スピリチュアルビューティコンサルタントmailoveのvenus maiです。
”感度”を高める!ということで、わたくしの独断と偏愛趣味で官能映画をご紹介しておりますが。
(1本目『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」)
(2本目『運命の女』)
ラスト3本目はこちら!
仏英合作の『ラマン』。公開は1992年。もう四半世紀も前ですね。 エディター時代にある特集で「おすすめ官能映画」アンケートをとった時、ダントツ1位だったのがこちら。時を越えてもなお語り継がれる、官能映画の名作。
(以降、少々ネタバレを含みます)
1920年代、まだベトナムがフランスの植民地で「インドシナ」と言われていた時代。サイゴンで寄宿舎から学校に通う貧しい15歳のフランス人少女は、メコン川をくだる船の中で裕福な中国人の青年と出会う。やがて二人は関係を持つようになる…。お互いに名前も知らない(映画の中では呼ばない)、「愛人」関係。年齢の差、人種の違い、貧富の差、家族の問題、少女から大人への成長と悲しみ、いろいろなものが混じり合っていて、一言で官能映画というだけではない愛の映画。
フランスの女流作家、マルグリット・デュラスの自伝的小説が原作ですが、もしかしたら今の時代は、もうこういう映画は難しいかもしれません。
リアルで激しく大胆なベッドシーン。しかも当時17歳の女優が演じているというのもあって、衝撃度はかなりのもの。
けれど、この映画を真に官能的にしているのは、そのベッドシーンではないのです。
まずは主演のジェーン・マーチ。
質素なワンピースに男物のハットをかぶり、アンニュイに川を見つめる視線。
おさげにした幼い髪型に、くっきりと浮かぶ赤く色づいた唇。
初めて男の車に乗った時も、あたかも乗り慣れているようにくつろいで、青年を慌てさせる成熟度。
生き急ぐように身を乗り出しながら、早足でまっすぐ歩いていく姿。
船で出会ったのち、彼女の姿を求めて学校の前に止まる彼の車。その窓に自ら近づき、窓越しに口づけをする…
どこか冷めたような虚無を持ちながら、行動は大胆。少女が抱える”魔性”ともいうべき早熟なエロスに、この彼のみならず見ている私たちも翻弄されていってしまいます。
終始関係をリードするのが彼女の方。(でもリードしたと思っていたようで実は…と言う展開も切ない!)
そして中国人青年を演じるレオン・カーファイの繊細さと品の良さも、結構突っ込みどころ満載の心弱いおぼっちゃまであるこの青年を、文学的に見せています。鍛えられたお尻となめらかな肌がセクシー。
外は物売りの声や車が通る喧騒が聞こえる中、ジメジメと暑い部屋で人には見せられない姿で過ごす2人。淫靡な行為とのコントラストかのように、お互いにいつも白い服を着ていて。
全体に漂うのは、フランスの監督っぽい湿り気のある色っぽさ。
「水」の元素は癒しの要素であると同時に、愛と官能のエッセンスでもあるんですよね。この映画でもたくさんの水が出てきて、それが作品をよりセンシュアルでメランコリックにしている気がします。
街をゆっくり、ゆったりと流れるメコン川。
水浸しの彼女の家(お母さんが騙されて水浸しの土地を購入)。
暗い部屋で黙って水浴びをする2人。
湿気と熱気を帯びた熱帯の夜。
あちこちに出てくる水、”うるおい”が、観ているこちらまでを満たしていく。
『ラストタンゴ・イン・パリ』を思わせるダンスシーン(官能映画にはダンスシーンが多い気がします)や、当時のベトナムを再現したかのようなコロニアルな風景も印象的。興奮する!というよりも、心にふわっと感覚が残るような映画です。
バレンタインに限らず、何か自分の”感度”を上げたい時に、この映画の余韻に浸るのもいいかもしれません。
venus mai
元ファッションエディター。同じ“マイ”という名前のneffy maiと共に、スピリチュアルビューティコンサルタント“mailove”として活動。東京大学文学部美学芸術学科を卒業。アートやカルチャーに造詣が深く、ライフスタイルにも独特の美意識を発揮する。1979年生まれ・いて座・AB型。Domaniウェブサイトにて『ふたりの女の官能カラーパレット12か月』『ふたりの魔女の恋愛タロットリーディング』なども担当。