【目次】
次々と新たな舞台に挑戦しながらも、宝塚歌劇団への愛は忘れることなく持ち続ける
宝塚歌劇団星組のトップスターとして約6年間、星組のみならず劇団をも引っ張り、人気を集めたの立役者のひとりが満を持して登場。創立100周年(2014年)という大きな節目において宝塚歌劇団の顔となり、「宝塚歌劇団を知らない人でも柚希礼音の名前は知っている」と言われたほどの存在感。退団して約5年経った今でも、舞台人として活躍を続ける柚希礼音さんに、お話をうかがいました。
七海ひろきさんからご紹介いただきました。七海さんが「プライベートなことだから書いてもいいか確認してください」と言っていた、旅行のことを…。
柚希さん(以下、敬称略):そう、私もそれを言おうと思っていたの!(笑)
舞台上では男役をとことん追求されてあんなにカッコいい方なのに、普段の柚希さんはおちゃめで細かいところまで気を配ってくださり、そのギャップが素敵なんです、と。
柚希:私もカイちゃんとの思い出はその旅行です。現役時代はかぶっていないんですよ。私が退団してからカイちゃんは宙組から星組に組替えだったので、車で行って1泊して星組の全国ツアーを観るという最高に楽しい旅行の時に、初めてちゃんと顔を合わせたんです。もちろん名前と顔は知っていたけどほとんど話したことがなかったのに、一緒の宿に泊まって温泉に入って…、一気に距離が縮んだ思い出です。こんなことある? っていう(笑)。私から思うカイちゃんも、ギャップの人。とっても気遣いのできる方です。
かぶっていらっしゃる時期がないからこそ、意外なお話が聞けるのはうれしいです。今は退団されて5年と少し経ちますが、柚希さんが考える宝塚歌劇団への愛はどんなところでしょうか?
柚希:今の私を育ててくれた、大切な場所です。宝塚歌劇団を卒業したら「肩の荷が下りたでしょう?」とか、(トップスターが背負う)羽根の重さは責任の重さと言われているので「背負わないことで楽になった?」と言われたのですが、楽になるというより、「宝塚歌劇団出身」という責任は一生あるんだなということをより強く感じますね。それが重荷というわけではなく、宝塚歌劇団を退団しても清く正しく美しく、懸命に舞台に取り組んでいる現役のタカラジェンヌに迷惑をかけるようなことがあってはならないこということ。私たちはいろんなことに挑戦しながらも、タカラヅカ出身ということを誇りに持ち、日々邁進していこうと思っています。
柚希さんが発起人となり、元トップスターたち19人の方々がリモートで制作された「Our song for you-また会える日まで-『青い星の上で』」。約130万回再生され、感動した、涙した…という声を聞きました。制作秘話があれば教えてください。
柚希:自分がやっていた公演も途中で中止になってしまった中で、宝塚歌劇団の公演も中止になってしまった。宝塚歌劇団って5組があって、常にどこかで、いずれかの組が公演しているんですよ。それが完全に止まってしまったことが自分にとってかなりの衝撃でした。いつも応援してくださる、舞台を楽しみに待っていてくださるみなさまに、そして宝塚歌劇団のみなさんにも何か笑顔を届けられないかなと思ったんです。でも退団したらそれぞれ事務所も違うし、たぶん難しいだろうなと思いながらまずは自分のマネージャーに相談したんですよ。そしたら「いいんじゃないですか?」と。それから本間(昭光)さん(アレンジメント、ピアノ担当)やNAOTOさん(ヴァイオリン)やSHUN先生(振付)というREON JACKでつながりのある方々にも話したところ、みなさま「やろうやろう!」と言ってくださり、心強かったです。
そして仲間…と考えた時に、100周年以降のトップコンビに声をかけさせていただいて。きっと無理だろうなと思っていたのに、「自分が役に立てることなら」とか「何かをしたいけど、何をしていいかわからなくて呆然としていたのでありがたいです」とか温かい言葉をくれました。離れているけれど、心はひとつなんだなと感動しましたね。
曲は何がよいか、タイトル、ハッシュタグの文言もみんなで一緒に考えました。タカラジェンヌって、会って、お稽古して、振りを確認するということに慣れているんです。各組のスターが勢揃いする「タカラヅカスペシャル」でも1日は全員集合しますからね。今回は、一度も会わずしてちゃんとできるかなと心配だったので、わかりにくそうなところを先回りし、「ここはカウントではめた方がわかりやすいと思うので、バックに曲を流しながらカウントでテンポを揃えましょう」と自分が自撮りしたものを送ったりして。「ここはインカメラ、縦撮りで」とか他にも細かくお伝えさせていただいて。こだわりは、間奏に入れた自由なポーズ。歌うだけでは面白みがないかなと思い、ちょっと愛らしく感じるリラックスした雰囲気の映像も入れたくて撮ってもらったんです。少しほっこりしませんか?(笑)
カップルの振りはSHUN先生が担当してくださいました。私とちゃぴちゃん(愛希れいかさん)が距離を保ちながら動画で撮って、「ここからここまでは○○さんと○○さん。その前後の振りも入れてください」とお願いしながら。離れているけれども触れたいという気持ちがすごく入っていますよね。みんなそれぞれ離れているのに、よくぞあんなにカップルぶりが撮れたなー(笑)。
コマ割りも本当に素敵で。トップコンビ同士はもちろん、同期とか、組とか、姉妹とか。
柚希:そうなんです! 曲の1番は男役同士とかトップコンビで割り、2番はファンの方が思う、今だからこそ見られる並びにしました。いろいろな並びを考えるのは私ひとりでは偏ってしまうかなと思い、妃海 風ちゃんを助手につけて(笑)。私と凰稀かなめが、星組のトップと2番手だったことを考えての割りとか、ねね(夢咲ねね)とあゆっち(愛加あゆ)の姉妹割りとか、壮(一帆)さんとちぎちゃん(早霧せいな)の雪組リレーとか、いろいろ考えてくれました。
宝塚大劇場は7月17日から、東京宝塚劇場は7月31日から公演が再開されました。特に東京は、柚希さんがいらした星組の新トップコンビ、礼 真琴さんと舞空 瞳さんのお披露目公演ですが、思うところはございますか?
