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2023.02.20

キューバ出身の現代アーティスト・マベル ポブレットの国内初個展が開催

キューバ生まれの注目の現代アーティスト・マベル ポブレットの個展が、この春シャネル・ネクサス・ホールでスタート。本展のために新たに制作された作品をはじめ、水と海をテーマにした観るものを惹きつける連作やインスタレーションが並びます。

新進気鋭の現代アーティストの国内初個展に注目

幅広い手法で多彩な制作活動を行い、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で作品が展示されるなど、注目を集めているマベル ポブレット。彼女の国内初となる個展「WHERE OCEANS MEET」が、写真展を中心にユニークな展覧会を実施し続けているシャネル・ネクサス・ホールにて開催されます。

アーティスト紹介:マベル ポブレット(Mabel Poblet)

円形のアート作品の後ろにしゃがむマベル ポブレットの写真©Eduardo Rodriguez

現代アーティスト。1986年キューバ・シエンフエゴス生まれ。キューバの現代アート・シーンにおける新星のひとりとして高く評価され、ミクストメディアおよび、写真、ビデオ、キネティックアート、パフォーマンス、パブリックアートなど、多彩な技法・手段を用いて創作。その作品は、フィデル・カストロ政権下のキューバで育った若い女性としてのアイデンティティや、世界との関係といった、彼女の人生経験と直接的に関係している。37歳にしてすでに世界の主要な芸術祭に参加し、各国で開催した個展は20以上、さらに150以上のグループ展に出品。2017年には、第57回ヴェネチア・ビエンナーレのキューバ館でインスタレーション作品《Scale of Values》(〈Homeland〉シリーズ)を展示している。

彼女の作品は、タンパ美術館やフォンタナルス=シスネロス美術財団(CIFO)、ラテンアメリカ美術館(MOLA)、クライスラー美術館などに収蔵されているほか、最近ではパブリックアート作品《Genesis》が米国ノースカロライナ州のスティーブンタンガー舞台芸術センターに落成した。

3月1日から開催「WHERE OCEANS MEET」マベル ポブレット展

本展は、ポブレットが心に抱き続けてきた〝水〟そして〝海〟がテーマ。海は人々を隔てると同時に結びつけ、より親密にしてくれる要素。文化的・政治的な事情によって個々の体験は異なるものの、島に生きる人々が旅をするとき彼らを運ぶのは海であるとして、さまざまな形で水と海を表現。たとえば、現代のキューバ社会においてもごく身近にあり、ポブレットの作品でも重要な位置を占めている移民と、それに対してときには救い、またときには災いをもたらす海の本質的な役割について観察し、語り、問いかけます。

おもな展示作品

〈My Autumn〉

存在の儚さという概念と、それでも成長し続ける人間の、ある意味では無限の道について考察を行う〈My Autumn〉シリーズ。ピラミッド型の折り紙を使い、その天に届こうとしているかのように上へと向かう構造により、無限という概念を強調。ときに螺旋のように見える人生が連作によって再現されています。

ピラミッド型の折り紙が円形に並べられ、水の中に立つ人のような姿が浮かび上がる作品の写真PRAYERS 3, 2022 / My Autumn series

ピラミッド型の折り紙が隙間なく並べられた作品のディテール写真Details for the work EPHEMERAL, 2022 / My Autumn series 
▲〈My Autumn〉シリーズは無数のピラミッド型の折り紙で構成されている。

〈Homeland〉

〈Homeland〉は、これまでの作品でも扱ってきた〝移民〟を、個人的な視点からではなく集合的な現象として捉えたシリーズ。自らの起源や祖国に対して抱く移民たちの思慕の念だけでなく、国家意識や政治的思考についても考察されています。海を断片化したイメージは、ある場所から別の場所へ移動するときに直面する存在の脆さや、困難のメタファーとして機能しているもの。

青いキャンバス一面に小さな白い花がピン留めされた作品のディテール写真Details for the work NON-DUALITY, 2022 / Homeland series
▲海の多義性を反映した作品。青いキャンバスにピン留めされた何百もの小さな花は、海に捧げる無数の供物のようであり、航海半ばで命を落とした者たちを追悼する花輪のようでもある。

鏡と写真の断片が吊るされた糸が何本も下がっている作品の写真ISLAS, 2022 / Homeland series
▲鏡と写真の断片をつなげて吊るされた糸の中を歩くことで心癒される、没入体験の場として制作されている。

〈Travel Diary〉

〝旅〟は新しい人々と出会ったり、見知らぬ場所を訪れたりするための手段というだけでなく、日常生活を含め、より広い意味でさまざまな方法で世界とつながり、経験するための方法でもある。このような考え方により、〈Travel Diary〉シリーズは、アーティスト自身が旅で撮影した写真を用いて制作されました。それらの写真イメージは、あるときは小さく分解され、またあるときは完全に連結・統合されて、まったく新しいイメージを構成する要素となっています。

写真の断片が円形に並べられ、地面や赤い花のようなものが浮かび上がる作品の写真SECRET GARDEN, 2022 / Travel Diary series

建物や空が映った別々の写真がつなぎ合わされピンで留められた作品の写真Details for the work CITY MAZE, 2022 / Travel Diary series
▲〈Travel Diary〉シリーズは、アーティスト自身の旅の写真を用いて制作されたサイズの異なる7つの円形作品で構成される。

〈Buoyancy〉

〈Buoyancy〉シリーズの《SUBLIMATION》でポブレットは、詩情性に根ざした人の存在に対する考えを明らかにするため、表現媒体としてビデオ・プロジェクションを使用しました。その意図は、バーチャルな体験を通して人生をとりまく状況を振り返るための環境を作り出すこと。彼女はこのシリーズを通して、不動性(たとえば、もがいても動くことができない状態)や、思考、身体、経験などの断片化という概念を追求することで、人間の知覚プロセスを探求しています。

魚眼レンズで撮ったかのような空の中心に円形の水の塊のようなものがあり、その中心に水に潜る人の姿が見える作品の写真SUBLIMATION, 2022 / Buoyancy series

自身の経験に基づく作品を通してキューバ社会と今日の世界を語り、観る者に疑問を投げかけるマベル ポブレット。水と海をテーマにした彼女の作品群を一度に見られる貴重な機会を、ぜひお見逃しなく。

【開催概要】
「WHERE OCEANS MEET」マベル ポブレット展
会期:2023年3月1日 (水) 〜 4月2日 (日) 会期中無休・入場無料・予約不要
開館時間:11:00〜19:00 (最終入場18:30)
会場:シャネル・ネクサス・ホール 東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
主催:シャネル合同会社
お問合せ:シャネル・ネクサス・ホール事務局 Tel: 03-6386-3071
※本展は、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2023に巡回予定です。

シャネル・ネクサス・ホール

メイン・アイキャッチ画像:WANDERING, 2022/ My Autumn series
All photos courtesy of Alejandro Gonzales

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