「幸いです」の正しい意味と使い方

まずは、「幸いです」の正しい意味と使い方を押さえておきましょう。また、「話し言葉で使ってもよい言葉か」「目上の相手に使うのは失礼かどうか」といった注意点も紹介します。
「幸いです」の基本的な意味
「~であれば幸いです」といった表現は、依頼や希望を伝える際にビジネスシーンでよく使われる言い回しです。
「幸い」とは「その人にとって望ましく、ありがたいこと。あるいはその様子」を指し、「運がよい」「都合がよい」という意味もあります。
つまり、「~であれば幸いです」をストレートにいえば「~してもらえるとうれしいです」となります。「幸いです」と表現するのは、オブラートに包むことで丁寧な印象にするためです。
さい‐わい〔‐はひ〕【幸い】
《「さきわ(幸)い」の音変化》
[名・形動]
1 その人にとって望ましく、ありがたいこと。また、そのさま。しあわせ。幸福。「不幸中の幸い」「君たちの未来に幸いあれと祈る」「御笑納いただければ幸いです」
2 運のいいさま。また、都合のいいさま。「幸いなことに明日は休みだ」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
目上の人には失礼な場合もある
「幸いです」を目上の人に使うのは、失礼な場合もあります。丁寧な印象があるものの、正確には謙譲語や尊敬語ではないからです。
もちろん実際は、目上の相手や顧客に対して「幸いです」を使っているケースをよく見かけます。相手が気にしなければ問題ありませんが、中には違和感を持つ人もいるでしょう。
親しい上司は別として、目上の人や取引先には「幸いに存じます」「幸いでございます」のほうが適切です。
話し言葉ではなく書き言葉
「幸いです」は、通常メールや手紙の文面で使います。書き言葉での依頼は堅苦しい印象になりやすいので、それを和らげる言葉として効果を発揮するのです。
話し言葉の場合は、目上の人に対しても「お願いいたします」などとストレートに依頼するのが一般的ですね。ただし例外として、手土産を渡すときのあいさつや、留守番電話への伝言、改まった場でのスピーチでは「幸いです」を使うこともあります。
基本的には文章で使う言葉だと認識しつつ、話し言葉としてややかしこまったシーンで使われることも覚えておきましょう。
時間に余裕があるときなどに使う
「してもらえるとうれしい」とやんわり頼む言い方なので、「幸いです」は依頼を受けるかどうかは相手の判断次第という意味合いを含んでいます。
そのため、絶対に断られたくないときや緊急性の高い案件のときは避けたほうがよい表現です。もし急ぎのケースでも使いたければ、期限を提示することをおすすめします。
「大変恐縮ですが、来週の火曜日までにご回答いただけると幸いに存じます」といった言い回しにすれば、やわらかい言い方をキープしながら、急ぎの案件であることを示せるでしょう。
目上の人には「幸いです」を丁寧に言い換える

「幸いです」は尊敬語や謙譲語ではないため、目上の人に使う場合やフォーマルな場面ではより適切に言い換える必要があるかもしれません。相手や場面に合わせて、丁寧に言い換える表現を説明します。
うれしく存じます・ありがたく存じます
「幸いです」をよりフォーマルに言い換えると、「うれしく存じます」「ありがたく存じます」となります。
丁寧語である「幸いです」を、「思う」「考える」の謙譲語である「存ずる」に変えて敬意を強めた表現です。
【例文】
・皆様にお集まりいただき、この日を迎えられましたことをうれしく存じます
・この度のプロジェクトにご協力いただけるとのこと、大変ありがたく存じます
「うれしく存じます」「ありがたく存じます」は強い敬意を表した言葉であり、目上の相手にお礼を言うときなどに適しています。なお、「存ずる」は謙譲語であるため、同僚や部下には使いません。
幸甚です
「幸いです」の丁寧な言い換えとして「幸甚(こうじん)です」という表現もあります。幸甚は、「この上もない幸せ」という意味の強調表現で、甚は「はなはだしい」「程度が非常に高い」という意味の漢字です。
【例文】
・お忙しいところ恐縮ですが、ご返信いただければ幸甚です
・お送りしました試供品について、購入をご検討いただければ幸甚です
「していただければ幸甚です」といった形で、相手への感謝や依頼を表現できます。かなりかしこまった言い方なので、使う相手やシーンは選びましょう。
同僚には「幸いです」を軽めに言い換える

「幸いです」は基本的に書き言葉なので、硬い印象をもたらします。同僚や目下の人に対しては、あまり距離を感じさせないよう軽めに言い換えるのが適切です。
お願いいたします
「幸いです」が自分の心情をやわらかく伝える表現であるのに対し、「お願いいたします」は、相手に協力を求める意志をストレートに伝える表現です。たとえば、以下のような使い方が可能です。
【例文】
・本件につきまして、ご対応をお願いいたします
・今後の進め方について、ご指導をお願いいたします
・お手数をお掛けしますが、ご確認をお願いいたします
目上の人から目下の人まで、相手を選ばずに幅広く伝えるならこちらがおすすめ。緊急の案件など、自分の意思をはっきり伝えたいときにも使える言い回しです。
助かります
「助かります」は「幸いです」と同様に、負担が軽くなってありがたいという話し手の心情を表す言葉です。
だいぶフランクな言い方なので、使える相手は同等の立場であるか、または目下の人に限られます。目上や取引先の人に使わないよう注意しましょう。
【例文】
・この資料をコピーしてもらえると助かります
・詳細な情報を教えていただけると助かります
・事前にご連絡いただけると助かります
やわらかな印象を与えるため、同僚・部下に感謝や依頼を伝える場面で重宝する言葉です。
「幸いです」と表現するシチュエーション

「幸いです」には大きく分けて2つの使い方があります。相手に協力を求めるときと、自分が仕事を引き受けるときです。それぞれの使い方を詳しく見ていきましょう。
相手に協力を求めるとき
「幸いです」は、誰かに依頼したり協力や理解を求めるといったシチュエーションで使えます。たとえば次のような言い方が考えらるでしょう。
【例文】
・先日お渡しした資料について、ご確認いただけると幸いです
・明日の木曜日には会議がありますので、ご参加いただけますと幸いです
「していただけると幸いです」に比べると「していただけますと幸いです」のほうが、敬意が高くなります。「幸いです」以外の言葉を調整することで、相手や場面に合わせた丁寧さを表現できますよ。
自分が仕事を引き受けるとき
「幸いです」のもう一つの使い方は「役に立てたらうれしい」という意味合いで、自分が依頼や仕事を引き受けるときに使います。
【例文】
・何か困ったことがありましたらお手伝いさせていただければ幸いです
・ご推挙いただきありがとうございます。微力ながらご期待に添えれば幸いです
「お役に立てれば幸いです」「お手伝いさせていただければ幸いです」「ご期待に添えれば幸いです」という表現が定番です。押しつけがましくない形で、相手に協力の意思を示せます。
まとめ
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「幸いです」は、誰かに依頼したり協力や理解を求めたりするときに使う
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自分が依頼や仕事を引き受けるときにも使える
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「幸いです」は丁寧語であって、謙譲語や尊敬語ではないため目上の人に使う場合には注意が必要
「幸いです」は相手に対する敬意や尊重を伝えつつ、依頼したり協力を求めたりできる便利な言葉です。しかし、謙譲語・尊敬語ではないといった側面も持つため、正しい意味や使い方・使用上の注意点をしっかり押さえておきましょう。関係性や場面に合わせた言い換え表現も理解すれば、活用範囲も広がります。
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Domani編集部
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