
こんにちは、editor_kaoです。
つい、安請け合いをしてしまった取材がありました。それはフランスから来日された、あるラグジュアリー・ライフスタイルブランドのCEOのインタビューで、ちなみに安請け合いの原因は、100%私にあります。
世界が違いすぎるライフスタイルに困惑して
そのブランドのことは、名前やどんな商品を展開しているかはなんとなく知っているものの、あまり詳しくはなく、でもライフスタイルテーマは好きなので、依頼がきたときには「やりますー!」と元気に即答していました。が、改めてブランドの背景とCEO(男性)のプロフィールを拝見したところ、「これは私の手には負えないかもしれない……」と、内心焦ったのです。
何もかもがハイレベルすぎる!え、これヨーロッパのどこかの貴族の話なの?リリースを読んでも、おとぎ話のような歴史や、聞いたことのない用語が羅列されていて、自分のライフスタイルと重なるところがないんですけど!
しかしながら、ときすでに遅し。取材までもう、日がほとんどありません。いやいや、これはファッションじゃないから私が慣れていないだけで、自分のライフスタイルと重ならないのは、ハイブランドの特集を担当するときも同じ。ひとつひとつを丁寧に読み解けば、何かしら共感できることや、知りたいことがあるはず!と、心を入れ直し、インタビューの準備に取りかかりました。
ま、知らない世界とはいえ、生活を豊かにしたいというブランド理念は、私にも理解できるところがありますし、聞きたいことも見つかったので、なんとかインタビューに臨め、ありがたいことに取材そのものは、すごくスムーズに終わりました。その理由は、CEOの方がすごく気さくで優しく、いろんなお話をしてくださったからという気もしますが、和気あいあいとおしゃべりすることができたのです。

ところで、どんな時計を身につけるのが正解?
ただ私、取材に行く前に、ものすごく悩んだことがあって。それは、どんな時計を身につけていくかということでした。というのは、お話をしたCEOの方は、現職以前に数々の時計&ジュエリーブランドに関わられていたという経歴が。当時のインタビュー記事を参考資料として読んだのですが、「時計をしない男は……」みたいな、作家の北方謙三さんを彷彿とさせる(勝手な想像です)、ハードボイルド紳士のような内容で、これはどんな時計をしているかで、「私という人間が測られてしまうかも!」と思ったのです。
今では少し価値観が変わっていますが、男性は昔「どんな時計と車をもつかで、パーソナリティがわかる」と、いわれていました。もし彼も、そういう感じだったらどうしよう。ものすごい数の名品時計を見ているだろうし、身につけてきたに違いない。私もブランドの時計はもっているけど、それをよしとするかどうかはわからないですし、かといって全くしていかないのも興味がなさすぎると思われるかも……。いろいろ考えあぐねて、最終的に選んだのは、祖母の形見であるセイコーの時計でした。昭和の雰囲気をまとったアンティーク感は本物で、何かいわれても「祖母の形見です!」といえば、それなりに話が弾みそう。助けてくれてありがとう、おばあちゃま!
祖母の形見の時計をして行ったけど……
そういうわけで、久しぶりにその時計を引っ張り出して身につけ、取材へ向かったのですが……本当に驚きました。CEOは、時計をいっさい身につけていなかったのです。えーーー!
どうして?もう過去のことは振り返らないタイプなの?それとも今日に限って忘れちゃったの?どうしてどうして?どーしてーーーーー?
インタビューしながらも、頭の中ではそのことが気になって仕方なかったのですが、あまりに初対面すぎて、その謎については踏み込むことができませんでした。ただ、これはあくまでも私の想像に過ぎませんが、ライフスタイルブランドを手がけることによって、彼の中での価値観も、変わったのではないかと思うのです。
どんな時計をするか(もしくはしないか)は、やっぱり生き方を映し出す
私がどの時計を身につけていくべきかを悩んだように、時計は人を表します。今の彼には、それまで身につけていた時計がフィットしていないのかもしれません。時計の話こそしていませんが、豊かな生き方、ライフスタイルとは何かといったお話を聞いているうちに、なんとなくそういった心境の変化があったのではないかと、自分の中で感じたのです。まあ、全然違うかもだけど!
どんな時計をするべきか、もしくは最近はしないという選択も含めて、やっぱり時計と人生というのは密な関係にあるものだと、改めて感じた瞬間でした。
【今日のひと手間】

こちらが取材の際に身につけた、祖母の形見の時計です。おしゃれに全くといっていいほど興味のなかった祖母だったのですが、いまだ現役の丈夫っ子。ゴールドの華奢なブレスレットタイプは、それこそ時計やジュエリーの展示会や、フォーマルなシーンで活躍してくれるんです。
エディター
editor_kao
大人の実用ファッションを中心に、人物インタビューや日本の伝統文化など、ジャンルレスで雑誌やブランドサイト、ウエブマガジンで活動中。また、インスタグラム@editor_kaoでは、私服コーディネートを紹介するかたわら、さまざまなブランドや百貨店とのコラボレーションも手がけている。ライフスタイルWEBメディアkufura(クフラ)でも「4ケタアイテムで叶えるオシャレ」を連載中。
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