反対に卑下するのもよくありません。ダメダメ人間をアピールすることで謙虚にふるまっているつもりかもしれませんが、初めからダメなことをアピールしても「使えないな」や「迷惑をかけられたら嫌だな」と思われてしまうのがせいぜいでしょう。
心理学でアンダードッグ効果(負け犬効果)と呼ばれるものがあります。弱い立場の人や不利な人に対して、気持ちが動かされることにより相手を思わず応援したくなる効果のことです。自虐がこの効果を引き出すこともありますが、この心理テクニックには、一度相手からよく思われるという大前提が必要です。最初から過酷な生い立ちや苦労話などでは、引かれてしまいます。また、苦手を並べ立てるようなマイナスイメージだけではやる気がないと認定されてしまいがちなので気を付けたいですね。自己紹介では、前向きな姿勢を示し、最近の出来事や興味のあることをさらっと手短かに話すだけで十分です。
この人は敵ではないと思ってもらうことが一番
たいていの職場では、特に知識やスキルに長けた人を求めてはおらず、一緒に働くうえで、仲間としてとけこみ信頼し合える人を望んでいます。自慢も自虐も逆効果になりやすいですし、いつもと違う自分を演じても後で苦しくなるだけです。素直が一番。肩ひじ張らず飾らない自分を見せましょう。この人は敵ではないと思ってもらうことが一番です。
そして、日々の挨拶も大切です。その日の第一印象を決めるからです。
「今日、あの人機嫌悪そうかな?」などと気を遣われるようでは問題です。「いつも気持ちよく挨拶してくれる」と認識されているほうが、周りからの信頼も得やすく、何かのときに引き立ててもらえる機会も増えるでしょう。
こちらは挨拶をしているのに、相手から挨拶が返ってこないという相談もよく受けます。相手に聞こえる声とタイミングで挨拶をしているかを振り返り、もし問題がないようなら、返事をしてくれない人に対しては、あえて名前を呼んで「○○さん、おはようございます」と近くに行って挨拶しましょう。人は、自分の意識の向いていることしか認識しておらず、聞こえていないこともあります。実際に、ある会社で、挨拶を返してくれないと相談に来た本人が、オフィスに入ってくる際に、誰とも目を合わせず伏し目がちに、口の中でもごもごと「おはようございます」とつぶやいていただけのこともありました。挨拶は、相手に届いてこそ効果を発揮しますので、こちらから先に相手にはっきりわかるようにしたいですね。
新しい出会いの季節、挨拶を通じ、精神的な居場所と安心できる人間関係をつくってくださるとうれしいです。
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日本メンタルアップ支援機構 代表理事
大野 萌子(おおの もえこ)
法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。
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