「人生設計を考えたら、そろそろ子どもがいた方がいいと思うんですが…」
Fさん 34歳 外資系コンサルティング会社勤務
妻とは前職の広告代理店で出会いました。年の差は3歳。妻の方が年下です。転職して3年目、私自身の仕事も安定してそれなりに実績もあるので、独立も視野に入れているところ。私が起業して、妻が会社員というのは家計を考えるとバランスが取りやすいですしね。前職の会社は福利厚生がきちんとしていますしそろそろ子どもを、と考えています。
両親にも孫の顔を見せてあげないと。正直、母には「子どもはいつ?」って言われているんですよ。車で10分のところに住んでいるので「子どもの面倒は見てあげるから、共働きでも大丈夫よ」って言ってくれてます。妻のキャリアを考えても、両親が元気なうちがいいと思うんですよね。
でも、妻に持ちかけると「まだかなぁ」とはぐらかされてしまう。どうやら仕事のタイミング的にまだだと思ってるみたいですね。次のプロジェクトが終たったら、次の海外出張が終わったら…と先延ばしにしている。私も少し勉強したんですけど、女性の体のことを考えたら早い方がいいって言うじゃないですか。子どもはふたり欲しいんですけど、経済的なことを考えても、ふたりが大学卒業したときに60歳前でいたいとも思っていて。いつまで待てばいいんですかねぇ。その気になってもらうためにはどうしたらいいんでしょうか?
「奥様が出産をためらう理由は、今取り掛かっている仕事のことだけではないのでは?」
Fさんは、ご自身は起業して、会社員である奥様に収入の下支えと子育てをして欲しいと考えていらっしゃるようですが、奥様は本当にそれでいいのでしょうか。
女性は妊娠すると体調が大きく変化します。妊娠がわかるくらいの時期から悪阻、体のだるさ、腰の痛みなどが始まり、それまでのようには仕事ができません。出産前後の産休、人によっては育休を経て復職するときには保育園を探し、しばらく時短勤務を選ぶ場合も多いですが、その場合でも、お子さんが病気になれば会社を休み、習い事にもついていき、小学校になれば学童に入れたり、塾に入れたり。家事も増えますし「子どもを愛している」と言う気持ちとは全く別に、やらなければならないことが山のように増えます。例えば立場が逆転したとして、Fさんは、フルタイムで仕事をしながらそれを全て担う覚悟ができますか?
仕事は会社員であれば、代わりのきくものも多いでしょう。それはつまり、男性であっても女性であっても、今のポジションをキープしたくても、休めば代わりの人がいる、ということです。奥様が今後も今と同じお仕事を続けたいと思っていらっしゃるのであれば、躊躇するのは当然ではないでしょうか。仕事が面白くなってきた時期と出産したい時期が重なって、悩む女性は本当に多いんです。それは子育ては女性がするものという周囲と本人の思い込みがあるからというのが大きな理由のひとつでしょう。
お近くにFさんのご両親がお住まいとのことですが、ご両親は母となった女性が仕事をすることにどのくらい理解があるのでしょうか。奥様にとってFさんのご両親はあくまで他人ですから、どんなに仲が良くてもお願いしやすいかどうかはまた別の話です。Fさんはどのくらいご家庭の「仕事」を請け負う覚悟がありますか?
奥様の決断を後押しするのは、Fさんの合理的な「家族計画」ではなく、奥様の生き方に寄り添う気持ちと態度だと思いますよ。
過去の相談はこちらから
メイン画像:(C)Shutterstock.com
Domani編集部
下河辺さやこ
雑誌Domani&WebDomani副編集長。AneCan、Oggi、Domani、Preciousなど仕事をする女性のためのファッション&美容編集者として女ゴコロを深掘りすること四半世紀。Amazonもなかった時代に入社3年目で出産後、連載「産みたい、でも…」などワーキングマザー向けのコンテンツの立ち上げにも携わる。instagram @sayako_shimokobe