瓦斯とは気体・燃料用の気体・霧などを表す言葉
瓦斯にはいくつかの意味がありますが、基本的には気体を表す言葉です。
【瓦斯:がす】
気体。燃料用の気体。特に、都市ガスのこと。
「毒ガス」の略。濃い霧。ガソリンのこと。
「ガス焜炉(こんろ)」の略。「ガス糸」の略。
おなら。屁(へ)。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
瓦斯は気体全般を総称する言葉である他に、都市ガスなどの燃料用の気体、毒性のある気体、ガソリン、あたりが見えなくなるほどの濃い霧、おならなどの意味があります。
さらには瓦斯焜炉やガス糸の略称でもあります。瓦斯は外来語であるため、基本的にはカタカナで表すのが一般的です。
■瓦斯の読み方は「ガス」
瓦斯の読み方は「ガス」です。「瓦」は音読みが「が」で訓読みが「かわら」ですので、音読みの「が」での当て字と言えるでしょう。「斯」は音読みが「し」で、訓読みが「これ」「この」「かく」となっていて、「す」という読み方はありません。
瓦斯が難読漢字となっているのは当て字であり、漢字の意味と語句とが無関係であることと、「斯」を「す」と読ませていることによると言えるでしょう。
瓦斯の語源
瓦斯の語源を探っていくことは科学の歴史を遡っていくことにも通じます。瓦斯は科学の発達によって生まれた概念だからです。ここでは瓦斯の語源を2段階に分けて、くわしく解説しましょう。
最初の段階は「ガス」のもとになった「gas」という言葉が生まれた経緯について、続いて「gas」という言葉が日本に入ってきて、「瓦斯」という当て字がつけられた状況についてです。
ガスの語源はギリシア語の「カオス」
ガスという概念を作ったのはベルギーの化学者フォン・ヘルモント(1577年~1644年)です。炭を燃やした時に出る二酸化炭素に対し、大気とは違う性質を持つものであるとして、「gas sylvestre」(森林のガス)と名付けました。
また、ヘルモントは「gas sylvestre」が発酵によって生じる気体と同じであることを突きとめました。ガスという言葉は、ギリシア語で混沌を意味する「カオス(Chaos)」が語源で、カオスをベルギー、フランダース地方の言葉で発音したのがガスとされています。
瓦斯が広まったのは明治初期の滑稽本
ガスが日本に伝わって、初めてガス灯が灯ったのは1871年、大阪造幣局でした。その翌年の1872年に横浜の馬車道にガス灯が灯り、同年、横浜瓦斯会社が設立されています。つまり1872年には「瓦斯」という言葉が使われていたのです。
文章で「瓦斯」という言葉が登場するのは1870年から1876年にかけて発行された滑稽本『西洋道中膝栗毛』の中でした。つまり文明開化が始まった明治初期にガスが一般化して、「瓦斯」と表記されるようになったということでしょう。
瓦斯の使い方と例文
瓦斯は難読漢字にあたり、「ガス」と表記されるのが一般的です。積極的にこの表記を使うことはあまりないかもしれませんが、この表記が使われている語句もいくつかあります。
【例文】
・Jリーグのサッカーでチーム名を「瓦斯」、サポーターを「瓦斯サポ」と呼んでいるところがあります。この呼び方は前身がガス会社のサッカー部だった名残です。
・不動産屋の賃貸住宅の資料に「瓦斯・水道・電気完備」と書いてあり、一瞬、読めずに焦りました。
■瓦斯は社名でも数多く使われている
瓦斯という言葉がよく登場するのはガスに関係する会社の社名です。明治時代に設立された歴史のあるガス会社は「瓦斯」と表記されているケースがかなりあります。日本初のガス会社となった横浜瓦斯株式会社もそうです。
通常はガス会社という表記されている企業でも、登記上の商号が「瓦斯会社」であるところがかなりあると覚えておくといいでしょう。
瓦斯が伝われている語句3つ
「瓦斯」という漢字が使われている主な語句は次の3つです。
・瓦斯糸
・瓦斯焜炉
・瓦斯灯
この3つの語句は瓦斯という言葉と同様に、明治初期に生まれた新しい技術で誕生した製品の名称という共通点があります。デジタル大辞泉によると、瓦斯糸と瓦斯焜炉はともに「瓦斯」と略されることもあります。それぞれの語句について詳しく説明しましょう。
瓦斯糸
瓦斯糸とは糸の表面にできる毛羽だった部分や雑物を、ガスの炎を使用して焼き取って滑らかにしたものです。ガスの炎を使用するところから、この名前がつきました。
瓦斯糸の原料である綿糸の表面のろう質がガスの炎の熱によって柔らかくなると同時に、繊維の結合の強度も増す効果があります。瓦斯糸は薩摩絣などの織物で使用される他に、イカ釣りの釣り糸でも使用されています。