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LIFESTYLE シングルマザー・再婚

2024.03.25

最終回!ついに来て欲しくなかった母と別れの日が…【39歳子連れ再婚の365日vol.52】

 

vol.52をもってSeason2「39歳、子連れ再婚の365日」最終回となります。4月からはSeson3がスタートします。息子・蓮が中学生になり、子育てが楽になるのか。母が亡くなり残された父との生活や、夫・臣斗くんとの夫婦生活や義母とのギクシャクした関係などアラフォー世代が直面する毎日をお届けします。【毎週月曜日19時更新】

登場人物
あん(私)…メーカー勤務のシングルマザー。8年前に離婚し、実家に出戻り。40歳。
…生意気盛りの小学生。12歳。
臣斗くん…あんの会社の後輩・海斗くんの大学の同級生で再婚相手。35歳。
結衣…蓮の彼女。4年生からS塾に通い中学は女子校へ進学。
お母様…臣斗の母。英語教師で蓮の中学受験を強力プッシュ。
蒼先生…蓮の家庭教師で東大生。

【前回までの話】
シングルマザー歴8年を経て、事実婚という形で再婚に踏み切ったあん。義母から中学受験を進められるもあんは反対派でいたが、息子・蓮の前向きな気持ちと、夫・臣斗のサポートもあり中受へ臨むことを決意。その後、あんは臣斗とのセックスレスに気づいてしまう。一方、蓮は夏休みに原因不明の夜泣きを始めるも理由が分からないまま1週間で止まる。そんな蓮を支える中、あんは体調を崩し妊娠を疑うが逆流性食道炎と診断される。しかし、それがきっかけで夫婦間のズレに気づいてしまう。9月に入り週4で塾に通う中、連が塾講師に暴言を吐かれていたことが判明。謝罪を受けるもあんは中受をさせたことへの後悔が膨らむ。そんな中、母の定期検診で癌の再発を知る。また、事実婚をしていることを知らない家庭教師から突然の告白を受けるも、あんは丁重にお断りをする。直前期になってもなかなか偏差値の上がらない蓮に、併願校や勉強法を押し付けてきた義母と再び喧嘩。冬季講習・正月特訓を乗り越え、1月校では3戦2勝、2月校では第一志望が不合格になるも第三志望の学校に合格し入学の意思を固める。それと同時に、母が緊急搬送され入院となる。

前回の話▶︎母の病は日に日に悪化し、看護師からついに…【39歳子連れ再婚の365日vol.51】

最初から読む▶︎『39歳、子連れ再婚の365日』

Season1から読む▶︎『シングルマザーの恋愛』

母の最後に今まで我慢してきた涙が止めどなく溢れ出てきた

こんにちは。シングルマザー歴8年目にして再婚に踏み切ったあおいあんです。

前回は、母の病状が思わしくなく、病院から緩和ケアを勧められたところまでお話ししました。

私、蓮、父と臣斗くん、4人で母のお見舞いに行きました。父は緩和ケアが始める前にお見舞いへ行きたいと言うも、看護師に伝えると始めるなら早い方がいいと勧められました。母にも確認をしたところ緩和ケアを受けたいと言うのでその夜から始めてもらいました。会話の返事がかろうじてできていた母ですが、緩和ケアが始まると全く話せなくなりました。それは薬のせいか、母の体力が限界なのか、もうこの時点では何が原因だか分からないとも言われました。

蓮は母の状態を見て涙を我慢しつつ、一生懸命髪の毛を撫でたり、腕をさすったりしていました。臣斗くんも一生懸命さすってる蓮の背中をさすり母へ話しかけていました。そんな中でも父は少し離れたところに座り何もせずぼーっとしていました。

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おばあちゃんお話できないけど、蓮の声は聞こえているから英語の塾のお話してあげたら?

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うん。結衣ちゃんと同じ英語塾へ行くことにしたよ。S塾みたいに点数で分けられないから一緒のクラスで勉強できるんだ。今は一緒に電車に乗って行ってるよ。今度英語でお手紙書いてこようか?

