「愛され力のある、憎みきれないキャラを心がけました」念願(?)のヒモ役を演じる塩野さん
「好きになった相手は悪魔かもしれない。でも、愛されてみたい」──映画『チャチャ』は、天真爛漫な“野良猫系女子”・チャチャをめぐるちょっとキケンで不思議なラブストーリー。人目を気にせず自由に生きるヒロインを伊藤万理華さん、彼女が思いを寄せるミステリアスな男子・樂を中川大志さんが演じます。そして物語の鍵となるキャラクター・護役は塩野瑛久さん。塩野さんにとって「願ったり叶ったり」のこの作品についてお話を聞きました。塩野さんの近況とあわせてお届けします。
──今作のオファーを受けてどんな気持ちでしたか?
素直にうれしかったです。酒井麻衣監督のオリジナル長編映画と聞いて、それだけで「ぜひやりたい!」と。以前、酒井監督のドラマ作品に出演したことがあって、いつかまたご一緒したいと思っていたんです。
作品の随所に監督のこだわりが詰まっているだけでなく、ご本人の現場をまとめる力もすごいんです。僕が言うのもおこがましいのですが、まだまだお若いのに現場をグイグイ引っ張るパワーを感じる方。本当に仕事に誇りをもってやっていらっしゃる姿が、印象に残っています。
実はその以前にも、酒井監督の『恋のツキ』というドラマをたまたま観ていたんです。後から(酒井監督の作品だと)知って、“あの作品も好きだった!”と思って。監督が描く世界観に僕は惹かれるみたいです。
──その世界観とはどんなものでしょう?
なんというんでしょうか、映像の美しさですね。でも、ただきれいなものを映せばいいというわけではなくて。画面に映る装飾や光の入り方、バランスがとても美しくて、監督がとてもこだわっていらっしゃるのを感じます。
──今回、塩野さんが演じる護は「ヒモ役」ということですが…
これまで冗談半分で「ヒモ役をやりたい!」と言っていたんです。そしたらまさかの、念願の酒井監督の作品でヒモ役をやれるという(笑)。でも護はただのヒモでは終わらない、すごく愛され力のある人物。護のキャラクターが物語のなかで敢えて詳しく描写されることはないんですが、喋り方や雰囲気で、憎み切れないヒモ感を出せたらいいなと思いました。
──ラストシーンでは、護のまた違う顔が見られましたね!
護は「人を大切にする」というマインドはずっと持っている子なんでしょうけど、どこかしら甘えちゃう部分や、なぁなぁにしてしまう部分がある。でも、彼もまだまだ成長途中。そんなところが、最後のシーンにかけてちょっと見えてきますよね。思いやりの「別ベクトル」を見つけた感じがしました。
──中盤から雰囲気がガラリと変わるこの作品。護は、そんな物語を動かす鍵になる存在でもあります。
作品のもつ、どこか詩的な雰囲気を表現するのが難しかったです。護は追い詰められるような場面でも楽観的な人。ちゃんと怖い思いもしているんだろうけど、なんだか抜けているというか…僕が同じ目にあったら、きっとすごく切迫した表情になると思うんですよ。とにかく護が置かれる状況と台詞のギャップがすごいので、そのバランスの取り方を監督と相談しながら演じていきました。
──主人公・チャチャを演じる伊藤万理華さん、チャチャが思いを寄せる樂役の中川大志さん、おふたりの印象はいかがでしたか。
伊藤さんは、本当にチャチャのまま。この作品は彼女へのあて書きなんだろうなと思えるくらいに、ご本人のセンスや雰囲気、誰にも分け隔てない感じがチャチャそのものでした。クランクアップの時には、出演者やスタッフみんなにメッセージカードをくれたんです。そんなところが、彼女の愛される所以なんでしょうね。
そして大志くんとは実は、僕のデビュー作以来、十数年ぶりの共演でした。といっても、僕は当時台詞があるかないか…という立場だったんですけど。すごく大人になられていて、なんだか感慨深かったです。
──塩野さん自身は、チャチャのような天真爛漫な“野良猫系女子”をどう思いますか?
いいと思います! 僕はどちらかというと、“悲劇のヒロイン”タイプが苦手です…。
自分の世界観を持っている人は、作中のチャチャみたいに「天才肌ぶりたいんでしょ」などと他人から誤解されることも多いかもしれません。でも周囲からそんなふうに思われている中で「私はこんなに不幸なんだ」「わかってもらえないんだ」というようなマイナスの感情が出てこないのが、僕は素敵だと感じました。
自分の感性にしたがって生きるチャチャですが、人に迷惑をかけることはないし、基本的にプラスのマインドでいる。そこがいいところ。
──登場人物の中で、一番共感出来たのは誰ですか?
うーん、誰だろう?(じっくり考える塩野さん)難しいですね。一人選ぶとしたら…やっぱり護かな。役に寄り添ったから、ということもありますが、一番気持ちがわかるキャラクターです。
彼のどこか客観視してしまう部分や、達観しているところには共感できるかなと。飲みの場で、恋人の好きなところをつい話してしまうのも可愛らしいですよね。そんなまっすぐさも魅力的です。
──撮影中に印象に残っていることはありますか?
とにかくハードでした。スケジュール的にも状況的にも。物語の前半と後半のギャップが激しくて…。前半で主に登場する共演者の方々とは、一日だけ前室ですれ違った際にご挨拶をしたのですが、僕の格好がボロボロすぎて同じ作品を撮影しているとは思えないくらいでした。実際、共演者のみなさんからも言われましたし、僕自身もそう思いました(笑)。
──塩野さん演じる護になにが起こるのか…気になる展開は、ぜひ劇場で観ていただきたいところですね。
なかなかに予想を裏切られる映画だと思います!
