるケースは珍しくありません。しかし、変更管理がうまくいかずスコープクリープが発生すると、納期の遅れやコスト超過・品質低下などの問題を引き起こす可能性があります。
これらを防ぐには、変更管理プロセスの徹底やスコープの明確な定義と共有が重要です。顧客との密なコミュニケーションを通じて、要求の変更がプロジェクトに与える影響を説明し、早い段階で理解を得ることも必要とされます。
プロジェクトスコープ記述書
プロジェクトスコープ記述書は、プロジェクトの範囲を明確に定義し、文書化したものです。プロジェクト目的・成果物・作業内容・制約条件などを詳細に記載します。
このような文書を作成する目的は、チームメンバーや利害関係者間で共通の理解を得て、誤解や認識のずれを防ぐことにあります。さらに、プロジェクトスコープ記述書は変更管理の基準点としても機能し、スコープクリープを防ぐ役割も果たします。
スコープ検証
スコープ検証とは、顧客や利害関係者に、プロジェクトの成果物が要求事項を満たしているか確認してもらうプロセスを指します。成果物の品質・機能・性能などを綿密にチェックし、スコープ記述書や要件定義書との整合性を確認します。
たとえば、ソフトウェア開発プロジェクトでは、「各機能が仕様通りに動作するか」「ユーザビリティは適切か」などを検証します。この過程で問題が見つかれば、修正や調整をします。
プロジェクトの品質向上と顧客満足度の確保には、スコープ検証が不可欠です。適切なスコープ検証により、最終段階での大幅な変更や手戻りを防ぎ、効率的なプロジェクト管理の実現も可能となります。
メイン・アイキャッチ画像/(c)Adobe Stock
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