Summary
- 「紅葉狩り」とは紅葉を楽しみに出かけることを指す言葉
- 「狩り」は観賞行為も含み、古語の名残として残っている
- 古典文学や能楽など文化に深く根付いた表現として定着
「紅葉狩り(もみじがり)」という言葉、秋になるとよく耳にするけれど「『狩り』ってどういう意味?」と戸惑ったことはありませんか?
この記事では、紅葉狩りの正しい意味と語源を確認し、会話やメール、子どもへの説明にも役立つ伝え方の工夫まで、秋をもっと楽しむための視点を紹介します。
「紅葉狩り」の意味とは?|なぜ「狩り」という言葉を使うのか
「紅葉を見る」という行為が、なぜ「狩り」と呼ばれるのでしょうか? ここでは、「紅葉狩り」の意味を確認していきます。
「紅葉狩り」の基本的な意味
「紅葉狩り」とは、紅葉した木々を見に出かけることを意味します。辞書では次のように説明されていますよ。
もみじ‐がり〔もみぢ‐〕【紅‐葉狩(り)】
山野に紅葉をたずねて楽しむこと。観楓(かんぷう)。紅葉見。《季 秋》「大嶺に歩み迫りぬ―/久女」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)

なぜ「狩り」なのか?
紅葉を手に入れるわけでもなく、刈り取るわけでもないのに、なぜ「狩り」という表現が使われるのかと不思議に感じる人も多いでしょう。
『全文全訳古語辞典』(小学館)によると、「狩り」という言葉は、古来から動物を捕らえる行為だけを指していたわけではありません。花、木、蛍などを観賞することも古くから「狩り」と呼んでいたのです。その名残が、今日の「紅葉狩り」や「桜狩り」という言葉に残っています。
ちなみに「紅葉狩り」に関する記述は、『万葉集』にも残されており、宮廷や貴族の優雅な遊びであったことが記録されています。庶民の間に広がったのは、江戸時代以降のことだそうですよ。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
「紅葉狩り」とは、紅葉を観賞すること。
文化に根ざす「紅葉狩り」|季語・古典・能から見る背景
紅葉狩りは行事や風習というだけでなく、日本文化に深く根差した言葉でもあります。ここでは、文学や芸能における「紅葉狩り」の役割や意味を、秋の情緒とともに感じ取っていきましょう。
俳句や和歌における「紅葉狩り」
「紅葉狩り」は秋の季語として定着しており、古来から多くの歌人や俳人に詠まれてきました。短い言葉の中に紅葉の色彩や冷ややかな空気感を込めることで、一瞬にして秋を呼び込む力を持っています。
例えば、与謝蕪村の一句に次のようなものがあります。
紅葉見や用意かしこき傘二本
天候の移ろいを見越して傘を準備するという日常的な所作を通じて、紅葉狩りの風景に現実味と温かみを与えています。シンプルながらも「二本」という言葉に人の気配や物語性を漂わせる点が蕪村らしい巧みさです。
参考:『日本の歳時記』(小学館)
能「紅葉狩」に込められた世界観
能の曲目「紅葉狩」は、観世信光(かんぜのぶみつ)による作で、現在も五流すべてに伝わる人気曲です。物語は次のように展開します。
鹿狩りに山へ入った平維茂(たいらのこれもち)が、紅葉狩りを楽しむ貴婦人たちと出会います。酒宴に誘われ、舞に酔いしれる維茂でしたが、実は彼女たちは戸隠山の鬼女。やがて夜嵐とともに正体を現し、維茂に襲いかかります。しかし、八幡神から授かった神剣により鬼を退治して物語は幕を閉じます。
この作品は、鬼女が美しい舞から一転して襲いかかる場面転換の妙や、緩急のある演出が見どころです。「鬼退治」の物語でありながら、華やかさと劇的効果を兼ね備え、観客を楽しませる要素に満ちています。
参考:『日本大百科全書』(小学館)

「紅葉狩り」の使い方|子どもへの説明方法と会話への取り入れ方を解説
奈良時代から存在する言葉でありながら、現在も使われる「紅葉狩り」。ここでは、現代の生活やコミュニケーションの中で自然に使える言い回しや、説明の工夫に焦点を当てて紹介します。
子どもに聞かれたとき、どう答える?
「紅葉って狩るの?」という問いかけは、大人でもうまく答えられないことがあります。こうした場面では、文化的背景をやさしくかみ砕いて伝えることが大切です。
「昔の『狩り』には、山に入って動物を獲るだけでなく、自然のものを見に行く意味もあったんだよ」と伝えることで、紅葉を見に行く行為もその一つだと納得してもらいやすくなります。
特に小学生くらいの子どもには、「見るだけなのになんで『狩る』の?」という疑問が生まれやすいため、言葉の変化を交えながら説明すると、自然と言葉への興味を引き出すことができるでしょう。

ビジネスメールや会話での使い方
「紅葉狩り」という言葉は、使い方次第で会話にも文章にもなじみます。仕事上の挨拶文やメールなどでは、「紅葉狩りにぴったりの季節になりましたね」といった一文を添えることで、季節感が表現できます。
また、会話のアイスブレークとして「紅葉狩りを楽しめる時期ですね」と言うと、秋らしい情緒が伝わり、その後の会話も弾むのではないでしょうか。やわらかな雰囲気づくりに役立つ言葉として、場面に応じて使ってみるのも一つの工夫ですね。
最後に
POINT
- 「紅葉狩り」は紅葉を観賞しに行くことを指す
- 「狩り」は動物だけでなく花や自然を見る意味も持つ
- 『万葉集』や能「紅葉狩」にも登場し文化的背景が深い
「紅葉狩り」という言葉には、日本人の自然観や文化的感性が息づいています。その背景を知ることで、ただの季節の言葉ではなく、思いを込めた表現として使えるようになるでしょう。言葉とともに、秋の時間をもっと味わってみてください。
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Domani編集部
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