「ご連絡させていただきました」は正しい？ ビジネスでの適切な敬語表現と使い方【専門家監修】

「ご連絡させていただきました」という表現、耳慣れてはいるものの、「本当に正しい敬語なの？」と不安に思ったことはありませんか？ この記事では、「ご連絡させていただきました」の正確な位置づけを明らかにし、使っていい場面と避けるべき場面、そして相手や状況に合わせたスマートな言い換え表現まで、文例とともに紹介します。

迷いを取り除き、自信を持ってビジネス敬語を使いこなせる一助になれば幸いです。

「ご連絡させていただきました」は正しい敬語？

まずは、「ご連絡させていただきました」が正しい敬語なのかどうか、確認していきましょう。

(c) Adobe Stock

文法的に誤り？ 二重敬語の観点から解説

「ご連絡させていただきました」は、「ご連絡」（尊敬の意を表す接頭語「ご」＋名詞「連絡」）と「させていただく」（謙譲語＋受け身の表現）という複数の敬語的要素が重なっています。そのため、これを「二重敬語」として一般的に文法上は過剰で、避けるべきとされています。

ただし、文化庁の「敬語の指針」では、習慣として定着している一部の二重敬語は許容されるとしています。この表現も、ビジネスシーンで丁寧さを出そうとするあまり、広く使われるようになったのが実情です。文法的には少し過剰ですが、慣用的に使われているグレーゾーンの表現、と捉えておくといいでしょう。

「ご連絡させていただきました」が「おかしい」とされる背景

この表現が不自然と感じられる背景には、「させていただく」が持つ本来の意味が関係しています。「～させていただく」は、「相手の許可・恩恵を受けて、何かをさせてもらう」というニュアンスを持つ、非常にへりくだった表現です。

例えば、こちらから主体的に行うべき業務連絡（資料送付など）に対して、「（許可をいただいて）ご連絡させていただきました」と言うと、「連絡するのに、いちいち許可が必要なの？」と、聞き手に回りくどい、あるいは少し大げさな印象を与えてしまう可能性があるのです。

近年のビジネスシーンでは、敬意は保ちつつ、より簡潔で分かりやすい表現が好まれる傾向にあるのも、この言葉が敬遠される一因といえるでしょう。

実際のビジネス現場では使われているのか？

多くのビジネスメールで「丁寧な表現」として使われているのは事実です。特に、相手への配慮や柔らかい物腰を示したいときに選ばれがちです。しかし、金融業界や士業、老舗企業など、伝統や格式を重んじる業界、あるいは簡潔さを重視するIT業界など、所属する組織の文化によって許容範囲は大きく異なります。

万能な表現ではない、ということを心に留めておきましょう。

「ご連絡させていただきました」は二重敬語で過剰だが、慣用的に使われている表現です。

場面別｜「ご連絡させていただきました」はどこまで通用する？

では、具体的にどのような場面で使えて、どのような場面で避けるべきなのでしょうか？ シーン別に見ていきましょう。

社外メール・上司宛てでの使用は失礼？

【結論】避けるのが無難。「ご連絡いたしました」を使いましょう。

最もシンプルで正しい敬語は「ご連絡いたしました」です。これであれば、どんな相手にも失礼にあたることはありません。特に、新規の取引先や役職の高い方への最初の連絡では、簡潔で分かりやすい表現が、信頼性を高めます。

社内・フランクなやり取りならOK？ 判断のポイント

【結論】相手との関係性次第。ただし、よりシンプルな表現が好まれる傾向に。

日頃からやり取りのある関係性であれば、許容されることも多いでしょう。しかし、「お疲れ様です。先ほどの件、ご連絡させていただきました」と書くよりは、「先ほどの件、ご連絡します」や「〇〇の件、お伝えします」の方が、テンポがよく、意図も明確に伝わります。

大切なのは、丁寧さの押し売りにならないことです。相手がどう受け取るかを想像してみましょう。

(c) Adobe Stock

電話・手紙・チャットでの使い方の違い

伝える手段によって、言葉の響き方や受け取り方は変わってきます。電話では、聞き間違いを防ぐためにも「お電話いたしました」や「ご連絡いたしました」のような短く明快な表現のほうが適しています。

一方で、手紙や文書では少し硬めの表現が好まれるため、「ご連絡申し上げました」が適しています。また、チャットでは、スピード感が重視されるため、「承知しました。後ほどご連絡します」のように、より短く、分かりやすい言葉を選びましょう。

自然で丁寧な言い換え表現と使い方を紹介

ここでは、「ご連絡させていただきました」を使わずに、あなたの気持ちを的確に伝えるための、スマートな言い換え表現を紹介します。

「ご連絡いたしました」「ご連絡差し上げました」との違い

「ご連絡いたしました」は、もっとも一般的で、内容、相手を選ばずに使えます。「ご連絡差し上げました」は、相手への敬意を特に強く示したい時に使います。しかし、少し距離感が出ることもあるでしょう。