実感としては、階段を下るより上るほうがキツく感じます。ところが、つらく感じる階段上りよりも、ラクに感じる階段下りのほうが、健康や美容の要となる大腿四頭筋を鍛える効果があるのです。
今回は、その理由と効果的な階段の使い方をご説明します。
まず、階段の上りと下りでは「筋肉の収縮の仕方」が異なります。
【目次】
階段の上りと下りで使う筋肉が違う
筋肉の収縮の仕方は、大きく2つに分けられます。1つは重りを持ち上げるときに筋肉が縮みながら力を発揮するもの、もう1つは重りを下ろしていくときに筋肉が伸ばされながら力を発揮するものです。
前者を「コンセントリックな収縮(短縮性収縮)」、後者を「エキセントリックな収縮(伸張性収縮)」と呼びます。階段昇降では、上りで下半身の筋肉がコンセントリックな収縮をし、下りでエキセントリックな収縮をします。
筋トレではこれまで、コンセントリックな収縮に重点が置かれてきました。しかし近年、オーストラリア・エディスコーワン大学の野坂和則教授らの研究によって、コンセントリックな収縮よりもエキセントリックな収縮のほうが筋肉を鍛える効果が高いことが明らかになってきたのです。
階段下りのほうが大腿四頭筋を鍛える効果が高い理由は、もう1つあります。それは両者で使う筋肉が異なることです。
階段を上る際には、上段側にある足の膝関節と股関節が曲がり、両関節が伸びることで体が持ち上がります。膝を伸ばす筋肉は大腿四頭筋、股関節を伸ばす筋肉はお尻の大殿筋です。上りではこの2つの筋肉が協働して体を持ち上げるため、負荷が分散します。
これに対して、階段の下りでは上段側にある膝だけが曲がり、大腿四頭筋のみで体を支えることになります。膝の曲がる角度も下りのほうが大きいので、大腿四頭筋により大きな負荷がかかります。
これらの理由から、階段下りは最も衰えやすい大腿四頭筋を鍛える効果的な運動というわけです。
階段下りの効果はこれにとどまらず、体の支柱である骨を鍛える効果もあります。
筋肉量も骨量も、基本的には加齢に伴って減少していきますが、骨は筋肉と違って、高齢になると増やすことがほとんどできません。骨量が落ちるとちょっとした衝撃でも骨折しやすくなり、しかもなかなか回復しません。骨は弱くなってもそれに気付かないため、厄介です。30~40代でも少しずつ骨量は落ちているので、将来のために骨を鍛えることが大切です。
骨は、骨を破壊する破骨細胞と、骨をつくる骨芽細胞の両者が働くことで、日々新しく丈夫な骨へと新陳代謝が行われます。