年取り膳
年取り膳とは、1年間無事であったことを感謝し、新年の年神様をお迎えするための祝いの膳で、大晦日の夕方にごちそうを供え、皆で食事をする習わしです。
かつて日本では、1月1日に皆が一斉に年を取る数え年でした。その昔、日没が1日の終わりであったため、大晦日の夜はすでに1月1日に変わっていました。その名残で、無事に年神様をお迎えして年を取ったことをお祝いしたのです。
年取り膳の主役は「年取り魚」で、主に西日本では鰤、東日本では鮭が用いられてきました。
【目次】
してはいけないことはある?
大晦日は年神様を迎える大事な準備の日であるため、避けた方がいいとされる行動もいくつかあります。一見縁起が良さそうでも、実は縁起が悪いとされることもあるので注意しましょう。
正月飾り
門松やしめ縄、鏡餅などの正月飾りは、年神様を迎えるための大切なものです。本来は12月28日までに済ませるか、30日に準備しておくものであり、大晦日に準備するのは失礼だとされています。31日では葬儀と同じ「一夜飾り」になってしまいます。また、大切な神様を迎える準備を一晩で簡単に終わらせることは、神様を軽んじていると考えられるからです。
餅つき
大晦日は餅つきも避けた方がよいといわれています。31日についた餅は「一夜餅」と呼ばれ、葬儀と同じ「一夜飾り」の意味をもってしまいます。大晦日にバタバタしながら準備したということも縁起が悪いとされる理由です。
同じく29日の餅つきは「二重苦」や「苦餅・苦持ち」となるため、避けた方がよいとされています。一方、29は「福」に通じるので、福を呼ぶ「福餅」として29日に餅つきをするところもあります。
季節の行事を親子でいっしょに学べる絵本形式の実用書です。ものごとの由来やしきたり、遊び方、箸の持ち方、衣服のたたみ方など、行事を子育てに役立てるコツを豊富なイラストで楽しく紹介。文化と愛情を伝える「行事育」が手軽に実践できます。
和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店) ほか多数。
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