「申し伝えさせていただきます」の冗長さや過度なへりくだりが違和感の原因。相手や場面に合わせて調整が必要です。
「申し伝えます」「お伝えします」との実践的な違い
どちらも正しい敬語ですが、与える印象が少し異なります。
申し伝えます:やや格式張った、丁寧で改まった印象。「様」が付くような取引先の役員など、特に敬意を払うべき相手への伝言に適しています。
お伝えします:一般的で、柔らかく自然な印象。社内外問わず、ほとんどのシーンで問題なく使えます。
「申し伝えさせていただきます」は、この2つよりもさらに丁寧度が高い(あるいは過剰に感じられる)位置づけだと考え、相手や状況のフォーマル度に応じて使い分けましょう。
場面ごとにどう使い分けるべきか?
最終的にどの表現を選ぶべきか。その判断基準は「相手との心理的な距離感」です。
社外の重役・初めての相手 :「申し伝えます」「申し伝えさせていただきます」(丁寧さを優先)
社外の担当者・取引先 :「お伝えいたします」「申し伝えます」(標準的な丁寧さ)
社内の上司 :「お伝えします」「伝えておきます」(簡潔さと分かりやすさ)
社内の同僚・先輩 :「伝えておきます」「伝えます」(親しみやすさ)
このように、相手に合わせて敬語のレベルを調整する意識が大切です。

類語や似た表現との違いも押さえておく
「申し伝えさせていただきます」と似ている敬語表現は多く、意味の違いを正しく理解して混同を防ぐことが重要です。

「申し添えさせていただきます」との違い
「付け加えて言う」という意味の謙譲語です。主要な用件に、補足情報として付け加える際に使います。
例:「資料は以上です。参考までに、関連データのURLも申し添えさせていただきます。」
「申し受けさせていただきます」とはどう違うか
「受ける」「承る」の謙譲語。注文や依頼などを引き受ける際に使います。言葉の方向が「伝える(発信)」とは逆の「受ける(受信)」になります。
例:「研修へのお申し込み、確かに申し受けさせていただきました。」
「申し上げます」との適切な使い分け
目の前の相手に直接、何かを言う場面で使います。第三者への伝言には使いません。
例:「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。一言、御礼申し上げます。」
これらの違いを理解しておけば、誤用の心配はなくなります。
最後に
POINT
- 「申し伝えておきます」は第三者への伝言を丁寧に伝える言葉だが、使いすぎや重複敬語には注意。
- 違和感を与える場合は、「お伝えします」「申し伝えます」など適度な表現への切り替えを。
- 言葉の選び方は、相手との距離感やその場のフォーマル度に合わせて調整することが大切です。
「申し伝えさせていただきます」は丁寧に聞こえるものの、使い方を誤ると堅苦しく不自然な印象を与えてしまいます。敬語の成り立ちや相手との関係を理解し、場面に応じた適切な表現を選ぶことが、ビジネスで信頼されるコミュニケーションの鍵です。
言葉を丁寧に選ぶ意識は、仕事の印象を大きく左右します。本記事を参考に、自然で正確な敬語を使いこなしていきましょう。
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執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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