感染症の蔓延前は外出禁止令、感染症蔓延後は外出代行…
真奈実さんは、義父が他界したことをきっかけに義母と二世帯住宅で同居。“二世帯”とは名ばかりで、表向きは玄関がふたつあるものの、水まわりも共用で、実質的には同居生活だったそうです。
「義父がいなくなった頃から、義母の性格はとんでもなくキツくなりました。それまでも口が悪く、意地の悪いところがあるとはわかっていましたが、それを止める義父がいなくなったことで、どんどんひどくなったのです。
感染症が蔓延する前には、私は外出禁止を言い渡されていて、自由に外出もできない毎日。義母の言い分は、“外に自由に出て、不倫でもされたら困るから”でしたが、意味不明でしたね。買い物は週に2回までで1時間以内、もちろん友人と会うのも禁止。そんな状況を夫になんとかしてもらいたいと相談するも、『俺はオフクロには何も言えない』と頼りにならない状態が続いていました」
そうこうしているうちに、世間は感染症パンデミックに突入。感染が怖い義母は、今度は真奈実さんに、外出が必要な用事はすべて真奈実さんがやるよう、言い渡してきたとのことです。
「ちょっとコンビニに支払いとか、郵便物をポストに出しに行くとか、あとはゴミ出しも代行させられましたね。とにかく義母は家から出ず、私に全てを押し付けてきました。まぁ、高齢の義母に感染されても嫌だったので、私もおとなしく言うことを聞いていましたけど…」
あまりにも身勝手な要求に我慢の限界!妻が出した結論は?
感染症の蔓延状況が少し落ち着いてきて、世間が日常を取り戻そうとし始めた頃には、義母の理不尽な要求はかなりエスカレート。すでに外出代行だけでなく、日常のさまざまな家事を真奈実さんがするような状況で、「まるで無料の家政婦。しかも、とんでもなくこき使われている家政婦です」という状況にまで悪化してしまいました。
「これ以上、そんな義母との生活はさすがに無理だと思い、夫に離婚をするか義母と別居をするかの二択で迫りました。義母に対して何も言えない夫は、最初は義母から離れるなんて考えられなかったようですが、私が本気で離婚も視野に入れているとわかり、そこから態度が変わりました」
その後、義母に自分たち夫婦は家を出ると告げると、義母は怒り狂い、真奈実さんだけでなく息子である夫のことも強く罵り始めたそう。しかし、そこにひるむことなく「もう決めたことですから」と真奈実さんは義母に伝え、予定通りに引っ越しを完了させ、今に至ります。
「住んでいた家から電車で2つ隣の駅の近くに、賃貸住宅を借りました。正直、二世帯住宅に住んでいた頃のほうが経済的にはラクでしたが、あの地獄の日々には戻りたくありません。今は夫も義母と絶縁状態になっていますが、私はこれでよかったんだと思うようにしています。
義母が親戚中に私たち夫婦の悪口を言っているので、今後、親戚関係にも多少の影響は出そうですが、それでもやっぱり、平穏な生活を取り戻せたことのほうが私にとっては大切です」
身勝手な義母のせいで、本来ならば失わなくてよかった親族関係に影響が出ることもあります。しかし、何よりも大切なのは、自分が穏やかに暮らせる環境であるのは間違いありません。代償を払ってでも離れたかったほどの義母との生活は、私たちが想像するよりもずっと悲惨な日々であったのではないでしょうか。
取材・文/並木まき