「けんもほろろ」とは相談事などを無愛想に拒絶すること
「けんもほろろ」とは、人からの頼み事や相談事などを取りつくさまもない様子で、無愛想に拒絶することを指す言葉です。自分が拒絶された場合、拒絶する場合のいずれにおいても使うことができます。
言葉の由来は諸説ありますが、「けん」も「ほろろ」も、キジの鳴き声であるという説が知られています。
辞書に記載されている「けんもほろろ」の意味は、下記のとおりです。
【けんもほろろ】[形動]文[ナリ]《「けん」「ほろろ」はともに雉の鳴き声。あるいは「ほろ」は「母衣打ち」からか。また、「けん」は「けんどん(慳貪)」「けんつく(剣突)」の「けん」と掛ける》人の頼み事や相談事などを無愛想に拒絶するさま。取りつくしまもないさま。「けんもほろろな答え」「けんもほろろに断られる」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「けん」も「ほろろ」もキジの鳴き声といわれる
「けん」も「ほろろ」も、鳥のキジの鳴き声の擬声語だといわれています。キジの鳴き声はややハスキーで、遠くまで響く点が特徴です。それがつっけんどんに聞こえることから、キジの鳴き声の「けん」と「ほろろ」を重ねた慣用句が、頼み事などを冷たく拒絶する意味をあらわすようになったというのが定説です。
また、キジの鳴き声と、思いやりに欠けるという意味の「慳貪(けんどん)」ととげとげしく叱る意味の「剣突(けんつく)」の「けん」を掛けた、言葉遊びという説もあります。
「ほろろ」は鳥の羽音という説も
「ほろろ」は、キジが飛び立つ時の羽音をあらわすという説もあるようです。
また、キジなどが翼を激しくはばたかせて音を立てる「母衣打ち(ほろうち)」からきているという解釈もあります。キジの「母衣打ち」は、繁殖期にオスが縄張り争いのためにするもので、「ケーン」という独特な鳴き声を出した後に、両方の羽をバタバタとはばたかせるというものです。
室松時代には既に使われていたことが窺える
「けんもほろろ」は、室町時代末期の書物に既に登場し、その当時から使われていたことが窺えます。
1593年に出された『天草本伊曽保物語(あまくさぼんいそほものがたり)』は、イエズス会士がイソップ物語を日本語に訳し、ローマ字で書いた書物です。この物語の「イソポの生涯の事」の中に、「けんもほろろ」という表現が出てきます。
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【例文付き】「けんもほろろ」の使い方
「けんもほろろ」は、それだけで頼み事や相談をあっさりと断られるさまをあらわすことができます。その場合は「けんもほろろだった」という使い方をしましょう。さらに、「けんもほろろに」とすることで、より詳しく拒絶された状況を説明することも可能です。
自分の依頼があっけなく拒絶されたケースでも、逆に自分が断るケースでも使えます。依頼事に対して内容を吟味した上で判断するのではなく、話もろくに聞かず拒絶するというイメージです。
ここからは、「けんもほろろ」を使った例文をご紹介します。