コロナ禍に新たな道を選んだ女性たち#2 由貴さん(仮名・41歳女性)のケース
結婚3年目の由貴さんは、コロナ禍に突入してしばらくしてから離婚をした女性。4歳年上の夫は再婚で、由貴さんは初婚でした。
「夫から猛アプローチを受けて付き合い初めました。夫には前妻とのあいだに子どもがふたり。だけど、私自身は持病があるので妊娠や出産は望んでいなかったことから、夫婦だけで楽しく過ごせる結婚生活に憧れていたため、夫からのプロポーズに応じ、結婚を決めたんです」
コロナ禍前は「それなりに楽しかった毎日」
コロナ禍に入る前には、由貴さんは「それなりに毎日は楽しかった」と振り返ります。休日にはふたりで料理をしたり近場にドライブに行ったりして、喧嘩もほとんどせず、穏やかな日常を過ごしていました。しかし、コロナ禍に入ってから、なんとなく夫婦の関係がおかしくなり始めます。
「夫婦間にすきま風が吹き始めたのは、緊急事態宣言が出ても夫が飲みに行くのをやめなかったことが大きいです。私には持病があるので、感染するのが本当に怖いことから、コロナ禍に入ってすぐにそれまでの仕事を辞め、家でできる仕事を始めました。
夫はそんな私の事情を知っているのに、口では『他の人よりも気をつけないとね』と言いながら、飲み会にホイホイ出かけていくので、そんな夫に対して嫌悪感と恐怖を感じるようになってしまって…」
夫への不信感ばかりが募る日々。限界を迎えた妻がとった行動は…
コロナ禍になって最初のうちは、それでも我慢をしていたという由貴さん。しかし、国内の感染状況が悪くなるにつれて、夫に対して不信感ばかりが募ったと言います。
「妻がこれだけ気をつけているのに、夫がフラフラしていたら感染リスクを上げていますよね。本人に何度お願いしても『仕事の仲間に誘われたから』を理由に出かけてしまう。そんな夫を見ていて、だんだんと不満しか抱かなくなり、一緒に生活するのも怖いと思うようになってしまいました」
もともと男性に対して、強い口調でものを言えない由貴さんは、夫にも「お願い」という形で、外出を控えるよう話してきたそう。しかし、由貴さんの真剣さが夫には伝わらなかったのか、夫が外出を控えることはありませんでした。
「夫なりに『控えている』とは口では言うんですけど、私から見たら、全然自粛していない部類。そんな夫のせいで感染して、私が苦しい思いをすることになるなんて絶対にイヤだと思ってしまったし、もはやそんな夫に対しては愛情すらも消えてしまったんです」
夫が帰宅するたびに『ウイルスを持ち込んでいるんじゃないか』とビクビクするのに疲れ果てたある日、由貴さんは別居を提案。最初のうちは「別居なんて認めない」と夫の態度はかたくなだったそうですが、夫とこれ以上、生活をともにするのは苦痛でしかないと判断した由貴さんは、夫のいないうちに実家へと身を移しました。
「最初のうちは、夫も『帰ってこい』とか『俺が悪かった』とか言っていましたけれど、別居中の夫の生活を聞くと、以前よりも飲みに行ったり遊びに行ったりする頻度も増えていたんですよね。それで、なんかもう本当にこの人とは無理だなって。私に帰ってきてほしいなら、そのときくらいはちゃんと自粛して、行動で示してもらいたかったんですよ。
でも、夫はそれすらもしてくれなかった。コロナ禍は長期化しそうだから、それならば早い段階で離婚したほうがお互いのためなんじゃないかなって思って別れました」
すでに実家に身を寄せていたことから、離婚を決めたあとは一度も自宅に戻ることはなかった由貴さん。現在は、実家で働きながらコロナ禍が明けるのを静かに待っています。
パンデミックの最中、感染症への警戒意識が異なることによって男女間に決定的な溝が生まれた話は、珍しくありません。抱えている健康事情は個人によって異なるだけに、夫婦間であっても埋められない溝へと発展してしまうこともあるようです。
取材・文/並木まき
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