こんな年齢なのに、女性扱いしてくれた
お話を伺ったのは…
田辺乃里子さん(仮名・38歳)。東京都出身・中堅私立大学卒業、IT関連会社勤務(年収500万円)。同じ年の夫(フリーランス音響エンジニア・年収500万円)と結婚5年。実家が所有する都心の分譲マンションに住む。子どもは5歳の娘。身長158cm、元読者モデルで、華やかな美人。
頭をポンポンされてドキッとしてしまったんです
乃里子さんが現在の不倫相手と関係を持つようになったのは、半年前。転職してから1か月後のことだ。
「仕事で大きなミスをしてしまい、クライアントに迷惑をかけてしまったんですよ。大きなイベントだったので、大問題になってしまって。2歳年上のバツイチ上司と一緒に地方にあるクライアントの本社に謝罪に行ったときに、『俺がついているから、大丈夫だ。あなたはよくやったよ』と頭ポンポンしながら言ってくれて、ドキッとしました」
その後、乃里子さんは上司に「好き好きアピール」をする。
「好きになると、その人の役に立つことがしたくなる。コーヒーを差し入れたり、手作りのお弁当を持って行ったり…体が勝手に動いちゃうんですよ。友達から『男が付け上がるからやめなよ』と言われるのですが、止められない」
アピール効果もあり、出張から1週間で、彼は乃里子さんを食事に誘ってきた。その日のお迎えは夫に依頼。
「夫には接待で深夜帰宅になると伝えました。彼が予約してくれたのは、銀座の大人な雰囲気のレストラン。女性扱いしてくれて、テーブルの下から脚を触られたりしました。ドキドキするし、ホッとする。夫では絶対に得られない感情を、上司は私にくれたんです」
せっかく勝負下着をつけてきたのに寸止めで帰宅
その日、乃里子さんは勝負下着をつけていた。
「セクシーな下着をつけていたのに、彼は私をタクシーに乗せて帰宅させた。私にしてみれば、いわゆる”寸止め”ってやつです。23時に家につくと、夫は散らかったリビングのソファでお腹を出してぐうぐう寝ている。テーブルの上には、朝私が用意したハンバーグを食べたのであろうケチャップのついたお皿がキッチンに戻すでもなく置きっ放し。夢の国から現実に帰った気分でした」
年収に惹かれて結婚した夫が増やしたのは体重だけ
結婚当初、夫は外資系のメーカーに勤務しており、年収は1千万円を超えていたが、結婚後に乃里子さんに無断で独立した。
「私、どうしても年収が高い男性と結婚したかった。だから、オタクっぽくてさほど好みでもない夫を選び、授かり婚したのに、まさかの独立。そのことでブチ切れたら、その日から男女の関係がなくなりました。私はしたいのに、夫は無理だと拒否される。しかも独立してから、夫の年収もダダ下がりで、この5年間で増えたのは体重だけ。しかも私の実家のマンションに住んでいるのに、家賃さえくれなくなったんです」
夫は素直ないい人ではある。でも結婚すると、トキメキもなくなる。
「あと、結婚すると、男としてどうこうではなく、世間体、お互いの実家、生活、お金、娘の教育などめんどくさい課題が山積み。そんなことにかまっているうちに、私はどんどん老けていく。その前に女として愛されたかった」
3回目のデートで上司とホテルに
上司と乃里子さんは、隔週の金曜日にデートをするようになり、3回目にホテルへ。
「夫とではありえないくらい燃えてしまった。『ずっと欲しかった』とか『かわいいよ』と言われて、アガらない女はいませんよね。それでも、私に娘がいることを知っているから、23時には家に着くように帰してくれる。彼はすごく大人なんですよ」
コロナで交代出勤になってしまった
乃里子さんが、夫と離婚して上司と再婚しようかと本気で考えはじめた頃に、新型コロナウイルスの危険性が世界的に報じられる。
「コロナは怖かったけれど、海外の見本市やカンファレンスが中止になり、彼の出張が減って会える時間が増えたことは単純にうれしかった。渋谷区のオシャレなリノベーションマンションに住む彼の家で、得意なブリ大根を作ってあげたり。『家庭の味っていいよね』って笑ってくれたときに、ホレなおしました」
アルコールスプレー持参で上司の家へ
その後、出勤は交代制に。出勤する時は帰りに必ず彼の家に立ち寄り、自宅デートを重ねるように。
「彼は自転車通勤だし、私も満員電車に乗っていない。感染リスクは低いと思い、アルコールスプレーを持って、彼の家に行っていました。家に入る前に、全身をシュッシュとして、すぐにシャワーを浴びて、ベッドに行く。彼も待ちきれないみたいで、すごく激しく求めてくる。生物の本能なんでしょうか。危機的な状況だから、激しくしてしまうのか」
緊急事態宣言の頃から彼が冷たくなって…
その後夫の仕事はすべてなくなり、当面の間、乃里子さんの給料で生活することになった。娘の保育園が休園だが、夫がその世話を引き受けて、乃里子さんは在宅6割、出勤4割で仕事をしている。以前と変わらず彼との関係を続けたいと思っていたそうだ。ところが…
「最近の彼は、前ほど優しくしてくれない。緊急事態宣言が出るくらいから、家に行こうとしても、かわされるようになりました。もしも感染したら、責任を問われる立場だし、とかなんとか。世間体がそんなに大事?って私は思ったけど、常識のない女だと思われたのかな。コロナが終息したら、またデートに行きたいけど…」
世間体や欲望よりも、周囲の人々の生命を守る行動が求められる今。エゴを満たそうとすれば人は離れる。コロナが収束したとしても、信頼や愛情は取り戻せないことに、彼女が気づく日は来るのだろうか。
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。