Summary
- 「おせち」は「節供(せちく)」という言葉を略した表現。
- 「おせち」はもともと節日や物日の儀式的な食物のことを指していた。
- 重箱に詰めるのは、めでたさを重ねる意味から。
正月になると当たり前のように食べられている、おせち料理。詰められた料理の名前や形に、意味があることは知られていますが、そもそも「おせち」とは何を指しているのでしょうか? そんな素朴な疑問にお答えします。
知っているようで知らない、「おせち」の由来について見ていきましょう。
「おせち」という言葉の意味
正月料理として定着している「おせち」という名称について、意味をたどると日本の年中行事の姿が見えてきます。
「おせち=節供(せちく)」の略
「おせち」は「節供(せちく)」という言葉を略した表現です(「お」は接頭語)。もともとは、節日や物日の儀式的な食物のことを指していました。その後、「節供」の語が「節日」として用いられるようになり、「御節料理」の言葉が生まれたと考えられています。
節日のうち、最も重要なのが正月であることから、正月料理を指すようになりました。
参考:『世界大百科事典』(平凡社)
「おせち」は節供に由来するため、もともとは正月料理に限定されない言葉でした。
おせち料理の変遷
江戸時代、おせち料理は「食積(くいつみ)」とも呼ばれていました。江戸時代中期以降は、重積(じゅうづみ)または台の物として、正月用の保存食のことをいうようになります。
おせち料理としては、明治・大正・昭和を通じて各家庭で作るものに。正月の来客に振る舞うものにもなっていました。
現在は、既製品を買い求めることが多く、自家製のおせち料理は減って来ているといえるでしょう。
参考:『日本大百科全書』(小学館)、『世界大百科全書』(平凡社)

おせち料理の形式
おせち料理は、形式そのものに意味があります。重箱の使用や、作り置きの習慣には、昔の人々の祈りと暮らしの知恵が息づいています。
重箱に詰めるのはなぜか?
おせち料理を重箱に詰めるのは、単なる見た目の華やかさではありません。「めでたさを重ねる」意味から、縁起がいいといわれる料理を重箱に詰めました。
正月用の料理は年の暮れのうちに作り置きし、何日かかけて食すため、日もちのよさが求められます。重箱は密閉性や持ち運びやすさにも優れていることから、保存性を高める役割も担っていました。
加えて、正月三が日中は、主婦の労働を軽減する、という実用的な意味合いも背景にありました。
三が日を無事に過ごすための知恵
おせち料理の習慣には、正月を平穏に過ごすための先人の知恵が詰まっています。
冷蔵環境が限られていた時代に、食材を安全に保存するため、おせち料理には汁が出ず、形がくずれず、冷めても味が落ちないものが選ばれ、味付けも濃くするのが一般的でした。
このように、正月を無事に過ごすため、保存性と安全性を両立させる工夫が家庭ごとに受け継がれてきたのです。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
おせち料理は、「めでたさを重ねる」意味から、縁起がいい料理を重箱に詰めます。
おせち料理に込められた願い
一つ一つの料理に込められた意味を深掘りすると、ただの縁起担ぎではない、日本人独自の「言葉」や「形」を通じた祈りの文化が浮かび上がってきます。
語感と形、色に願いを込める
おせち料理に使用する食材には、それぞれ縁起のいい意味が込められています。その多くは、語感や形を手がかりに、健康や豊作、子孫繁栄といった願いを重ねる文化から生まれました。
語呂合わせの例:
・黒豆は、「まめに暮らす(健康)」という言葉に通じる。
・れんこんの穴の空いた形から「先が見通せる」ことを願う。
・くわいは、芽が出ることを出世になぞらえる。
・昆布巻きは、「喜ぶ」という言葉の縁起をかつぐ。
さらには、紅白のかまぼこに見られるように、色にも意味が込められています。
参考:『世界大百科事典』(平凡社)

最後に
POINT
- 「おせち」は「節供(せちく)」という言葉を略したもの。
- 「めでたさを重ねる」意味から、重箱に詰めた。
- 子孫繁栄、豊作、健康を意味するめでたい食品を詰めることが多い。
「おせち」の由来をたどることで、料理に込められた意味だけでなく、日本人が大切にしてきた節目の感覚や、祈りの形が見えてきました。こうした背景を知ることで、正月の食卓がより豊かに映るはずです。
今年は、並ぶ料理の名前の奥にある思いや、文化に目を向けながら、新しい年を迎えてみてはいかがでしょうか。
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Domani編集部
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