Q.単身赴任予定の夫。家族が離ればなれでもうまくいく家庭とそうじゃない家庭、その違いはどこにあるの?
夫に転勤の可能性があり、ワンオペになったらどうしようと人事異動前にヒヤヒヤしています。でも異動することが夫のキャリアアップには欠かせないらしく、断らせるつもりはありません。全国転勤があたりまえのNHK時代、家族が離ればなれになったりどっちかが仕事を辞めたりする同僚家族たちを見てきたと思いますが、うまくいく家庭、うまくいかない家庭はそれぞれどんな感じだったか、登坂さんから見た感想を教えてくささい。(42歳・出版・3歳の子のママ)
A.2年以内ならなんとかなる。まずは不安材料を紙に書き出してみて。
編集部:近ごろでは転勤自体が今の時代に合っていないと問題になっていますよね。共働きだったらなおさら。
登坂さん:転勤が前提になっている会社はまだまだ多いですよね。NHKに入社したときは、入社試験の面談で聞かれましたよ。「転勤しても大丈夫ですか?」って。でも、そのときは結婚もしてないし、受かりたいから「全国どこでも行きます!」って言うじゃないですか(笑)。実際、僕は入社してすぐ和歌山に赴任になりまして、東京生まれの東京育ちだったので、「和歌山ってどこ?」みたいな感じでした(笑)。いざ行ってしまえば慣れるもんで、どうにかなるんですけどね。転勤で家庭がうまくいく、うまくいかないって一概に「これがいい」という方法はないとは思うのですが、あえて言うなら、うまくいかせるための工夫と、あらゆる手段をとれた人がうまくいくのではないでしょうか。
編集部:夫不在によるワンオペなど、女性側の不安はかなり大きい気がします。
登坂さん:相談者の方はお子さんと一緒に東京に残って仕事を続けるつもりなんですよね? 結局、夫がいないことでどうなるかわからないから不安なんだと思うんです。まずはお互いが抱えている不安要素を全部洗い出すことから始めてみればいいんじゃないでしょうか。
行く可能性のある都市を聞いて、飛行機や新幹線など移動する手段はあるのか、あるなら月に何度帰って来れるのか、自分が行く手段はあるのか、夫ひとりで向こうの暮らしは大丈夫なのか。一個一個挙げていって、解決できる手段はあるのか考えてどんどんつぶしていく。めんどうかもしれないですけど、これがいちばん効果的なんじゃないでしょうか。僕の経験から言うと、2年以内の赴任で、なおかつ大阪や札幌など移動手段が整っている都市なら、東京に基盤を残したままなんとか突っ走れるんです。逆に、それ以上になると、赴任先に新しい生活の基盤ができちゃうでしょう。知り合いもできるだろうし、楽しくなっちゃって「あれ、こっちの暮らしもいいんじゃないか」って思い始めるんですよ。そうなるとまた別の問題が出てくるので。
編集部:向こうの暮らしがいいって言われたら腹立ちますね~(笑)。 NHKの職員の方たちは、みんなどうやって乗り越えていたんですか?
登坂さん:職場結婚の人たちを見てると、やっぱり昔は妻側が仕事を辞めてついていくというパターンが多かったです。でも、NHKでは夫婦とも同エリアに配属が可能だったりするんですよ。職種が別なら夫婦で一緒の局への赴任もOKなんですけど、職種が同じだと別の局じゃないとダメなので、住まいは一緒にして夫は神戸、妻は大阪の局に配属、とか。それは転勤前提の組織だったからそういう制度があったんですけど。僕の後輩はそうやってましたね。
編集部:へえー! 確かに、自分も一緒に転勤を希望するのもひとつの選択肢かもしれませんね。
登坂さん:やっぱり、「夫が単身赴任になってしまって家庭がうまくいかない」ほうを考えてしまうのはダメだと思うんですよ。それは「解決策を何も考えなかった、具体的なことを想像できなかった」ってことだと思うから。うまくいかせるためにどうするのか。夫の会社にも週末帰ってくるための交通費の手当とかあると思うので、そういった制度を調べてみるとか。全部きちんと調べつくして、利用できるものは利用して、って風にやったほうがうまくいくと思いますよ。
編集部:ちなみに、登坂さんは単身赴任しているときの家事全般は自分でやってたんですか?
登坂さん:家事全般、全部自分でやってましたよ。まあ、新人のときはそんな余裕ないから、コンビニにある弁当を次の新製品が出る前にぜーんぶ食べつくす、みたいな生活でしたけどね(笑)。
取材・文/佐々木 恵(スタッフ・オン)
フリーアナウンサー
登坂淳一
1971年生まれ。NHK入局後、和歌山放送局を経て2003年に東京放送局へ異動。「おはよう日本」や正午のニュースなどを担当した。2018年にNHKを退局後は、フリーアナウンサーとしてTOKYO MX「TOKYO LOVE SPORTS」、BSフジ「BSフジニュース」などを担当するほか、バラエティ番組でも活躍中。