2年間の結婚生活は、義母の嫌がらせが理由で離婚
40代の百香さん(仮名)は、30代後半で結婚。結婚相手はひと回り年上で、すでに夫が建てていた二世帯住宅で結婚生活をスタートさせました。しかし義実家とはドア1枚でしか仕切られておらず、合鍵を持っていた義母は百香さんの生活圏に入り浸り、朝から晩まで“嫁いびり”を続けたとのこと。そんな生活に限界を感じ、2年間の結婚生活を終えたのは2年以上も前のことです。
「結婚生活は短かったので、夫とのいい思い出も皆無。結婚と同時に二世帯住宅で生活し、水まわりも別々だからそれなら大丈夫かなって同居を決断したのに、実際には義母はずっと私たちの生活圏にいて、飲み会が好きな夫はほとんど家にいないし、義母はやりたい放題でした」
食事を作るのは百香さんの担当でしたが、義母が作ったものを「おいしい」と言ってくれたことは一度もなく、毎回「味付けがおかしい」「こんなものを食べさせられる息子がかわいそう」などと文句を口にしていたとのこと。さらに「どうせあなたは味覚音痴だから」と、義母の冷蔵庫にある賞味期限切れの食品を百香さんに食べるよう迫るなど、嫌がらせの数々は挙げればキリがないと言います。
百香さんが独身時代から大事に集めていた食器類も「趣味が悪い」と義母に勝手に捨てられたほか、洋服やバッグも高価なものを勝手に処分してしまうなど、家事や料理だけでなく百香さんのプライベートにも介入してきたそう。友人と会うのも義母の許可制で、百香さんは「私の自由は、何ひとつ認められていなかった気がする」と当時を振り返ります。
「夫がマザコンで。義母が私に意地悪をしていても見て見ぬ振りをするし、私が夫になんとかしてもらいたいと頼んでも『お袋は俺には嫌がらせしないから、嫌われる君に問題がある』と言ってしまう人でした。そんな生活だったので、結婚生活は長くは続かず。私が心の不調を抱えるようになり、弁護士を通して話し合って離婚しました」
離婚後2年を経過しても消えない心の傷
「離婚する直前は、友だちからも“別人みたいに顔色が悪い”、“いつも何かに怯えているような顔をしている”と言われていたから、多分そうだったんだと思います。離婚が成立したときは本当にホッとして、やっと自由がない生活から解放されるんだ!って嬉しかったです。
でも…、自分でも予想外だったんですけど離婚してしばらく経っても、なかなか心の傷が癒えなくて。義母から嫌がらせをされる夢をしょっちゅう見るから睡眠が浅くなっているし、仕事をしていて義母と似た顔の人を見ると、体が硬直して冷や汗が止まらなくなることもあります。1年くらいはまぁ仕方ないのかなって諦めていましたが、離婚して2年経っても状況があまり改善しなくて。心療内科にも行って薬ももらっていますが、なかなか良くならないんです」
結婚生活が2年だったことから、離婚して2年も経てば元気になれるだろうと考えていたという百香さん。しかし離婚後2年以上が経った今も、当時の傷が癒えず、本来の自分を取り戻せていないことに苦しんでいます。
「時間が解決するしかないんだろうなって思うので、今は焦らないようにしています。私はもともと自分のことをメンタルが強いほうだと思ってきましたが、実際には違ったみたいです。あの頃、私は自分を過信していて“このくらいなら、まだ我慢できる”って頑張ってしまっていましたが、今思えば頑張る必要なんてなかったんですよね。相手が非常識な嫌がらせをしてきているのに我慢を重ねたところで、エスカレートするだけ。あの頃の自分にアドバイスをするなら、我慢なんてせず『逃げていいんだよ』と言いたいです」
「トラウマ」「PTSD」といった言葉を目にする機会も増えています。義実家や義母に限らず、極端ないじめや嫌がらせを受けてしまえば、心に深い傷が残っても無理はありません。義実家問題は家族の問題として扱われることが多く、本格的に深刻化するまで第三者が介入しにくいのも確か。しかし義母からの嫌がらせを受ける妻にとっては「離婚をすれば全て解決する」といった単純な話でないことは間違いありません。
取材・文/並木まき