Contents
うっかりインクがシャツやズボンに付いてしまうことって、意外と多いものです。子どもの筆記具、仕事中のボールペン、家庭用プリンターなど、日常のさまざまな場面で発生しやすいインク汚れ。しかも色が濃くて目立ちやすく、どう落とせばいいか悩む人も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では、インク汚れの染み抜きについて、時間が経過したケースやインクの種類別の対応、自宅でできる方法からクリーニングの判断基準まで創業80余年の歴史を持つ京都発祥の染み抜き・お直し専門店である「きものトータルクリニック吉本」さんにお聞きしました。状況ごとの対策を紹介します。
インクの染み抜き、自宅でできる? クリーニングとどちらが正解?
インク汚れは家庭で落とせるのでしょうか? それとも触らずにクリーニングに出した方がいいでしょうか…? 状況別の判断ポイントを紹介します。
自分で染み抜きできるかの判断基準
まず確認したいのは、「付着からどのくらい時間が経過しているか」です。インクがついた直後であれば、自宅での対応もうまくいくことがあります。しかし、数時間以上たって乾いた状態になると、繊維の奥まで染み込んでしまい、手強くなります。
次に確認すべきは、衣類の素材です。白色の綿やポリエステルのような生地であれば自宅で対応しやすいですが、ウールやシルクといった繊細な素材は、水や洗剤に弱く、思わぬ変色や風合いの変化を引き起こすこともあります。ウールは水分と摩擦で縮んでしまったり、シルクは水分と摩擦でスレ(キズ)てしまい、その場合元には戻らなくなります。素材に不安がある場合は、自宅での処理を避けたほうが無難です。

(c) Adobe Stock
クリーニングに頼るべきケースと費用の目安
色柄が複雑な衣類、繊維が特殊な素材、大切な服にインクがついてしまった場合、無理に自宅で処理を行うと取り返しがつかなくなる可能性があります。染み抜き剤が色柄に反応して色落ちしたり、シルクのようなデリケートな生地にダメージを与えるケースも見られます。
そのような衣類は、クリーニング店に相談するのが無難です。インクの染み抜きには専門的な溶剤と技術が必要なこともあり、料金は染みの大きさや衣類の種類により異なります。目安としてはインク染みの最小サイズで500〜2,000円程が一般的です。高級素材や特殊処理が必要な場合には、費用はさらに高くなります。
迷ったときに押さえたい見極めのポイント
「自分で落とせるか」、「クリーニング店に持ち込むべきか」と迷ったときは、三つの視点で考えると判断しやすくなります。一つ目は、染みができた直後かどうか。二つ目は、衣類の素材が水や洗剤に耐えられるものか。三つ目は、インクの種類です。
とくに油性インクやゲルインクの場合、一般的な洗剤では落ちにくく、誤った処理で染みが広がるリスクもあります。判断に迷うときは、衣類の洗濯表示を見たうえで、無理をせずプロにまかせたほうが安心です。
すぐ落としたい! インクの染み抜き、家庭でできる方法とは?
慌てず手早く! 家庭にあるものでできるインク汚れの落とし方を、手順ごとに分かりやすく解説します。
使用前に確認したい生地と洗濯表示
染み抜きを始める前に、洗濯表示を必ず確認してください。「水洗い不可」のマークがついている衣類は、水分で生地を傷めるおそれがあります。また、素材の種類によって処理の仕方は変わります。
綿やポリエステルなどは水分や摩擦にある程度耐えられますが、シルクやレーヨンなどは変色しやすいため、家庭での処理は慎重に行う必要があります。また、綿であっても色物の場合は水分と摩擦で色が落ちやすいので注意が必要です。目立たない内側の縫い代などでテストをして色に変化が無いか必ず確認してください。表示を確認することで、無理な対処による失敗を防ぎやすくなります。

(c) Adobe Stock