家庭で使える身近な道具とその効果
中性洗剤以外にも、自宅にあるアイテムで応用できるものがあります。除光液は油性インクに効果が見込めますが、色柄物の衣類に使用する際は色落ちの可能性があるでしょう。またアセテートなどの素材はアセトンが入った除光液は生地が溶けてしまうため使用できません。
まずは目立たない場所で試してから使用すると安心です。また、除光液を使用したことで輪ジミが残るケースもあるため、その点もテストで確認しましょう。
重曹は粉のまま使用せず、水に溶かしてペースト状にすると繊維への負担を軽減できます。食器用アルコールスプレーやクレンジングオイルなども、素材とインクの種類によっては有効な選択肢になります。ただし、複数の薬剤を混ぜて使用するのは避けましょう。効果を求めるあまり、衣類を傷めてしまうことにもつながります。
時間がたったインク汚れにはどう対応する?
乾いてしまったインク汚れにも対応できる方法を紹介します。
古いインク汚れが落ちにくい理由
時間がたつと、インクの成分が繊維の奥深くまで浸透します。この状態になると、表面だけを洗っても汚れが残ってしまいます。特に油性インクは乾燥とともに固着し、表面に薄い膜をつくります。この膜が、洗剤や水分をはじくため、染み抜きが難しくなるのです。
時間がたっても使える染み抜きの工夫
水性のインクを落とす場合、まず試したいのは常温の水での「前処理」です。インクが付着した部分を常温の水に10〜15分ほど浸けると、繊維がやわらかくなり、染み込み部分が浮きやすくなります。
その後、固形石鹸を優しく塗り、ゴシゴシこすらず、軽くたたくようにすると繊維を傷めずに済みます。この工程は、1回で完全に落ちることを目指すのではなく、「少しずつ薄くしていく」気持ちで取り組みましょう。
落ちないと感じたときの再トライ方法
一度の処理で満足できる結果が得られない場合は、無理に続けず専門のクリーニング店に相談してください。繊維の変色や毛羽立ちを防ぐためにも、「やりすぎない」判断が衣類を長く保つためのポイントです。
インクの種類別・正しい染み抜きのコツ
水性、油性、ゲルインクなど、インクの種類によって落とし方は異なります。素材に合った対応が肝要です。
水性インクの特徴と落とし方
水性インクは、水に溶けやすい成分を含むため、比較的処理しやすいタイプです。付着直後であれば、水で湿らせた後に石鹸を塗り、やさしくたたくだけでも汚れが浮き出ることがあります。
白い清潔なタオル、固形石鹸、綿棒またはコットン、常温の水を用意してください。まずタオルを下に敷き、インクがついた面を裏返して置きます。洗剤を綿棒につけ、ポンポンと軽くたたきながら染み込ませていきます。インクがタオル側に移っているのを確認したら綺麗なタオルの面に移動して繰り返しましょう。最後に、常温の水で軽くすすいで自然乾燥させると、素材への負担を抑えることができます。
時間が経っている場合は、常温の水に中性洗剤を加えた液に10分ほど浸し、インクを繊維から緩めてから対応すると効果が出やすくなります。熱いお湯はインクが生地に定着してしまうため避けましょう。素材がデリケートな衣類の場合は、摩擦を加えず吸い取るように対応すると失敗を防げます。

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油性インクの落としにくさへの対処
油性インクは水をはじく性質があるため、通常の洗剤だけでは十分な効果が得られにくいでしょう。油性インクには、除光液やクレンジングオイルなどの油分を含むアイテムが有効です。
ただし、使う際には、必ず目立たない部分で色落ちや生地の状態に変化がないかの確認を行ってください。白地の綿素材などの生地では比較的使いやすい一方、色柄物や化学繊維では柄の色が動いてしまうなどのリスクもあるため、使用は慎重に。拭き取る動作ではなく、コットンや綿棒でたたくように塗布するのが肝要です。
ゲルインク・プリンターインクへの対応法
ゲルインクは水性と油性の性質を合わせ持つため、家庭での処理が難しいところがあります。色素が強く粘度も高いため、表面に広がりやすいのが特徴です。まずは固形石鹸で対応してみましょう。
プリンターインクは、紙への定着を前提とした成分で構成されており、衣類への染みつきは非常に頑固です。無理にこすらず、常温の水で濡れたタオルで湿らせながら固形石鹸を塗り、たたき出す手順が適しています。無理な処理は色移りやにじみを引き起こすことがあるため、段階を追って進めることがポイントです。
最後に
インクの染み抜きは、素材やインクの種類によって対応方法が変わります。焦らず、状況に応じて適切な処置を行うことで、大切な衣類を長く保てます。知識があるだけで、日常の困りごとがひとつ減りますよ。
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