あなたに会えないことが、ひたすら苦しい
お話を伺ったのは…
大庭葉子さん(仮名・36歳)。茨城県出身・首都圏内の国立大学卒業、研究職として第一線で活躍(年収800万円)。同じ年の夫(化学メーカー勤務・年収700万円)と結婚8年。東京の郊外にあるファミリーマンションに住む。子どもは6歳の娘。身長160cm、口癖は「私なんて…」の謙虚で古風なぽっちゃり美女。
「したい」けれど、でも…
葉子さんは自らを「性欲が強い」と語る。
「禁欲的な親に育てられたこともあり、性に対する興味は、人一倍強かったんですよ。親の教えもあり、性病と妊娠が怖かった。男性からモテていたにも関わらず、初体験は20歳でした。仮に妊娠したとしても中絶費用が貯まったときに、男女関係を解禁したのです」
実家はテレビドラマなどでキスシーンが出ただけで、チャンネルを変える。葉子さんは12歳のとき初潮を迎えたのだが、そのことを知った父親は「色気づきやがって」と吐き捨てた。
結婚してから関係したのは7人
夫のことは愛しているが、夫だけでは物足りない。
「夫婦生活って、手順とかタイミングがマンネリ化してくる。私が求めているのは、強烈に必要とされて、新鮮な体験ができること。夫は年上だし、そちら方面があまり強くない。だから外に求めてしまうんです。結婚してから今までしたのは7人。誘い方は簡単で、同窓会や部内の飲み会、オフ会、異業種交流会に『女性のコスプレ』をして行くこと。あとはバカなフリをすること。男にマウンティングされても、私は男女関係を求めたい」
ちなみに、『女性のコスプレ』とはピンク、ベージュ、花柄の服を着て、上目遣いに相手の顔を見ることなど。不倫で敬遠されるのは、自立感、モードあるファッションなどだとか。
「イタいと思われても、私はモテるなら、したい男性とできるなら、それでいい」
離婚して結婚したい…そう思う年上の恋人と会えない
葉子さんの不倫パターンは、「落とすように仕向けた男性と短期間」。
「長く交際すると、情が生まれるし、お互いに辛くなるから。相手は既婚者だったり、独身だったりいろいろです。今の恋人は研究所に出入りしている業者の男性で、現在46歳のイケメンメガネ男子です。筋トレが趣味だから、上腕二頭筋が太く、腹筋が割れている。夫とは全く違い、青竹のような勢いの良さで、私に反応してくれるのがうれしくて。離婚して結婚したいと思ったこともありました。本当に彼のことを求めているのに、コロナで出勤できず、今はホントに苦しい。」
彼との恋のきっかけは、誘われるように「仕向けた」飲み会
「私はお酒が強く、かなり飲める。だから恋が始まるときは飲み会。彼はウチの会社に毎日のように出入りしているので、1年くらいかけて距離を縮め、立ち話するところまで持って行きました。それからボディタッチをしたり、6000円くらいするバレンタインチョコを贈ったり……そういう『この女性は絶対に断らない』というアピールは有効」
彼から誘われた飲み会は、職場から遠く、葉子さんの自宅から近い繁華街。
「それに安心して、ガンガン飲んでいたら、腰に来てしまい、彼が介抱してくれました。夫に『飲み会だよ』と事前申告すると『わかった、楽しんでおいで』と娘を見ていてくれる。その日は金曜日で、娘は夫と共に都内の義実家に行っていた。義実家に夫と娘が行くと歓待を受けて、日曜日の午前中まで帰ってこない。それをいいことに、彼に対し『眠い、気持ち悪い』と言いつつ、記憶がないふりをして、てしなだれかかったのです」
私の知性にホレた彼、コロナでリモート以前は、毎日のように…
それ以来、互いに快楽に溺れた。職場で毎日のように顔を合わせ、秘密のアイコンタクトで、愛を確認する日々を過ごしていた。
「彼との符号というか、暗号みたいな会話をして、会社の昼休みに研究所近くに住む彼の家に行ったり、彼のクルマの中で密会したり…。彼はバツイチで、女性からモテるし、ストイックなのですが、それにも関わらず子どももいる私の体を賞賛してくれるんです。『このしっとりとした肌にまとわりつかれると、気持ちよくてたまらない』とかね。産後にたるんだ皮膚がコンプレックスだったけど、その重い気持ちを軽やかにしてくれる言葉を言ってくれるんです」
さらに彼がベッドの中で葉子さんにささやいた「結婚願望まみれの女は嫌いだ」という発言が耳に残る。
「関係が始まったころ、私に対して『その知性にホレた』と言ってくれたり。ホントに私たちは相思相愛なんです。でも、コロナ以前は毎日会えたのに、リモートワークが推奨されてから1週間、彼からの連絡が全くない」
もしかして、他の人と?
彼は女性が好きであることを知っている。だからこそ疑心暗鬼になる。
「いろいろ妄想すると、苦しい。会えないのは仕方がないとして、LINEすらないのが苦しくて、夜中に叫びだしそう。夫からも『最近、何かあったの?』と言われるようになり、このままではヤバいけれど、感情は止められない。リモートワークって、子どものお世話をしながらだと仕事が思うように進まない。そして感情の抜きどころがないんです。ちょっとおしゃべりしたり、同じ目標に向かっている人の気配を感じたりできないから。コロナさえなければ、私と彼は順風満帆の恋人同士だったのに、私の中に彼を疑う気持ちが生まれ、彼の中にも、距離を取るような気持が出てきたのだと思います。誰かに彼をとられたらどうしよう…。彼の筋肉質な胸板を思い出しながら、胸が苦しくなる毎日です」
会えないからこそ思いが募るのだろうが、激情のまま行動し、後悔している人は少なくない。
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。