「パパはお仕事で海外に行っちゃった」って伝えたまま
娘さんが2歳になったとき、夏子さんは12歳年下の元夫との別居に踏み切った。(前回のストーリーはこちら)
「女性問題もショックでしたが、救急車で運ばれるまで飲む、借金をしてまで飲む、夫そして父親としての自覚がまったくない…ということを目の当たりにして、もうパートナーとして信用することができないな、と。彼に出ていってもらいました。『やり直せないか?』みたいな話し合いはありましたが、お酒の飲み方を改めたり借金を返したりしている様子も全然ないので、やっぱり無理、と。
そのときのことは今思い出しても、切ないです。毎晩帰りも遅いし保育園の送り迎えも全然しなかったから、娘も“パパ大好き”ってほどではなかったけど…『パパ、行ってらっしゃい』って送り出したんですよね」
実は夏子さんは今も、娘さんに、離婚したことを伝えていない。
「別居から3か月後に離婚したんですが、そのとき娘に『パパ、海外でお仕事になっちゃったから』って説明しちゃったんです。保育園のママ友たちにも同じ説明をしていたら、彼はさっさと再婚してホントに海外転勤になっちゃって。今はもう帰国してますけど…そのままになっていて。娘の誕生日や行事のときなどは、彼も顔を出したり、1日遊びに出かけることもあります」
実母・娘との3人暮らしがスタート
現在は娘さんも小学生に。離婚した当時と同じマンションに、夏子さんのお母さんも加わり、女三世代で暮らしている。
「共同名義で買ったマンションは、養育費代わりに私たちが住むという条件で離婚しました。お金にだらしない人だったから、月々の養育費を決めたとしても、滞るのが目に見えてるじゃないですか。だから、こちらの持ち分を少し買い増しして、娘が大きくなるまでの養育費相当のローンが彼に残るようにして、今も彼が返しています。万が一返済が滞ったら彼のところに取り立てが行く仕組みにして。
私の父は10年以上前に亡くなっていて母がひとり暮らしだったので、実家を引き払ってもらい、離婚半年後くらいから一緒に住んでいます。離婚直後は泣く暇もないくらい、生活を回すことで精一杯でしたが、母が同居するようになってお迎えなどもお願いできるようになって、少し余裕がもてるようになりました」
支えてくれるのはパートナー? それとも…!?
シングルマザーならではの心細さはあるけれど、「100%別れてよかった」とキッパリ言い切る夏子さん。
「先日、娘が外で遊んでいる最中にケガをして緊急手術を受けることになって…。術前にリスクの説明をひとりで聞いたときはやっぱり心細かったです。高齢出産だから自分の体力も心配。それに今後、娘を中学受験させることなども考えているので、経済的な不安もないとは言えません。でも正社員で働き続けてきたから安定した収入はあるし、まあなんとか!
思い返すと、結婚していたときは『どうしたら相手は変わるんだろう』『自分はどう変わればいいんだろう』ということに常に心を砕いていたんです。自分の気持ちを殺す場面もありました。離婚して、そうしなくちゃいけない場面がなくなったのが、何よりスッキリしたかな。子供の教育方針や娘の習い事ひとつとっても、自分の価値観で決断できるから納得感も高いし」
…再婚は考える?
「パートナーがいたらいいな、とは思います。でも娘も母もいるし、別居婚が理想かな。それに、たとえば自分の体調が悪くなったときや、何か情報が欲しいときに支えてくれるのは、男性のパートナーだけじゃないんじゃないかと思っています。職場や地元のママ友、それに、友達も大事だと再認識したところ。育児に悩むこともありますが、グチは友達とのごはんで聞いてもらったりして…今は穏やかで充実した毎日です」
取材・文/酒井亜希子(スタッフ・オン)