モテ過ぎた美女・遥さん。晴れて結婚し、NYでの新婚生活をスタート。「そろそろ子供が欲しい」と思い始めましたが……。
連載過去記事:第1回アラフォーになると独身よりバツイチがモテるってホント!?
第2回モテ美女が完璧主義者の夫とNYで新婚生活を始めたら・・・!?
【目次】
「子供は絶対に欲しくない」。夫からのまさかの告白
結婚する前から、いつかは子供が欲しいと思っていた遥さん。
30代も半ばに入り、慣れない海外での生活にも基盤が出来てきて、子供を作るには今がベストなタイミング。だけどここに来て、今まで知らなかった夫のある本音を知ることになります。
それは、「子供は絶対に作らない」という、彼の強い意志でした。
そもそも結婚当初から必ず避妊をしていた夫のJさん。けれど遥さんはそれに対し、「潔癖な人だからかな」と、とくに不思議に思ったことがなかったそう。「結婚前に私が子供の話をしたときも向こうが話を合わせていたので、気づかなかったんです」。
あるとき、「そろそろ子供が欲しいんだけど」と切り出した遥さんに、Jさんはこう答えます。
「僕は、子供が欲しいとはどうしても思えないんだ」。
遥さん(以下、は):「それを聞いたとき、しあわせだった結婚生活が崩れ落ちていくような気持ちでした。——だけどそのときはまだ、彼に愛されているから、仲良くしていればいつか変わってくれるんじゃないかと思っていたんです。私ならば好きな人の願いは叶えてあげたいから、彼もそうしてくれるはずだ、って」
——そんななか、夫の妹夫婦に子供が生まれます。ニューヨークまで姪っ子を連れて来て、Jさんに子供を持つことの良さを伝えようと協力してくれたこともありました。
しかし経営者で左脳タイプのJさんは、姪っ子のことはかわいがるものの、自分たちの子を持つことに関しては「部屋が汚れる、お金がかかる」、とリスクばかりに目を向けるようになり、子供が欲しくないモードにさらに拍車がかかっただけ。
またあるときは、遥さんが乳腺炎になり、ドクターに言われた「女性ホルモン過多だから子供を産んだ方がいい」という言葉を伝えて情に訴えようとしたものの、コレも効かず。ニューヨークで仲良くしていた周囲の友人たちはどんどん出産して行き、子供のいない遥さんは、またもや孤独を感じ始めるように。
結局、何度も子供を持つことについて話しあっても「欲しい」、「欲しくない」、とお互いの意見は平行線のまま。そんな状態では、夫婦生活がなくなるのも自然な流れ。
——子供を持つことに希望を持てなくなった遥さんは、この頃から離婚を考え始めます。
東京で暮らしていたら、離婚はしなかったかもしれない
遥さんの話を伺っていて印象に残ったのは、「東京で暮らしていたら、離婚はしなかったかもしれない」という言葉。
夫Jさんのためにニューヨークで暮らし、新居の高級アパートメントも、以前からJさんが住んでいた部屋。
は:「決して狭い部屋ではないけれど、クローゼットも彼が前から使っているものだから、荷物が増えないように気を使っていたし、建物が古くて水回りがときどき故障したり……。そんな、今までガマンしていた小さなことが積み重なって、一気にあふれて来ちゃったんです。私は彼のために仕事も辞めてニューヨークまで来ているのに、彼は私の子供が欲しいという希望すら叶えてくれるつもりはないんだって思ったら、悲しくなってしまって……」
長女として育った遥さんは、男性に駄々をこねたりして甘えるタイプではありません。むしろ包容力があって、相手に合わせることを厭わない、〝ザ・長女の鑑〟タイプの女性。
思い返せば、夫に合わせていたことはほかにもたくさん。
・ せめて犬を飼いたかったけれど、潔癖の夫が嫌がるので飼えなかったこと(代わりに植物をたくさん育てたそうです涙)
・ 本当は人見知りなのに、社交的な夫のつきあいで無理をしていたこと
などなど、数え上げればキリがないほど。
——ハイ、ここで遥さんから結婚生活への教訓です。これから結婚するという未婚者の方が居たら、メモをお願いしますっ!↓↓↓
は:「『鉄は熱いうちに打て』と言うけれど、結婚生活もそう。本当に、はじめが肝心だったなと。今思えば、最初のうちに自分の好きな部屋に引っ越してもらうように頼んだりして、ワガママを言えば良かったんです。周りを見ていても、女性が旦那さんを尻に敷くくらいの主導権を握っている夫婦の方がうまくいっているし、なんだかんだ言ってしあわせそう。きっと、女の子はワガママなくらいな方がしあわせになれるんですよね(しみじみ……)」
さかい(以下、さ):「それ、すっごくわかります〜〜(涙)! 性格がいい子って意外と男性関係苦労していて、ちょっと性格悪くて我が強いな〜、ってくらいの子の方が、旦那さんはブチブチ文句言いながらも、何故か夫婦関係円満だったりするんですよね……!」
——そこからさらに3年間。仕事に打ち込んだり、独身の友人を増やしたりしつつ、ぼんやりと離婚を考えていた遥さん。
あるとき、ふたりで初めて旅行に行った思い出の地、タイに再び夫婦で訪れます。その旅行の最後の夜、遥さんは、夫が子供を欲しくない本当の理由を知ることになるのです。
