【目次】
「この公演が自分の舞台人生最後だ」と思いながら、いつでも最高のパフォーマンスをお見せしたい
7月12日に開幕予定だったにもかかわらず、新型コロナ感染拡大の影響で公演延期となり、9月11日にオープニング公演初日を迎えるミュージカル『ビリー・エリオット』(くしくも取材日は7月12日…)。イギリスで生まれたこの演目は世界中で上演され、名だたる演劇賞を受賞。2017年に日本で初めて上演され、柚希さんも今回と同じウィルキンソン先生で出演されていました。2回目の出演となるこのミュージカルの見どころは…?
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待ちわびていた『ビリー・エリオット』の上演が決定しましたね! 『ビリー』の見どころを教えていただけますか?
柚希さん(以下、敬称略):炭鉱夫の父を持つ少年ビリーがダンスの才能を見出され、戸惑いながらもその世界に進んでいくストーリーなのですが、少年の成長物語というひと言では言い表せないくらい深いものが詰まっています。1980年代の、そんなに昔じゃなくてまさに私が生まれた頃のお話です。電気がどんどん発達し変わりゆく時代に翻弄されながらも、仕事にプライドを持つ炭鉱夫の男たちの葛藤が、なんとも切なくて。「ダンスをするときはどんな気持ちだ?」と尋ねられた子どもが、「電気がはしるみたいだ!」と答える場面があるんですね。子供が出合う、自分自身の将来を変えるような衝撃を「電気」と表現していて、でも炭鉱夫たちは電気に対抗する仕事をしている。そういうちょっとした台詞や歌詞の端々にもこだわりを感じますし、どの場面も見逃せないですね。今だからこそ、この大人たちが葛藤する心情に重なるものもあるかもしれません。
柚希さんご自身は3年ぶり2度目のウィルキンソン先生役です。どんな役ですか?
柚希:主人公のビリーの才能を見出して育てていくバレエの先生で、それだけ聞くととても愛情豊かで優しい人柄のように感じますよね? ウィルキンソン先生は、そうじゃなくて不器用に生きているところが魅力だと思っています。バレエで成功しそうだったのに出産して第一線に戻れなくなり、片田舎でバレエを教えているんです。人生を諦めているというか、楽しいことなんて特になくて、なんとなく毎週バレエを教えている。過去に誰かに愛情を注いだことがあったのに裏切られた経験があるから、もう決して人に愛情豊かに接しないと決めている。そんなウィルキンソン先生がビリーと出会って、戸惑い葛藤しながらも気持ちを変化させていくんです。第一幕はビリーにウィルキンソン先生が育ててもらい、第二幕ではお父さんが育てられるという副題をつけてもいいくらい、と演出家がおっしゃっていました。
タカラヅカの先輩である安蘭けいさん(柚希さんの前の星組トップスター)とダブルキャストですね。安蘭さんや他の共演者の方とのお稽古秘話がありましたら教えてください。
柚希:安蘭さんと同じ役をさせていただくことができるなんて、自分が(星組の)2番手の時は考えられない、本当に光栄なことです。ふたりでお稽古をしたことがあったのですが、私とはまったく違う役作りをされていて、勉強になることがたくさんありました。ダブルキャストなので、ひとりが歌のお稽古をしていたらひとりがダンス…と授業のように組まれていてなかなか一緒になることがないのですが、廊下ですれ違った時に「次はなんのお稽古?」って、まるで学生の休憩時間みたいなことをしています(笑)
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まだビリーと、バレエの子どもたちとしかレッスンをしていなくて、来週からみなさんがいらっしゃるんです。それぞれの役で初演のメンバーがひとりずつ残りながらも新しいキャストが加わるので、また違うエネルギーになるんじゃないかなと思ってとっても楽しみ! 今はマスクをしながらお稽古をしているんですよ。マスクをしていると包まれている安心感があるのですが、舞台で顔が全開になった時に戸惑いそうなので(笑)、細部まで抜かりないように演じなければならないと肝に命じています。
在団中も退団後も、たくさんの舞台に立たれてきましたが、柚希さんの仕事に対するモットーやこだわりはなんでしょうか?