塩野さんが今の自分に点数をつけるなら?
──もし明日から1週間お休みがもらえるとしたら何をしますか?
つい昨日、まさにドラマの撮影現場で共演者さんたちとその話をしていたんです! 僕は「困る」と答えました(笑)。予定を埋めるのが本当に苦手で、何をやろうとか、誰を誘うとか…考えているうちに時間が経っています。
撮影が早く終わる日も「やった!午後から何か出来る。誰か誘おうかな?」と考え始めるんですが、どうするのがベストなのか悩んでいたら、いつの間にか夜になっていて声をかけられず…。
この調子だと、急に休みができてもきっと誰も誘えずに終わって、家にこもってしまいそうです。まずはアクティブな人を誘ってみて、色々連れ回してもらうのがいいのかな?(笑)
──今の自分に点数をつけるとしたら、100点中何点ですか?
高得点だと思います(にっこり)。99点ぐらいはつけられるんじゃないかな。毎日一生懸命に生きて、全力を出せていると思うので。
僕は基本的に、“後悔”という言葉をあまり使わないようにしています。学生の時から、この考え方は変わっていません。その都度、その時の自分にとって全力で考え抜いた結果だけどその選択が間違っていて、後から“あのときこうしておけばよかった”と思うこともあるかもしれない。でも、それでもその時に自分が出来た100%で導き出した答えなので、それ以上のものはないはずだから。
──ちなみに、残りの1点は何故なんでしょう?
それは「これに挑戦してみようかな」「やってみたいな」と思ったことを毎回なんだかんだやらないところです。やりたい、やりたいと言って実現していないことがあるので、マイナス1点。本当は1点どころじゃないんですけど(笑)。それ以外は全力でできているので99点です!
──料理、洗濯、掃除。この中で得意な家事は?
難しいなぁ! 普段から全部やりますけど、どれが得意というと…。料理もめちゃくちゃこだわるわけでもないし、いつも薄味になっちゃうし。
うーん、ひとつ選ぶとするなら洗濯かな。Oggi.jpの連載でもお話ししていますが、きちんと種類ごとに分けて洗いますし、Tシャツは長持ちするようにおしゃれ着用洗剤で洗って、シワにならないように乾かしています。洗濯機に乾燥機能もついていますけど、Tシャツは乾燥機にかけないです。
──お忙しいなかでも、きめ細やかですばらしい家事力です。
その代わり、毎日はしないですよ! 例えば半日以上衣装を着ていて、私服は移動の時だけという日には、ほとんど汚れないこともありすぐに洗濯しないです。それにTシャツを乾燥機にかけると生地が傷んでしまうのが気になってしまうので…ケチなんですかね(笑)。
──それはケチなんじゃなくて物を大事にしているんです。
ありがとうございます。型崩れが気になる衣類はおしゃれ着洗剤で洗うのが鉄則です!
──今年も残すところあと3ヵ月ですが、今年中にやっておきたいことはありますか?
今年のうちにやっておきたいこと…なんだろう、うーん…(考え込む塩野さん)。そうそう、グランピングがしたいんです! 僕、前にもお話してますよね。つまり、結局まだできていないということですが(笑)。これからの季節はグランピングにぴったりだろうし、行くなら今のうちに予約しないと…そうこうしているうちに、やっぱり予定が組めなくて来年を迎えてしまいそうです(笑)。
映画『チャチャ』
公開日:2024年10月11日(金)
監督・脚本:酒井⿇⾐
出演:伊藤万理華、中川⼤志、藤間爽⼦、塩野瑛久、ステファニー・アリアン、落合モトキ、藤井隆
主題歌:「おはようの唄」伊藤万理華(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:メ〜テレ カルチュア・パブリッシャーズ
©2024「チャチャ」製作委員会
衣装クレジット
ジャケット¥95,700、パンツ¥58,300(ETHOSENS of whitesauce〈ETHOSENS〉) シャツ¥30,800(Sian〈FACTOTUM〉) その他スタイリスト私物
問い合わせ先
ETHOSENS of whitesauce TEL:03-6809-0470
Sian PR TEL:03-6662-5525
撮影/田中麻以 スタイリスト/能城匠 ヘア&メイク/時田ユースケ 取材/徳永留依子、岡野亜紀子
【撮影現場ビハインド♡ 〝しおらしい〟番外編取材メモ】
・撮影はとにかくスムーズに終了。カメラマンのリクエストに的確に応えながら、スマートにさまざまなポーズで決め、セレクトが難しいほど素敵なカットが盛りだくさんに。
・取材はちょうどお昼どきだったこともあり、インタビュー前に準備したパンを差し出したところ「いつもありがとうございます! どれにしようかな〜。これはなんですか?」とニコニコの笑顔。大好きだという栗の入ったパンを選んでおられました。
・洗濯へのこだわりと丁寧さに思わずスタッフから「忙しいのに信じられない…」と声が漏れるひと幕に「毎日やるわけじゃないからです」と謙虚な塩野さんでした。
俳優
塩野瑛久
しおの・あきひさ/1995年1月3日生まれ。東京都出身。どんな難役も演じ分けることから“カメレオン俳優”と呼ばれる実力派俳優で、話題作に多数出演。2024年大河ドラマ『光る君へ』で一条天皇を熱演。10月は、ドラマ『無能の鷹』、連続ドラマW『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』、『天狗の台所 Season2』、映画『チャチャ』、映画『八犬伝』の放送・公開が控えている。ファッション好きとしても知られ、センスのよさから数々のファッションイベントに呼ばれる今、まさに旬の人。2024年1月より、Oggi.jpでファッション連載をスタート!
公式Instagram @akihisa_shiono_official
※本記事は2024年10月10日に公開されたOggi.jpと同内容になります。
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