柚希:きましたね! 本当に待ち望んでいました。(宝塚)大劇場公演が終わってからストップして、こんなに期間が空くってどんな気持ちなんだろうかと。東京が始まるまでの約4か月はいろいろなことを考えてひとりでお稽古して…それがまたいいものになっているんじゃないかなと思います。応援してくださるお客さまも舞台を生で観られる悦びを感じて、1回1回の公演がとても貴重なものになると思います。礼 真琴とはときどきやりとりしていて。YouTubeに『青い星の上で』を挙げたときも真っ先に「最高です!」という連絡をくれて、うれしかったですね。
(※宝塚大劇場公演は8月21日現在休止中)
あたりを包み込むような陽のオーラたっぷりで、自然と周りに人が集まってくるような雰囲気は、柚希さんの天性のものなのでしょう。トップスターを経験され、今もなお女優として数々の舞台で主演をされているのに、ちっとも偉そうでなく、愛に溢れた方でした。スタッフさんとの関係も素敵で、お互いに信頼しきっている様子が垣間見れて微笑ましかったです。柚希さんの提案だったから、第一線のアーティストの方々が力を貸し、元トップコンビのみなさんが協力してくださったのかなと思いました。何度見ても素晴らしい映像です。
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全世界で80以上の演劇賞を獲得し、1,000万人以上の観客を魅了し続ける奇跡のミュージカル『ビリー・エリオット』がついに9月11日より上演!
【STORY】
1984年の英国。炭鉱不況に喘ぐ北部の町イージントンでは、労働者たちの間で時のサッチャー政権に対する不満が高まり、不穏な空気が流れていた。数年前に母を亡くした少年・ビリーもまた、炭鉱で働く父と兄、祖母と先行きの見えない毎日を送っていた。が、偶然彼に可能性を見出したウィルキンソン先生の勧めにより、戸惑いながらも名門ロイヤル・バレエ・スクールの受験を目指して歩み始めるようになる。息子を強い男に育てたいと願っていた父や兄は強く反対したが、11歳の少年の姿は、いつしか周囲の人々の心に変化を与え…。
Daiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
日程:
≪オープニング公演≫2020年9月11日(金)~14日(月)
≪東京公演≫9月16日(水)~10月17日(土)
≪大阪公演≫10月30日(金)~11月14日(土)
場所:
≪オープニング公演≫≪東京公演≫TBS赤坂ACTシアター
≪大阪公演≫梅田芸術劇場メインホール
脚本・歌詞:リー・ホール
演出:スティーヴン・ダルドリー
音楽:エルトン・ジョン
主催:TBS ホリプロ 梅田芸術劇場 WOWOW MBS(大阪公演のみ)
ビリー(クワトロキャスト):川口 調、利田太一、中村海琉、渡部出日寿
お父さん(ダブルキャスト):益岡 徹、橋本さとし
ウィルキンソン先生(ダブルキャスト):柚希礼音、安蘭けい
おばあちゃん(ダブルキャスト):根岸季衣、阿知波悟美
トニー(ダブルキャスト):中河内雅貴、中井智彦
ジョージ:星 智也
オールダー・ビリー(ダブルキャスト):大貫勇輔、永野亮比己
チケット取り扱い:
≪オープニング公演≫≪東京公演≫
ホリプロチケットセンター 03-3490-4949(平日10時〜18時/土曜10時〜13時/日祝休)
≪大阪公演≫
梅田芸術劇場 06-6377-3800(10時〜18時)
撮影/大靏 円(昭和基地) ヘア&メーク/CHIHARU スタイリング/間山雄紀(M0) 文/淡路裕子
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女優
柚希礼音
ゆずきれおん/6月11日生まれ・大阪府出身 85期生として宝塚歌劇団入団、男役として星組に配属。2009年『太王四神記ver.II』で星組トップスターに就任。2014年には日本武道館で『REON in BUDOKAN〜LEGEND〜』でコンサートを開催。2015年『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!』にて宝塚歌劇団を退団。退団後も舞台を中心に活躍し、昨年上演されたミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』は第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。2021年1月より、主演を務めるミュージカル『イフ/ゼン』(シアタークリエほか)が公演予定。▶︎公式HP