もちろん母から返事はありません。口は微妙に動いているのですが、声にならないみたいで、表情も変わらず、ただただ天井を見ている。そこにいたみんなが、多分もう長くないんだとチラッと頭をよぎったと思う。

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宿題が多くてビックリしたよね。でも中学生になるから、やらなかったら塾を辞めるっていうルールも作ったんだよね。ちゃんと責任もって行動していかないとね

当たり前だけど、毎日お見舞いに来ていないみんなは母の状態を見て暗い表情だった。この1週間で本当に毎日毎日悪化の一途だったから。でも私は母にみんなの笑顔を見せてあげたかったから明るく努めた。

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そう言えばママ、聞いてよ!パパなんか何度注意しても扉は開けっぱなしだし、洗濯物はカゴに入ってないし、3歩歩くと忘れるニワトリなのかなと思ったよ

蓮も流石にこれには笑いが堪えられず、釣られてみんなも笑った。その後も蓮が学校の話や塾の話をしてくれた。みんな一気にいなくなると寂しいからと、私以外の人は先に帰ることを最初に決めたいた。

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おばあちゃん、また日曜日来るからね。またね~

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臣斗

日曜日、僕も蓮と一緒に来ますね

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明日会社午前休とったから

みんなそれぞれお別れを言うと病室を出て行った。私は母の隣で蓮が撫で回してクシャクシャにした髪をくしでとかしながら

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みんなに会えてよかったね。ちょっとうるさいけどね

また母の口が微妙に動いていたが声は聞こえなかった。入学式に何着て行こうかな?そういえば時計は明日届くんだ、パパはなんであんなに優柔不断なの?声は聞こえないんだけど母としばらく会話をした。

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夕飯の準備があるからそろそろ帰るね。また明日来るからね

いつものように病室を出ようとした時、それまで顔を天井の方にしか向けられなかった母が出て行く私の方へ顔をほんの少し傾けた。

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大丈夫。また明日来るよ

看護師に帰ることを伝え病院を出る。もう少し一緒にいて欲しかったのかな?と後ろ髪を引かれる思いだったが、家には夕飯を待つ蓮と父がいる。体がふたつあればいいのになとぼんやりしながら帰ると、男子2人はリビングでやりたい放題の散らかりようだった。

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今から夕飯作るから自分のもの片付けて!

父は渋々片付け、蓮は「はーい」と口だけでYouTubeを見続けた。夕飯もお風呂も終わり、もう食べられないけど母のお弁当の用意をして寝た。

次の日の朝、蓮を学校へ出す準備をしていると父が慌ててやって来て

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あん、早く病院へ

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ママに何かあったの?

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病院から電話で、今すぐ来てくださいって

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俺も行く!

母の生死の境をこの年齢で見せていいのだろうか?一瞬戸惑ってしまったが、今は1秒でも早く母の元へ行きたい。とりあえず蓮も一緒に行くことにした。状況を見て病室に入れればいいことだ。

私たちはタクシーで急いだ。病院に着くと、誰よりも先頭を切って小走りで父が病室へと向かった。蓮をひとまずナースステーションで待機させ、病室へ行ってみるとちょうど亡くなった瞬間だった。間に合わなかった。先生から死亡時刻が伝えられ、看護師が母についた管を全て取ってくれた。

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蓮を連れて来なさい

父はすぐに言った。私はナースステーションに戻り蓮の手を引いた。

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蓮おいで。おばあちゃん今亡くなったって。おばあちゃんのお顔触ってあげて

蓮は泣くのを我慢しながら、まだ温かい母の頬に自分の頬をくっつけた。

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おばあちゃん、ありがとう。大好きだよ

と何度も口にし、ついに涙が溢れ出した。涙は止まらずヒックヒックと呼吸が苦しくなるまで泣いた。

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蓮、一度こっちへおいで。ママとおばあちゃんを2人きりにさせてあげよう

そう言うと2人は病室から出て行った。私は今まで我慢していた分の涙が止めどなく流れた。

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ママ、産んでくれてありがとう。ママ、大好きだよ

13歳の息子と変わらない言葉しか出てこなかった。まだ温かい母を抱きしめ、まだ母はここにいて届くんじゃないかと思い、私も何度も何度も同じ言葉を言い続けた。

しばらくすると扉が開き、蓮と父が入ってきた。

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パパもママにお別れ言う?