優秀な夫の、意外なまでの自己否定感の理由とは
世間から強くて優秀だと思われていた男性の意外な告白の内容は、このようなものでした。
——Jさんは幼い頃から、一代で会社を築いた父親の後継として、皇帝学を叩き込まれて育ちます。対して2つ年下の妹は、絵の才能があり、女の子なので家業を継ぐ必要もなく伸び伸び育ち、学生の頃からイラストレーターとして活躍。
カリスマ性がある父親と、アーティスティックな妹に対し、自らを何も取り柄のない平凡な人間だと痛烈なコンプレックスを感じていたJさんは、勉強と知識で完全武装して生きる道を選ぶようになりました。
は:「だからこそ、今まで徹底的に自分を律して生きてきたんだと彼は言いました。自分みたいな出来の悪い人間になってほしくないから、結婚もしないし、子供も作らないと決めていた。だけど私に会って、奇跡が起きた。——『だから結婚はしたし君のことは心から愛しているけど、やはり子供だけはどうしても作りたくないんだ』、と言うのが彼の出した結論でした」
「自分が今まで分刻みのスケジュールで生きて来たのも、そんな自分の内面と向き合う時間を持ちたくなかったから」——そう話すJさんに深い闇を感じて、遥さんは、夫が子供を欲しくないという想いがようやく理解できた気がしたのでした。
それは同時に、「この先私がどう説得しようとも、私たち夫婦が子供を持つことはないな」と悟ることでもありました。あとはもう、遥さんがその事実を受け入れ、これまで通り彼に合わせて生きて行くかどうかだけ。
ついに離婚を決断。「この先、彼を恨みたくはないから」
は:「私たちはそのときもまだ仲のいい夫婦だったし、互いに愛情だってありました。嫌いになるまで一緒に居るという選択もあったと思います。だけどこのまま結婚生活を続けて子供が産めなくなる年齢になったら、子供を作ることにトライする機会すら与えられなかったことを恨みに思うときが来るんじゃないかと思いました。好きで一緒になったからこそ、そんな風にはなりたくなかった」
——著者であるバツイチの私は、よく、離婚の経験がない人に「何が離婚の決め手になったの?」と聞かれることがあります。「そんなの、事情も知らない他人にひとことで言えるようなことじゃないよ」って内心思うけれど。
離婚理由はどうあれ、最終的に離婚を決意するときはみんな、きっとこの想いに尽きるんじゃないかなと私が密かに思っているのが、遥さんも口にした、「誰かを恨みながら生きるような人生を選びたくはない」という気持ち。
愛に葛藤は付き物だと、以前どこかで読んだことがあります。だけど愛するときに、その葛藤が大きくなりすぎたら? ——苦しくて、そのうち、愛しているはずの相手を恨むようになるかもしれない。
そして本当に怖いのは、誰かを恨んでいるような自分を誇らしいなんて思えないから、いつの間にか自分のことを嫌いになってしまうこと。
生きていくうえで何より辛いのは、自分を嫌いになることじゃないのかな。そんな風に思います。離婚したときの世間体の悪さとか金銭的な苦労とか、そんなものよりず〜っと大事なのはきっと、人間としての尊厳なんだもの。
——だから私にとって、遥さんの離婚を決めたときのその想いは、とても共感できるものでした。
そしてタイでの話し合いのあと1か月の別居を経て、遥さんはJさんに「離婚しよう」と告げます。遥さんのことを深く愛していた夫ですが、愛していたからこそ「自分のエゴで君を引き止められない」と、離婚を承諾。
それは彼が子供を欲しくないと知ってから悩み抜いて約3年後のこと。ふたりの約7年間の結婚生活は、ここで終わったのでした。
——さて皆さん。思わずしんみりしてしまうけれど、ここで今回の取材テーマをもう一度思い出してください。
「アラフォー過ぎたらバツイチの方がモテるってホント?」——ですよっ!?
ですから今回の本題は、実はこれからなのです。が、またまた長くなったので、離婚してからの遥さんのモテエピソードは次回に続けたいと思います!
※プライバシー保護のため、取材内容は一部変更してあります。
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イラスト/naotte 取材・文/さかいもゆる
さかいもゆる/出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。——と思ったらアラフォーでバツイチになり、意図せず、ある意味全方位フリーダムなステイタスになる。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」、i-voce「ハリウッドセレブの恋する言葉」で連載中。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」ではアラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。