レモン、梅干し、もも、メロン。酸っぱいのから甘いのまで
日本一暑い街・埼玉の熊谷にあるかき氷店「慈げん」が、どうして行列もないのに混んでいるのか、どうしてリピーターを虜にするのか、前回までにその理由をご紹介してきました。今回は、これから行く方に向けて、夏ならではのメニューをご紹介します。
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優しい甘さの秘密は、和三盆みつ
夏のメニューの筆頭は、前回紹介した「ザ すいか」ですが、それに負けない人気を誇るのが、以下の品々。
まず初夏から登場する「ザ もも」。もし訪問時にこのメニューに出会えたら、おめでとうございます、あなたはかなりツイてます。店主が自ら香りのいい桃を仕入れても、かき氷にするには水っぽかったり、エグ味があったり、ということはざら。熟して最適な期間もほんのわずか。店主がOKを出せる桃は、なかなか少ないのです。この桃を、上品な和三盆みつと一緒にかき氷にしたのが、「ザ もも」なのです。↓
もうひとつ初夏の味「ザ メロン」は、底に和三盆みつ、そして氷の中間に角切りのメロン、外側にはメロンシロップが。私たちの記憶にある「メロンのかき氷」は緑色だったけど、確かに生で食べるメロンは、黄色だったり黄緑だったり。着色も香料も加えず、果肉の色をそのまま生かしたのが、このシロップなのです。↓
もう一品。「すももとあんずのあいがけ」は、ビジュアルからして「夏が来た!」というかんじ。底には和三盆みつ、氷の間にあんずとすもものコンフィチュール、表面はあんずシロップ(オレンジの部分)とすももシロップ(赤いところ)。甘さと清涼感の余韻が残る、大人のお味。↓
と、このあたりで多くの方が気づいたかもしれませんね。シロップには和三盆が使われているということに。器の底の和三盆みつだけでなく、「すいかに和三盆を混ぜるとスッキリした甘さになる。柑橘類は和三盆を使うと苦味が抑えられる」と店主・宇田川さん。
その年その日で果物の出来栄えや味は変わるし、水分が多くて実はかき氷には難しいといわれる、夏の果物。だから店主自ら市場で果物を見分け、仕入れ、熟すタイミングをじっくり見て、素材の味のベストバランスを見極めながら、それに適した砂糖を選ぶ。その結果が、和三盆だったのです。そして、日々変わる果物の味に合わせて甘みを加減し、いつでもちゃんとおいしいシロップを作る。もちろん、すべてのシロップが手作りです。
ちなみに慈げんで使っている和三盆は、香川県の三谷製糖のもの。まろやかで上品で優しい甘さは、ふわふわのかき氷の優しさと、素晴らしいマッチング。どんなお客さんも、食べると優しい顔になっていくのは、こんな理由かもしれません。
酸っぱい! がクセになる、梅干しのかき氷
甘いシロップが主流のかき氷の中で、異色の「酸っぱい系」かき氷があるのも慈げんの特徴。その代表が、「和三盆レモンに梅干し」。氷の中には酸っぱい梅干しの果肉が入っていて、外側に和三盆とレモンを合わせたシロップをかけた上にさらに梅干しのシロップ(写真でストライプになってるところ)。うー、酸っぱい(けどおいしい)とうなりながら食べた最後に、やっぱり底には和三盆みつ。「ホッとする」甘さとは、まさにこのことです。
夏ならではの慈げんのメニューをご紹介しましたが、その日にどのメニューが登場するかは、実際に行くまでわかりません。メニューは毎日変わります。そうこうしているうちに、初秋を知らせる「巨峰」や「梨」「ラ・フランス」といった果物が登場し、ファン待望の「いちじく」がメニューに並び…。こうして慈げんの季節は移り変わっていくのです。
※営業時間や整理券情報はツイッター「慈げんの業務連絡」@JigenKumagayaで必ずご確認ください。夏は整理券が早く終わることが多いので、最新の情報をチェックの上、来店を。電話での問い合わせは受け付けていません。
著/宇田川和孝
取材・文/南 ゆかり
かき氷に24時間をささげる店主と、そこに集まる熱狂的ファン120人の声からできた本、6月28日発売! 見たことも聞いたこともないメニューの数々、それを生み出す店主の発想、かき氷をめぐる家族やファンのドラマ…。かき氷好きはもちろん、そうじゃない人も、必読! 秘伝のレシピも公開してます。