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大丈夫だ。それより看護師さんから話があるみたいだから一緒に来てくれ

蓮は母のそばに行き手を握っていた。私は蓮に話を聞きに行くから待ってるように伝えた。看護師からはこの後の流れが伝えられた。父は病室には戻らず、知り合いの葬儀屋さんに電話しに行った。私は病室に戻ると、蓮がくしで母の髪の毛をとかしていた。

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まだあったかいんだよ。ねぇ触ってみて

私はまた涙が止まらず、蓮と一緒に母の手を握り「おばあちゃん頑張ってくれたね」と一緒に泣いた。しばらくすると看護師数名が来て、身体を綺麗にするので病室を出るように言われた。私たちは朝食を食べていなかったので、売店へ向かった。こんな時でもお腹はちゃんと空くんだな、なんて泣きすぎて空っぽになった私はそんなことくらいしか頭に浮かばなかった。
父が長電話から戻ってくると、昼過ぎには葬儀屋が迎えに来て家に連れて帰れることになった。病室に戻ると看護師たちも作業を終えるところだった。ひとりの看護師が「毎日お弁当大変だったと思いますが、病院を出た後もご葬儀だったり忙しいと思います。倒れないようしっかり寝て、食べてくださいね」と私に言葉をかけてくれた。
私は「ありがとうございます」とまた泣いてしまった。退院の準備をし、葬儀屋の車とタクシーに別れて家族4人で家に着いた。突然の知らせだったので、まずは部屋を片付け母を迎え入れた。

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おばあちゃん、おかえり

そっと額に手を当てた蓮は、私の方を見た。私は黙って頷き、私も母の額に手を当てた。

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もう冷たくなっちゃったね。寂しいね。おばあちゃんはもっともっと生きたかったよね。蓮の入学祝いの時計も買いに行きたかったし、入学式も見に行きたかったんじゃないかな。蓮、生きたかったおばあちゃんの分も、一生懸命生きて行こうね

蓮はコクンと頷いた。父は相変わらず忙しそうに葬儀屋さんと話をしている。蓮の卒業式の次の日にお通夜をし、その次の日に告別式となった。
あっと言う間に母の姿形がなくなってしまう。もっと教えて欲しいことも、聞きたいこともたくさんあったな。これから本物の反抗期を迎える蓮。そんな時、母親はどう接してあげればいいの?更年期はどうやってやり過ごしたの?生きてる時はいつでも聞けるから疑問には思わなかったことも、聞けなくなると次から次に思い浮かんでくる。
母と過ごした40年間。厳しくて怖かったけど、その厳しさは愛情からなんだと理解できたのは大人になってからだった。高校生の頃、私は母のような厳しい母親にはならないと決めたけど、それもアリだなと今なら思える。
もっともっと一緒にいたかった。もっともっと親孝行したかった。感謝と後悔が交互に押し寄せてくる。
今は母を目の前にして泣くことしかできないけど、これから父と蓮、そして臣斗くんと新たな生活が始まる。明日からは前を向いて、母の分も精一杯生きていかなきゃ。

さくらと病室

(c) Adobe Stock

メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock

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あおいあん

契約社員でメーカー勤務、現在38歳のシングルマザー。高学年になりちょっと生意気になった10歳の息子と実家に出戻り。40歳を前に「もう一度、女としての人生を!」と一念発起。離婚をしてから7年という恋愛ブランクを埋めるべく奮闘し、5歳年下の彼氏と再婚を決めた。
▶︎インスタグラム:@shinmama_aoian

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