「あそばせ」の意味とは？丁寧で上品な言い回しをわかりやすく解説

「あそばせ」の意味と文法的な成り立ちも

「〜あそばせ」という言葉を物語やドラマなどで耳にするも、はっきりとした意味はよく知らないという人も多いのでは？ まずは、どのような意味を持つのか、言葉の成り立ちはどうなっているのかを、辞書の説明も交えながら解説します。

丁寧にお願いする言葉

「〜あそばせ」とは、女性が使う非常に丁寧なお願いの言葉です。場合によっては、上品ぶって使う表現だという解釈もあります。つまり「〜あそばせ」は、「〜してください」をかなり丁寧・上品にした言い回しだと捉えるとわかりやすいでしょう。

「尊敬表現+命令形」で成り立つ

続いて「あそばせ」のベースとなる「あそばす・あすばす（遊ばす）」という言葉を紹介します。辞書を引いてみると、次のように解説されていました。

あすば・す【▽遊ばす】
［動サ四］《「あそばす」の音変化》
1. 「する」の尊敬語。なさる。
2. （補助動詞）動詞の連用形に接頭語「お」の付いた形に付いて、尊敬の意を添える。…なさる。
[補説] 多く女性が使う。
小学館『デジタル大辞泉』より一部引用

「〜あそばせ」と使う場合の意味は、2の補助動詞に該当します。「〜あそばす」は「〜なさる」という意味です。これを「あそばせ」とすることで、尊敬の意味合いを持つ命令・依頼形（「〜なさってください」とほぼ同義）となります。

「あそばせ」は具体的にどう使う？

「〜あそばせ」という表現は、日常生活で聞くことはあまりないかもしれません。そのため、具体的な使い方がいまいちわからない場合も多いでしょう。主に2パターンに分けて、「あそばせ」の使い方を紹介します。

日常動作を促す使い方

「〜あそばせ」を日常動作の促しに用いる例として、以下の言い回しやシチュエーションが挙げられます。

・お待ちあそばせ（お待ちください）：来客を待たせるとき、丁寧に促す場面（例：執事や女主人風に）
・お座りあそばせ（お座りください）：席をすすめる場面（例：舞踏会のような演出）
・お入りあそばせ（お入りください）：来客や招待客に室内へ入るよう案内する場面
・ご覧あそばせ（ご覧ください）：何かを見せるとき（例：絵画や品物など）
・お納めあそばせ（お受け取りください）：贈り物をするときや支払い時、受け取りを丁寧に促す場面

いずれも促す行為の動詞に「お」「ご」といった、尊敬の意を加える接頭語が付きます。動詞の前に付く「お」「ご」は上記の例の場合、相手の行為に対して敬意を表す接頭語です。

「あそばせ」が非常に丁寧な尊敬語（＋依頼・命令）なので、動詞の前には「お」「ご」が必要です。たとえば「待ちあそばせ」とはしません。

あいさつとしての使い方

「〜あそばせ」は「〜なさってください」という意味。本来は動作を促す際にしか使われないものですが、実際には軽いあいさつのようなニュアンスで使われることもあります。

・ごめんあそばせ（本来の意味は「許してください」）：「ちょっと失礼」のような軽いあいさつ
・おやすみあそばせ（本来の意味は「休んでください」）：「おやすみなさい」のあいさつ

厳密にいえば「おやすみなさい」も眠る行動を促す表現といえるでしょう。ただ、英語の”Good night.”や”Have a nice dream.”のように寝る前のあいさつとして使われている事実があります。

現代ではユーモア表現として使われる

「あそばせ」はもともと女性が使う上品な言葉でしたが、現代では「ネタ」や「ユーモア」として使われることがほとんどでしょう。親しい友達と「あら、ごめんあそばせ」など、冗談めかしてユーモラスな表現をしたいときに使うのが一般的です。

「あそばせ」がお嬢様言葉とされる理由

「〜あそばせ」は、現代において「お嬢様言葉」として広く認識されていますが、なぜなのでしょうか。考えられる2つの理由を解説します。

ドラマやアニメの「お嬢様キャラ」がよく使うため

昔からドラマやアニメにおけるお嬢様キャラクターの口調として、「〜あそばせ」という言い回しがよく使われてきました。今、「そんな表現を使っているキャラがいたな」と思い浮かんだ人もいるのではないでしょうか。

そんなお嬢様キャラが発する「あそばせ」ですが、実は近代東京の「山の手」と呼ばれる高台に住む、中流～上流階級の人々が使用していた「山の手言葉」という方言が元になっているのだとか。さらにさかのぼると「あそばせ」は、昔々に京の宮仕えの女性が使っていた言葉なのだそう。

以上のことから、「山の手言葉」の影響を受けたお嬢様キャラクターのイメージにより、「〜あそばせ」もお嬢様言葉として定着している可能性が高いでしょう。

現代では日常的に使う人はほぼいないため

「〜あそばせ」という表現は、昭和初期ごろまでは使われていたとされています。しかし、現代の女性で「〜あそばせ」を日常的に使う人はほとんどいないといっても過言ではありません。

こうした「一般人が使わないこと」がドラマやアニメの影響と合わさった結果、特別なお嬢様言葉というイメージが根づいたのかもしれません。

まとめ

「〜あそばせ」という言葉に触れる機会は多くないかもしれません。ただ、意味や背景を知ることで、物語に出てきたときに台詞のニュアンスがよくわかるはずです。読書中の子どもとの会話や、ちょっとしたユーモアとして日常に「〜あそばせ」を取り入れてみるのも面白いでしょう。

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