「来るもの拒まず去るもの追わず」の意味とは?
「来るもの拒まず去るもの追わず」とは、どんな意味を持つ言葉なのでしょうか。まずは言葉の意味と、その由来について説明します。
相手の考えを尊重するスタンスを意味する
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、正確には「去る者は追わず来る者は拒まず」といい、「離れていく相手を引き止めたりはせず、やって来る相手は誰であれ受け入れる」という意味のことわざです。
主に、人間関係における考え方を表した言葉といえます。
相手を選ばず付き合うというニュアンスも含まれているため、基本的には誰とでも分け隔てなく接するというスタンスです。自分より相手の思いを尊重する考え方ともいえるでしょう。
中国の「孟子」が由来の故事成語
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、中国の思想家・孟子の逸話を集めた「孟子」に登場する言葉です。ここでは「往(さ)る者は追わず、来たる者は拒まず」と表現されました。
孟子には多くの弟子がいましたが、相手の気持ちが離れたら無理に引き止めはしないと宣言したのです。師匠として弟子に向き合う際の、価値観を示した言葉ともいえるでしょう。
また、北宋時代の文人・蘇軾(そしょく)の文章が由来という説もあります。いずれも、「自分を信じる者なら、どんな者でも受け入れる」という意思を表しています。
「来るもの拒まず去るもの追わず」の使い方
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、人の性格に対する褒め言葉として使われます。使える場面や、例文を見ていきましょう。
人の性格やスタンスを表す言葉
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、人の考え方を表す言葉です。相手を選ばず受け入れる点で「懐が大きい」という意味合いを持っているため、褒め言葉としても使われます。
ただし、「来るもの拒まず」だけでなく、「去るもの追わず」の意味にも注意が必要です。場合によっては、「人に執着しないドライな性格」という意味で使われることもあります。
そのため、褒めたつもりでも、皮肉と取られてしまう可能性もあるかもしれません。誤解を避けたいときは、「来るもの拒まずな性格」と使うようにしてもよいでしょう。
「来るもの拒まず去るもの追わず」の例文
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、それぞれ「来るもの拒まず」「去るもの追わず」に分けて使われることもあります。
真逆の意味を持つ言葉を組み合わせた慣用句なので、片方だけで使用することも可能です。
●「来るもの拒まず去るもの追わず」の社風だから、転職する人も多い
●彼女は「去るもの追わず」なので、彼氏と別れても元気にしている
「来るもの拒まず去るもの追わず」な人の心理
「来るもの拒まず去るもの追わず」と言われやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか?人との付き合い方から分かる心理を解説します。
周囲の人と一定の距離を保ちたい
「来るもの拒まず去るもの追わず」な人は、「サバサバした性格だ」と言われる傾向にあります。周囲の人となれ合うのではなく、親しくなってもある程度の距離を置きたがるためです。
特定の人と深く付き合うというよりは、広く浅い人付き合いをする特徴も見られます。中には、プライベートな話題には踏み込まないようにしている人もいるかもしれません。
誰かに依存したりせず、互いに自立した関係を好む人が多いともいえるでしょう。そのため、誰かと疎遠になってもさほどショックを受けないようです。
しっかり「自分」を持っている
自分の意見を持っているのも、「来るもの拒まず去るもの追わず」な人の特徴です。人の考えに左右されにくいため、相手に合わせて自分を曲げることはほとんどありません。
自分の中に譲れないものがあるので、合わないと感じた人とは付き合わない「去るもの追わず」な面があります。自己主張をしっかりすることから、「頑固な性格だ」と言われることもあるでしょう。
こうした「来るもの拒まず去るもの追わず」なスタンスの人は、1人で行動するのが苦になりません。そのため、自分から誰かに近付くことも少ないと考えられます。
「来るもの拒まず去るもの追わず」の類義語
「来るもの拒まず去るもの追わず」は、基本的によい意味で使われる言葉です。言い換えに使える類義語をチェックしましょう。
「清濁併せ呑む」
「清濁併せ呑む」とは、「善悪に関係なくあらゆるものを受け入れること」を表す言葉です。由来は諸説ありますが、一説では「清らかな流れも濁った流れも等しく飲み込む、広い海」からきているとされています。
「分け隔てなく受け入れる」という点で、「来るもの拒まず」と似た意味を持つ言葉です。物事をありのまま受け入れる器の大きさをたたえる表現であり、人格者に対して使われます。
●時には「清濁併せ呑む」考えも大切になる
●上司は「清濁併せ呑む」人物だ
主に誰かに対して使う言葉であり、自分に対して使う表現としてはあまり適していません。
「寛仁大度」
「寛仁大度(かんじんたいど)」は、「心が広く、慈悲深いこと」を表す四字熟語です。器の大きさを表す「寛大」という表現は、「寛仁大度」を略したものともいわれています。
「寛仁」は「慈悲の深さ」を、「大度」は「度量の大きさ」をそれぞれ表す言葉です。スケールが大きく、小さなことにこだわらない人への褒め言葉として使用できます。「来るもの拒まず」と同様、ポジティブな意味合いを持つ表現です。
●友人の「寛仁大度」な振る舞いに感動する
●誰に対しても「寛仁大度」な性格でいたい