「物は言いよう」とは？ 言い方ひとつで印象が変わる、ビジネスで生きる表現術

「物は言いよう」ということわざには、言葉の選び方ひとつで物事の印象や受け止められ方が大きく変わるという意味があります。ビジネスの現場においても、伝え方ひとつで空気が和らぐこともあれば、無用な摩擦を生むこともありますね。

本記事では、「物は言いよう」の意味や使い方だけでなく、職場での実践的な活用法まで丁寧に紹介します。

「物は言いよう」の意味と類語を確認

「言葉の選び方ひとつで印象が変わる」その本質に気づくきっかけが、このことわざには込められています。

「物は言いよう」とは？ 意味を確認

「物は言いよう」とは、同じ事実や内容であっても、どのように伝えるかによって相手の受け止め方が変わるという意味を持つことわざです。辞書では次のように説明されています。

物（もの）は言（い）いよう
同じことでも言い方によって、よくも悪くも印象が変わる。
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

例えば、進捗が遅れているプロジェクトについて「予定より遅れています」と伝えるのと、「改善を重ねながら進行中です」とでは、同じ事実を伝えているにも関わらず、受け取る側の印象が異なるでしょう。

伝え方を工夫することの重要性が、この表現には込められています。

類語や言い換え表現にはどんなものがある？

このことわざに近い意味を持つ表現には、「事は言いなし」や「丸い卵も切りようで四角」などが挙げられます。

「事は言いなし」は「物は言いよう」と同義です。

「丸い卵も切りようで四角」は、物事は扱い方によって円満にも角が立つことにもなるというたとえになります。

「物は言いよう」とは、同じことでも言い方によって、印象が変わることを指す。

実際にどう使う？ 「物は言いよう」の使い方と例文

実際の会話で自然に使うには工夫が必要です。具体的な活用例から学んでみましょう。

「プレゼンはうまくいかなかったけれど、いい経験になったと思えば、次に生かせる。まさに物は言いようだ」

「失敗した」と言えばネガティブですが、「いい経験」と表現することで前向きな印象に変わります。言葉の選び方で気持ちの整理や相手への伝わり方は、変わりますね。

「彼のやり方は少し強引だけど、積極的とも言える。物は言いようだな」

相手の行動をどう評価するかは表現次第です。否定的にも肯定的にも取れる言葉を、どちらの立場で語るかで印象が変わることを示しています。

「最近、仕事が少なくて暇だけど、時間に余裕があると考えれば悪くない。物は言いようだ」

「暇」という言葉には退屈や不安が伴いますが、「時間に余裕がある」と言えばポジティブに聞こえます。自己肯定感を高める表現にもつながる言い換えです。

同じ出来事でも言い方を変えると前向きに伝わる！

ビジネスシーンで生きる「物は言いよう」の活用術

上司や部下、取引先などとのやりとりでは、事実だけでなく言い方が大きく影響する場面があります。言葉選びの工夫で状況が和らぐこともあれば、意図せぬ誤解を避けられることもあるでしょう。そんな例を挙げていきましょう。

上司・部下間での適切な「物は言いよう」とは？

職場では、立場の違いによって発言の受け止め方が変わることがあります。部下に対して改善点を伝える際、「これでは不十分です」と伝えると、萎縮してしまうおそれがあります。代わりに「ここを少し工夫すると、もっとよくなりますよ」と伝えることで、相手の成長意欲に寄り添う形になるでしょう。

一方で、上司への報告時に課題を共有する場合。「問題があります」と断定せず、「確認したところ、改善の余地が見つかりました」といった表現を使うことで、前向きな姿勢が伝わるでしょう。言葉一つで、相手の受け取り方は大きく変わるのです。

トラブルを防ぐ！ 配慮ある伝え方の工夫

社内外でのクレーム対応や要望のやり取りでは、発言のトーンがその後の関係に影響を与える場合があります。感情的になりやすい場面では、「申し訳ありません」だけでは十分に伝わらないこともあるでしょう。

そうした場合は、まず「ご不便をおかけしていることを、重く受け止めております」などと一言添え、相手の立場に丁寧に寄り添う言葉を選ぶと、対話の糸口が見つかることがあります。

また、相手の要求にすぐには応えられない場合でも、「現時点では難しい状況でございますが、前向きに検討いたします」などと伝えることで、誠意を伝えることができます。言葉の工夫が、場面の緊張感を和らげる要素になり得ます。

「物言いがつく」ことを避ける表現

議論の場では、断定的な言い回しが相手の反発を招き、思わぬ異議を生むことがあります。特に意見が分かれやすい場面では、「必ず〜すべき」といった強い表現は避け、「〜が期待されます」「〜と考えられます」といった穏やかな語調を選ぶといいでしょう。

さらに、前置きとして「一つの考え方としてお聞きいただければ幸いです」と添えることで、対話を大切にする姿勢を示すことができます。

相手の気持ちや意図に少し気を配って言葉を選ぶだけで、不思議と自分の意見が通りやすくなることもあるものです。

最後に

「物は言いよう」ということわざは、言葉の持つ力と、伝え方の重要性を教えてくれます。ビジネスの現場で円滑な人間関係を築くためには、内容だけでなく言葉選びにも意識を向けることが肝要です。表現の工夫が信頼と評価を高める一歩になります。

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