「仕方がない」の使い方
さまざまな意味をもつ「仕方がない」は、幅広いシーンで活用できます。具体的な使い方を使用例とともにみていきましょう。
どうしようもないことを伝えるとき
- どれだけ引き止めても本人の意志が変わらないのであれば、退職も仕方がない。
- これだけ頑張ったのに結果が出ないのであれば、そのときはもう諦めるしか仕方がない。
困っていること、よくない状況を伝えるとき
- 遅刻厳禁とあれほど伝えたのに、それでも時間を守れないとは仕方がないやつだ。
我慢できない、たまらないという気持ちを伝えるとき
- 昇進したことを、家族に早く伝えたくて仕方がない。
- これまでの努力が認められたことが、うれしくて仕方がない。
「致し方ない」の類語や言い換え表現

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「致し方ない」には、以下のような類語や言い換え表現があります。それぞれ「どうにもならない」という状況を表す言葉です。ここでは、「致し方ない」とのニュアンスの違いや正しい意味をご紹介します。
「せん方ない」
「せん方ない」(せんかたない)は、「致し方ない」のように成すべき方法がなく、どうにもならないことを表します。目の前のトラブルに対し解決策が見出せず、あきらめるという状況に適した言葉です。
「致し方ない」との違いは、「やりきれずたまらなく悲しい」という意味が含まれることです。日常生活では耳慣れない言葉ですが、複数の意味が含まれることを理解しておきましょう。
- やるべきことはやったのだから、いくら悔やんでもせん方ない。
せんかた‐な・い【▽為ん方無い/詮方無い】
[形][文]せんかたな・し[ク]
1 なすべき方法が見つからない。どうしようもない。「―・くあきらめる」「悔やんでも―・いことだ」
2 やりきれない。また、たまらなく悲しい。
「御ありさま見奉るに、あまりに―・うこそ候へ」〈平家・灌頂〉
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「余儀ない」
「余儀(よぎ)」には、「他に取るべき方法」や「別の意見」という意味があります。それらがないことを表す「余儀ない」は、「致し方ない」のように、どうにもならずしょうがない状況を表す言葉です。
実際の会話では以下のように、「余儀なくされる」のかたちで用いることもあります。
- 思わぬシステムトラブルが生じ、残業を余儀なくされた。
よぎ‐な・い【余儀無い】
[形][文]よぎな・し[ク]
1 他になすべき方法がない。やむをえない。「辞任を―・くされる」「―・い事情で参加を見合わせる」
2 異議がない。
「申し上ぐるところの辞儀じんぎ、―・し」〈曽我・二〉
3 隔て心がない。
「互ひに―・く見えければ」〈浄・二つ腹帯〉
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「よんどころない」
「よんどころ」とは、漢字で「拠所」と書き、頼みとする所や支えになる所のことです。それらがないことを表す「よんどころない」は、手立てがないのだから仕方がない、ということを意味します。
- 彼女は、よんどころがない事情で会議を欠席した。
よんどころ‐な・い【▽拠所無い/▽拠無い】
[形][文]よんどころな・し[ク]そうするよりしかたがない。やむをえない。「―・い事情があって欠席する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「しょうがない」
「しょうがない」は、他にうまい方法がないことを表します。漢字では「仕様がない」(しようがない)と書きますが、「しょうがない」と発音するのが一般的です。
また、「しょうがない」は「仕方がない」のように「よくない状況」に対して用いられます。
- 電車の遅延なら遅刻もしょうがない。
- 何度言っても態度を改めないとは、しょうがないやつだ。
仕様しようがな・い
1 うまい方法がない。「自分でするより―・い」
2 始末におえない。「―・い怠け者だ」
[補説]現在では多く「しょうがない」と発音される。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「やむを得ない」
「やむを得ない」も「致し方ない」と同様に、避けられない困難な状況を表します。「やむ」は漢字で「止む」と書き、物事が終わることです。「やむを得ない」とすることで、他に手立てがなく、終わりを迎えても仕方がないことを言い表せます。
- 個人的な事情は、遅刻のやむを得ない理由には認められない。
止やむを得え◦ない
そうするよりほかに方法がない。しかたがない。「撤退も―◦ない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「致し方ない」はビジネスシーンに適した言葉

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「仕方がない」ことを丁寧に伝える「致し方ない」は、ビジネスシーンに適した言葉です。
より改まった表現にしたいときは「致し方ないと存じます」を使ってみてください。目上の人にも「解決したいがどうにもならない」という状況を、失礼なく伝えられます。
また、「致し方ない」には、さまざまな類語や言い換え表現があります。「しょうがない」や「やむを得ない」など、相手との関係性や状況を考慮しながら、それぞれの使用を検討してみましょう。
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