「備えあれば憂いなし」の意味と由来
「備えあれば憂いなし」はさまざまな場面で用いられる慣用句で、読み方は「そなえあればうれいなし」です。「前もって準備しておけば、何か起こったとしても心配ない」という意味があります。
言葉の由来とされるのは、古代中国で書かれた2つの書物です。なお、場合によっては「備えあれば患いなし」と表記されることもあります。正しい意味や由来、「憂」と「患」の使い分けについて確認していきましょう。
「準備していれば心配ないこと」を表す
まずは、「備えあれば憂いなし」の辞書で引いてみましょう。
【備えあれば患いなし:そなえあればうれいなし】
万一に備えて、あらかじめ準備をしておけば、事が起こっても少しも心配事がない。備えあれば憂えなし。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「備えあれば憂いなし」は、もしものことを想定してあらかじめ準備しておけば、何か起こったとしても心配ないという意味です。「備え」は準備を、「憂い」は憂鬱さや思い通りにいかなくて辛い状態を指します。2つの言葉を組み合わせ、「備え」(=準備)があれば「憂い」(=憂鬱さ)が生じないことを表しています。
主に、「万一のことが起きても対応できるように備えておくことが大切」という教訓として用いられることが多いです。
中国の書物に由来する
「備えあれば憂いなし」の由来は、古代中国・殷国の宰相・傳説(ふえつ)の言葉とされています。『書経(しょきょう)』には「有備無憂」という一節が登場し、書き下すと「備え有れば憂い無し(=備えていれば憂いはない)」となり、ここから慣用句として成立したとされています。
また『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』では「有備無患」とあり、こちらも書き下すと「備え有れば患い無し(=備えておけば患いはございません)」となることから、のちに慣用句として広まったといわれています。なお、患いと憂いは同義語であるため、意味に違いはありません。
「備えあれば患いなし」と書くことも
「備えあれば憂いなし」の「憂」が「患」に変わり、「備えあれば患いなし」と表記されることもあります。「憂い」と「患い」はどちらも「うれい」と読み、思い悩む状態を表します。両者は同じ意味をもつため、準備をしておけば心配がないと伝える際はどちらの漢字を使っても構いません。
「備えあれば憂いなし」が使える場面&例文
「備えあれば憂いなし」は、さまざまな場面で使えることわざです。例えば、部下に注意を促したり、事前の準備によって助かったことを伝えたりする場面が挙げられます。
ビジネスシーンはもちろん日常会話でも使えるため、正しい使い方を覚えておくといいでしょう。ここでは、「備えあれば憂いなし」が使える場面や例文について解説します。
「備えあれば憂いなし」が使える場面
「備えあれば憂いなし」は、事故や災害などに対する注意を呼びかけるために用いられます。保険商品のキャッチコピーなどを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
ビジネスシーンでは、部下を戒めるような場面で使われます。例えば、トラブルを想定して準備しておくように促したい場合などが挙げられます。戒めるという意味合い以外では、「準備をしていて助かった」と安堵する気持ちを表す際に使うことも多いです。
そのほか、自社の製品やサービスを売り込む際に、説得力を高める言葉として「備えあれば憂いなし」を使うこともあります。