あなたにとって生活の中で最も身近なお酒と聞かれたら、どんなお酒を思い浮かべますか? さまざまな名称が頭をよぎると思いますが、「ワイン」と答える方もきっと多いことでしょう。ところがそこで「ワイン」と答えた後に「どちらの国のワインがお好みですか?」とか「お好きな銘柄は?」など、続けて具体的な質問を受けると、すぐに回答ができず、途端に気まずい思いをすることもあるかもしれません。
本記事では、ワインの基礎知識について、京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目・吉田まさきこさんに教わります。ワインに関する基礎知識を身につけ、あなた好みのワインにたどり着くヒントにしていただけたら幸いです。今回は「アルコール度数」について取り上げます。
ワインのアルコール度数はどのくらい?
厚生労働省「健康日本21」によると、ワインのアルコール度数の目安は、12%(1杯120mlあたり)です。
その中でも赤ワインの平均アルコール度数は11~15%、白ワインは10~14%だといわれています。白ワインよりも赤ワインの方が、アルコール度数は少し高めである印象がありますが、一概にそうとは限りません。
ワインは醸造酒
アルコール類の種類は、大きく分けると「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3つ。ワインはその中の醸造酒に分類されます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
・醸造酒(じょうぞうしゅ)… 原料が酵母の作用により、糖分を分解してアルコール発酵したもの。ワインのほか、日本酒やビールが醸造酒に分類されます。
・蒸留酒(じょうりゅうしゅ)… 原料をアルコール発酵させたものを蒸留してつくられます。ブランデーやウィスキー、焼酎が蒸留酒に分類されます。
・混成酒(こんせいしゅ)… 醸造酒や蒸留酒に糖分や果実、香料などを加えてつくられたお酒。代表的なものに、梅酒、みりん、リキュールなどがあげられます。
そのほかの酒類のアルコール度数は?
まず、ワインと同じ醸造酒である日本酒とビールの平均アルコール度数を見ていくと、日本酒は15%前後、ビールの多くは3~10%です。次に蒸留酒であるブランデーやウィスキーは、40~50%のものが多く、アルコール度数は一気に高くなります。しかし同じ蒸留酒である焼酎のアルコール度数は20~25%のものが主流です。そして混成酒に分類される梅酒のアルコール度数は8~20%、みりんは12~15%とされています。
ワインのアルコール度数はどのように決まる?
ワインのアルコール度数は、糖度と製法によって決まります。ワインは原料であるブドウ果汁を酵母の作用で発酵させたもの。酵母によって、糖分をアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解します。そのため、糖度の高いブドウを使うほうがアルコール度数が高くなる傾向があるのです。
では、ワインのアルコール度数が決まるブドウの糖度は、どのようにして違いが出てくるのでしょうか?
ブドウが育つ環境
ブドウが育った環境はアルコール度数が決まるポイントのひとつ。それは気候や日照時間によってブドウの成熟度が異なるからです。温暖な気候で日照時間が長い土地で育ったブドウは糖度が高く、酸は控えめになります。一方で、気温が低く日照時間が短い土地で育ったブドウは、糖度が押さえられ、酸度が高めになりやすいため、ワインにするとアルコール度数も控えめになる傾向があります。
ブドウの収穫時期
ブドウは熟すほど糖度が高くなります。早熟の段階では糖度が低く酸が高いため、酸を残したワインを造りたい場合には、あえて熟していない段階でブドウを収穫することも。一般的にはスパークリングワインやすっきり軽めの白ワインに多いですが、温暖化でブドウの成熟度が昔よりも上がってきているため、赤ワインでも早めにブドウを収穫することもあります。一方で、熟度の高いブドウからは糖度が高く得られるため、アルコール度数が高いワインを造ることも可能に。
ブドウの品種
