何気なく使う前に知っておきたい「嫁」と「妻」の違いって何？｜背景には、異なる社会的な役割や関係性があります

「嫁と妻って、何が違うの？」と感じたことはありませんか？ 日常会話やSNSで何気なく使っている言葉ですが、2つの言葉に明確な違いがあります。この記事では、それぞれの言葉の成り立ちやニュアンスの違いについて、紹介していきましょう。

「嫁」と「妻」のそれぞれの意味を確認

「嫁」と「妻」は、似ているようで実は異なる背景を持つ言葉です。混同されがちですが、意味やニュアンスを理解することで、場面に合った言葉選びがしやすくなります。

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「嫁」とは、どういう意味？

まずは「嫁」の意味を確認しましょう。

よめ【嫁／×娵／×媳】
１ 息子の妻。⇔婿。
「息子の―に菊子が来て」〈康成・山の音〉
２ 妻。また、他人の妻。「彼の―さんは働き者だ」
３ 結婚したばかりの女性。また、結婚式でこれから嫁となる女性。新婦。はなよめ。⇔婿。
４ 旧民法2の下、息子の妻となりその家に入った女性。「―に行く」⇔婿。
「子供に―が出来れば」〈晶子・姑と嫁について〉
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

「嫁」は、もともと「息子の妻」という意味で、他家から嫁いできた女性を指していました。「よめ」とは「吉女」のことで、盛装した女性、つまり婚礼の晴れ姿の印象をとどめる新妻を指したのが古い用法です。

武家社会（室町時代）以降、嫁は「家に仕える存在」とされ、夫の両親とともに暮らす中で、主に舅や姑との関係が重視されてきた歴史があります。嫁は、主婦になるまではひたすら耐え忍ぶ日々を過ごし、いったん主婦・姑となったら、今度は嫁をいびる側に回るという悪循環がありました。

「妻」とは、どういう意味？

「妻」は、法律上の結婚関係にある女性を指す言葉で、夫に対する配偶者の呼称です。厳密には内縁関係の場合は妻とは言いませんが、「内縁の妻」という用いられ方はあります。

古くは夫に従属する存在とされていましたが、現代では法的にも社会的にも、夫と対等な立場が保障されています。ただし、夫婦同性の原則や離婚の際の財産分与、死亡の際の損害賠償額の算定など、平等を確保するために十分であるかどうかは、未だ検討の余地があるといえるでしょう。

参考：『日本大百科全書』（小学館）

「嫁」と「妻」の違いは？

「嫁」と「妻」は、どちらも結婚した女性を指す言葉ですが、その背景には異なる社会的な役割や関係性が見え隠れしています。

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「嫁」はもともと、結婚によって夫の家に入った女性を意味する呼び方です。特に、夫の父母、中でも夫の父親の立場から見た呼称であり、夫自身が自分の配偶者を「嫁」と呼ぶのは、本来の意味からは少し離れています。例えば「里帰り」は「嫁」が「一定期間、里に戻ること」を指しており、「妻」を帰すという感覚ではありませんでした。

一方、「妻」は夫との関係に焦点をあてた呼び方です。夫婦で生家を離れ、新しい生活の場を築く「新居住婚」が増えたことで、「嫁」よりも「妻」という呼び方が広がっていきました。

「嫁」は結婚後も、夫の両親に仕えるような立場で過ごすことが多く、すぐに家の主婦となるわけではありませんでした。それに対して「妻」は、結婚と同時に家庭の主婦となり、嫁よりも格段に高い地位を獲得することになりました。

こうした違いからも、「嫁」は家制度に根ざした呼び方であり、「妻」はより夫婦関係に重きを置いた呼び方であるといえそうです。

参考：『世界大百科全書』（平凡社）

最後に

「嫁」と「妻」は、似ているようでいて、背景や役割には歴史的にも文化的にも違いがあります。呼び方ひとつにも、それぞれの家庭や人間関係のかたちがにじんでいるかのようです。言葉の違いを知っておくことは、自分の思いや相手への配慮を言葉で丁寧に伝える第一歩になるかもしれませんね。

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