「とりつく島もない」の意味と誤用例｜使い方や言い換え表現もチェック

会話が噛み合わないときや、相手がとてもよそよそしく感じられる場面で、「とりつく島もない」という言い回しがぴったり当てはまることがあります。しかし、「とりつく島もない」の意味や由来、使い方まできちんと理解している人は意外と少ないかもしれません。

そこで、この記事では「とりつく島もない」という言葉の正しい意味や背景、使い方や類語について丁寧に見ていきます。

「とりつく島もない」はどんな意味を持つ？

まずは、意味から確認していきましょう。

「とりつく島もない」の意味と比喩の背景

「とりつく島もない」は、「頼りにしてすがるところがない」「取り付き所がない」という意味で用いられます。多くの場合、否定形で使われるのが特徴です。

「とりつく島」の意味は、辞書で次のように説明されていますよ。

取（と）り付（つ）く島（しま）
頼りとしてすがるところ。取り付き所。多く、あとに打消しの表現を伴って用いる。「つっけんどんで―もない」
［補説］文化庁が発表した平成24年度「国語に関する世論調査」では、本来の言い方とされる「取り付く島がない」を使う人が47.8パーセント、本来の言い方ではない「取り付く暇（ひま）がない」を使う人が41.6パーセントという結果が出ている。
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

誤りに注意

「とりつく島もない」は漢字で表記すると、「取り付く島もない」となります。「取り憑く島」や「取り付く暇もない」は誤りです。混同されがちですので、注意しましょう。

文化庁の平成24年度「国語に関する世論調査」でも、「とりつく島がない」という本来の言い方を知っている人は半数以下にとどまり、「取り付く暇がない」を使う人も4割を超えていました。

「島」には、「手がかり」や「助けとなる物事」という意味があります。このことを理解しておくと、誤用を避ける手がかりとなりますよ。

参考：『デジタル大辞泉』（小学館）

「とりつく島もない」の使い方を例文でチェック！

ここでは、「とりつく島もない」の使い方を具体的な例文とともに確認していきます。

職場や日常での自然な使いどころ

会議中に意見を求めても「その件は今はいいです」と突き放されたように言われた場面や、メールで何のコメントもなく資料だけが返ってくるようなやりとりは、「とりつく島もない対応だった」と表現できます。

ビジネスの場では、提案が一蹴され、質問も許されないような空気を指す際に使われることが多く、感情のやりとりが遮断された印象を伴います。

日常では、会話を試みても素っ気なく返されたり、そもそも返事すらもらえないような状況を表すこともできるでしょう。相手がどこにも心を開いてくれない状態を端的に示します。

「会議で打開策を提案したが、上司に一蹴され、とりつく島もない状態だった」

意見を聞いてもらう余地すらなく、完全に否定されたときに用いられます。

「仲直りしようと話しかけても、彼女は黙り込むばかりでとりつく島もなかった」

会話や関係修復のきっかけを探しても、相手が応じない状況を表します。人間関係の冷え込みを表現するときに使えますよ。

「とりつく島もない」の類語や言い換え表現は？

「とりつく島もない」と同じような意味を持つ表現を知っておくと、状況に合わせて言葉を使い分けられ、表現の幅が自然に広がります。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

けんもほろろ

頼みごとやお願いを、つっけんどんに断って取り合わない様子を表します。口語で使われますよ。