夫の「誠実で家族思い」な一面に惹かれたのに…
美紅さん(仮名・40歳女性)は、デザインの仕事をフリーランスでしています。過去に一度結婚をしていて、今の夫とは元夫との間に生まれた娘を連れての再婚です。夫は10歳年上の初婚。共通の知人が主催した飲み会で知り合いました。
「元夫が家庭をかえりみないタイプだったので、再婚するなら家族思いの人がいいってずっと思っていました。それで、今の夫は親やきょうだいをとても大事にしているところに惹かれて、結婚を決めたんですけど…」
交際期間を通して、夫は月に数回は実家に帰って家族で食事をしていることや、週に何度か親に電話をして近況を報告し合っている姿などを見て、「この人なら、家庭を大事にしそう」と判断したという美紅さん。しかし、実際に結婚をしてみると、大事なのは「自分の実家」だけで、妻や子ども、妻の実家に対しては思いやりすら感じられない態度の夫に幻滅したとのこと。
「自分の実家にはしょっちゅうお取り寄せグルメを送ったり、家電を買ってあげたりするのに、うちの実家にはお中元やお歳暮ですら知らん顔。年末年始などの長期休暇も、自分の実家には帰省しても、私の実家にはまったく行こうとしません。私が再婚だったので結婚式を挙げなかったこともあって、両家が顔を合わせる場面も少なく、夫のそんな本性は、結婚してしばらく経たないと見抜けませんでした…」
義実家は娘のことも大事にしてくれず…
そんな夫に対して、美紅さんは「大人なんだから、妻の実家とも最低限の付き合いはしてもらいたい」とお願いしたものの、夫からは「なぜ自分の実家を、大事にしてはいけないのか」と逆に詰められてしまい、話にならなかったそう。夫は「自分の母親が大事で何がおかしい。妻や妻の実家は、僕にとっては他人でしょう?」と平然と口にするので「この点については、将来的にもきっと夫とは分かり合えそうもない」と美紅さんは感じています。
「うちの両親も、そんな夫には内心では呆れているというか、残念に思っているはずです。私の負担になると思ってなのか、両親はこのことには触れてはきませんが…。
それに、義実家は娘のこともかわいがってくれないので、私はそこも気になっています。夫の子どもではないので仕方ないのかもしれませんが、夫への態度と私や娘への態度が明らかに異なるので、娘を夫の実家に連れて行くのも、私としてはためらってしまうのが本音です。
結婚するまで気付きませんでしたが、夫も義実家も、やたらに“血縁”を重視する価値観のようです。だから、義母は夫との子どもを不妊治療をしてでもつくるよう、露骨に私に対してプレッシャーをかけてくることもあります。そんな義母の発言についても、夫は『そうだよな。自分の子どもじゃないといろいろ難しいよな』なんて同調するものだから、娘がかわいそうでなりません」
このままの状況が続くようであれば、娘への影響も考えて、離婚という選択もあるかもしれないと口にする美紅さん。交際中に見ていた「家族思いの男性像」は、単に「人間関係において血縁を最も重視する男性」であったに過ぎなかったことに、落胆しているとのことでした。
こういった価値観は、実際に結婚してみないと明るみにならないことも多いため、状況は深刻化しがちです。もともとの価値観が深く関わってくるために、話し合いをしても改善が見込めないケースも多いことから、相手が変わるのを期待しても、残念ながら望み通りになることは少ないのが現実です。
取材・文/並木まき
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