「僕はもう一杯飲んで帰ります」その腕をつかんでしまった
食事が終わったのは21時。スマホを見ると、夫からLINEが20件も入っていた。「そろそろお開きにしましょう。今日は楽しかったです」と彼は会計をして、店を出た。佐和子さんは、「私はトイレに行くから、ではここで」と言い、個室に入ると、自分が濡れていることがわかった。
「彼の背中を見送ったから、不倫はないと思った。でも、このまま帰るのは嫌だと思い、外に出ると、彼は待っていてくれたんです。もう一杯飲んで帰るというから、つい腕をつかんでしまった。そしたら彼は私の手を握り返してくれたんです。あのときは、電撃が走ったと思いました」
彼は銀座のビジネスホテルに部屋を取っており、そこにもつれ込んだという。
「夫とは全然違う。やさしくてソフトで、すごくゆっくりしてくれる。初めて女の喜びというものを知りました。その日は終電で帰り、夫は寝ていた。夫が寝ている隣で、彼のことを思い出しながら、初めて一人でしたのですが、あのときに、夫に復讐したと思いましたね」
その後、彼とは1か月~2週間に1回程度、会う仲になっているという。
「彼もいいんですが、生活も考え方も違うし、やっぱりストーカーだけあって、ちょっと変なんですよ。最初に会ったときに、夫と離婚して彼と結婚しようと思いましたが、何かが違う。彼は自己完結しすぎているんです。彼とすることで夫のいいところもわかった。なので、しばらくはこの生活を続けようかなと思っています」
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。