ブドウの糖度は品種によっても異なります。世界中でブドウの品種は10,000種類以上もあるといわれていて、その中でもワイン用のブドウの品種は赤白合わせて、およそ300種類以上。フルーツとして食べるブドウは皮が薄く、身がジューシーなのに対して、ワインに用いられるブドウは皮が厚く香りを含んでいるものが多いのも特徴。種や皮には、ワイン特有の渋みを引き出すのに重要であるタンニンが多く含まれています。
またワイン用のブドウの身は、食用よりも小粒。しかしその中に香り、酸味、甘味が濃縮されており、食用のブドウよりも実は糖度が高いのです。
アルコール度数が高いワイン
ワインの中でもアルコール度数が高いものをみていきましょう。
酒精強化ワイン
酒精強化ワインは、ワインの醸造過程であるアルコール発酵の段階で、度数の高いアルコールを添加したもの。アルコール発酵途中で度数の高いアルコールを加えると、糖分がアルコールに分解されるのが止まります。そのため、ブドウの甘味を残しつつ、アルコール度数の高いワインができるのです。酒精強化ワインは、食前や食後に楽しむ甘口のものがほとんどでしたが、最近では食事中も楽しめる辛口のものも増えてきています。
ちなみに酒精強化ワインに分類されるワインは、ポートワイン、シェリー、マデイラなど。
ワインで言うと、例えばアマローネ
アマローネはイタリアの高級赤ワインです。収穫したブドウは3~4か月陰干しされ、水分を取り除き、ブドウの成分を行すくさせて発酵します。そして最低2年以上の樽熟成、さらに瓶詰め後にも6か月以上の瓶熟成したのちに出荷。成分の凝縮と共に糖度も上がるため、ワインの風味は豊かになりつつ、アルコール度数も高くなります。
*その他にも、温暖地域でつくられたワインはアルコール度数が高い傾向があります。
アルコール度数が低いワイン
ワインにはアルコール度数が低いものもあります。アルコール度数の低いワインは、口当たりが軽く、すっきりした味わいを楽しみたいときにピッタリ。中にはスイーツと相性も抜群なワインもあります。代表的な低アルコールワインを見ていきましょう。
モスカート・ダスティ
モスカート種でつくられる甘口の微発泡ワイン。アルコール度数は約5%と控えめで、爽やかなブドウの甘さと香りが特徴です。フルーツやスイーツに合わせて楽しむのもおすすめ。
リースリング
リースリングはドイツを代表する白ワイン用のブドウ種。主にドイツで栽培されていますが、世界中の寒冷地域でも栽培されています。その中でも、ドイツでつくられているリースリングのアルコール度数は、一般的な白ワインより控えめな8%前後のものもあります。しかし、それ以上のものも多く造られているので確認は必要です。
ランブルスコ
ランブルスコは、イタリア、エミリア・ロマーニャ州でつくられる赤いスパークリングワイン。赤が主流ですが、ロゼや白のスパークリングもあります。ランブルスコのアルコール度数は10%前後のもがほとんど。他のワインと比べるとアルコール度数は控えめです。
最後に
ワインのアルコール度数はワインによって異なることがわかりました。ワインには色々な効果がありますが、美容や健康にも効果があるとされています。飲む量に気をつけて、お気に入りのワインで、お食事の時間を楽しみましょう。
監修
吉田まさきこ
京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目。
J.S.A.認定ソムリエ
シャンパーニュ騎士団公認 オフィシエ(将校)
アルザスワイン騎士団公認 シュヴァリエ(騎士)
アカデミー・デュ・ヴァン講師
ヨーロッパを中心に世界各地のワイン生産地を幾度も訪問し、ワインを学ぶ。それら一流の生産者たちとワインイベントを開催し、交流のコーディネイトを行なう。ショップでは世界各地の地域のワインを多種取り扱うが、特にブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザスでの滞在が長いためこの地域のワインは日本有数の品揃えを持つ。初級~専門分野までのワインセミナーも多く実施し、中でも京都の持つ和の食文化とワインのマリアージュを強みとしている。
構成・執筆/京都メディアライン