柚希:宝塚歌劇団にいた時、上級生(先輩)に「この公演が退団公演だと思ってやりなさい」と言われたことがあり、それ以来大切にしている言葉。これが自分の舞台人生の最後だと思うと、すべてをかけてできる心意気になるんです。まだ先があると計算をして役をこなすより、自分はもちろん、観ている方にも今の役が一番だと思っていただけるように、持てるもの全てをかけて真摯に向き合いたいと思っています。「前の役も好きだったけど、今度の役はもっといいね」と思っていただけるように、男役時代も挑んできました。本番、舞台に立つと丸腰なんですよ。この人が、どんな心持ちでお稽古をしてどう向き合っているのかが全部見透かされてしまう。今回は再演で、振りもセリフも初めてではないからこそ、常に自分に問いただしながら役を高めていきたいですね。
現在の自分に満足することなく、高みを目指してひたすら挑戦を続ける姿勢があるからこそ、どんな役にも柚希さんなりの魅力を吹き込んで観客を楽しませてくれるのだと感じました。幅広い役を演じられた経験も、今の大きな糧になっているのかもしれません。
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全世界で80以上の演劇賞を獲得し、1,000万人以上の観客を魅了し続ける奇跡のミュージカル『ビリー・エリオット』がついに9月11日より上演!
【STORY】
1984年の英国。炭鉱不況に喘ぐ北部の町イージントンでは、労働者たちの間で時のサッチャー政権に対する不満が高まり、不穏な空気が流れていた。数年前に母を亡くした少年・ビリーもまた、炭鉱で働く父と兄、祖母と先行きの見えない毎日を送っていた。が、偶然彼に可能性を見出したウィルキンソン先生の勧めにより、戸惑いながらも名門ロイヤル・バレエ・スクールの受験を目指して歩み始めるようになる。息子を強い男に育てたいと願っていた父や兄は強く反対したが、11歳の少年の姿は、いつしか周囲の人々の心に変化を与え…。
Daiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
日程:
≪オープニング公演≫2020年9月11日(金)~14日(月)
≪東京公演≫9月16日(水)~10月17日(土)
≪大阪公演≫10月30日(金)~11月14日(土)
場所:
≪オープニング公演≫≪東京公演≫TBS赤坂ACTシアター
≪大阪公演≫梅田芸術劇場メインホール
脚本・歌詞:リー・ホール
演出:スティーヴン・ダルドリー
音楽:エルトン・ジョン
主催:TBS ホリプロ 梅田芸術劇場 WOWOW MBS(大阪公演のみ)
ビリー(クワトロキャスト):川口 調、利田太一、中村海琉、渡部出日寿
お父さん(ダブルキャスト):益岡 徹、橋本さとし
ウィルキンソン先生(ダブルキャスト):柚希礼音、安蘭けい
おばあちゃん(ダブルキャスト):根岸季衣、阿知波悟美
トニー(ダブルキャスト):中河内雅貴、中井智彦
ジョージ:星 智也
オールダー・ビリー(ダブルキャスト):大貫勇輔、永野亮比己
チケット取り扱い:
≪オープニング公演≫≪東京公演≫
ホリプロチケットセンター 03-3490-4949(平日10時〜18時/土曜10時〜13時/日祝休)
≪大阪公演≫
梅田芸術劇場 06-6377-3800(10時〜18時)
撮影/大靏 円(昭和基地) ヘア&メーク/CHIHARU スタイリング/間山雄紀(M0) 文/淡路裕子
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女優
柚希礼音
ゆずきれおん/6月11日生まれ・大阪府出身 85期生として宝塚歌劇団入団、男役として星組に配属。2009年『太王四神記ver.II』で星組トップスターに就任。2014年には日本武道館で『REON in BUDOKAN〜LEGEND〜』でコンサートを開催。2015年『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!』にて宝塚歌劇団を退団。退団後も舞台を中心に活躍し、昨年上演されたミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』は第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。2021年1月より、主演を務めるミュージカル『イフ/ゼン』(シアタークリエほか)が公演予定。
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